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 僕のギターは、ギブソン社製の、レスポールスペシャルの黄色のやつ。バンプオブチキンのボーカルと、サンボマスターのボーカルとお揃いの一本。そいつは高校一年の冬に、お年玉とか誕生日とか小遣いとか昼飯代をちまちまと蓄えたものの結晶だ。セールで十一万円。僕はドキドキしながらそのギターを買った。

 父親のお下がりのアコースティックじゃなくて、自分でお金を出して買ったエレキギター。半年くらいは、そのギターを手放さなかった。学校以外、どこに行くにもそいつを背負っていた。

 いろんなやつに自慢した。すげえだろ、って。ギターの腕自体は大したことなかったから、ただただ見せびらかしたい一心で、必死で練習した。結果、ギターを見せながらそれっぽい感じの曲を弾けるくらいにはなった。

 今でも気分転換に適当な曲を弾く。音楽で生活をしようとは思わないけど、いつまでも音楽に興味を持っていたい。

 休みの日は、ギターを弾いたり音楽を聴いたり、本を読んだり、母親に言われてコーヒーを入れたり、友達と遊んだり、ふらっと散歩に出かけたりする。もちろん、気が向けば勉強をしたりもする。

 そんな感じだから、両親からは暇を持て余しているように見られがちだ。けれど、二人も、休日同じような生活をしているから、いいじゃないか、と思う。家族三人で、リビングの椅子に座って、それぞれ好きな本を読みながら、コーヒーを飲んだりするんだ。割と、ステキな休日じゃないか。

 母親から、気分屋なんだと言われ、それも違う気がしたけど、自由だと言われてるような気もして、悪い気分はしなかった。

 父親に教えてもらったビートルズの「LET IT BE」を弾きながら口ずさむ。なすがままさ、と得意げに繰り返した。


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