軟弱ロック

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　台風が近づいてきている影響なのか、朝から雨が降っていた。こんな風にちょっと雨が降っている日の朝とか、僕は比較的いい気分で学校に行く。傘をさして、自転車に乗るのは怖くてできないから、歩いて学校に行くからだ。

　いつもより何倍も時間がかかるし、遠回りもすれば、アルバム一つくらいは平気で聴いてしまえるんじゃないかってくらい、時間をかけることもできる。普段でもしようと思えばできるんだけど、大義名分ってやつだ。

　今日の雨の感じなんて、最高で、それに加えて今日は金曜日ときた。明日は休みだ。

　家を出た瞬間、さあっと軽い雨音と土の匂いに包まれる。傘を含めた三本の足でリズムをとりながら、エレベータまでをひょこひょこと歩く。エレベータをおりて、傘をさしてからも、僕の気持ちは軽い。まあ、学校が見えてきたらやっぱり憂鬱になるんだけど、それでも、こういう気持ちは大事だろう。

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　お気に入りのパン屋に寄ってクルミパンとメロンパンを一つずつ買ってから、学校に行く。やる気を出すため、僕はバンプオブチキンのバトルクライをリピートで回し続ける。

　車通りが多い道に出たら、曲に合わせて一緒に歌う。中学生の時とかは、そこを後ろから自転車で抜かれたりすると恥ずかしくなって両肩を抱きたい気持ちになってたけど、もう慣れた。それに、僕は歌が上手い。と思う。両親には音痴だって言われるけど、それは二人の前で本気で歌ったことが無いからだ。と思う。

　叫ぶように歌う声は、雨音と車のエンジン音、排気ガスと憂鬱にまみれた空気の中、どこまで響くんだろう。十メートルくらい前を行く、ダウンジャケットを着たおじさんが振り向いてこっちを見たから、きっとあそこまでは届いてる。

　十メートル。僕の言葉が通じる限界の距離。