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『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』という映画を知っているだろうか。映画好きな両親は、有料チャンネルに登録して、時間をもてあました夜中なんかに、よく映画を見ている。特に洋画がお気に入りで、その影響か、二人と並んで僕も一緒に映画を見ることはしょっちゅうだ。

 高校に入る前の春休み。受験が終わって友達と遊ぶのにも飽きた僕は、昼間から家のでっかいテレビで映画を見ていることが多かった。

 その日も、僕はすることがなくて、なんとなくチャンネルをその映画のチャンネルに合わせた。そこでやっていたのが、その映画だ。

 スウェーデン映画。確か一九八五年に作られたものだったと思う。僕は主人公イングマルが大好きになった。自分と比べる何かを、モルモットの犬っころに決めた彼を、僕はカッコいいと思った。

 僕の価値観は、カッコいいかどうかだ。僕は僕の思うカッコいい物、人を、尊敬して、僕もそうなりたいと思う。理屈じゃないんだ。わかるだろう? 僕にとってイングマルは、カッコいい奴なんだ。ああいう風になりたい。自分の存在を、ちっぽけだと言いきってやりたい。

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