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目つきの悪い、お世辞にもカッコいいとは言えない男三人組のジャケットを僕に渡しながら、「こいつら、カッコいいぜ」と父親に言われたのは、僕が中学二年生の時だった。いかにも怪しいその男たちは、名前をサンボマスターという、日本の、駆け出しのロックバンドだ。父親が邦楽のアーティストを聴くこと自体に僕はちょっと驚きながら、そのCDをMDに焼いて聴くことにした。
でも、サンボマスターは、昔父親が勧めてくれたアーティストの人たちと同じで、僕にはその良さがさっぱりわからなかった。枯れた声、ただただうるさいだけのギター。
それもそのはずで、当時僕が頻繁に聴いていた音楽は、アニメのオープニングだったり、ジャニーズの曲だったりしたからだ。ロックンロールや、それどころかバンドの意味すらあまりわかっていなかった僕に、邦ロックに出てきた新星、サンボマスターのことを理解しろという方が無理な話だ。
「どうだった? かっこよかっただろ?」
嬉しそうにそう尋ねる父親に、苦笑いで「いまいちかな……」と返したのは言うまでもなく、父親は、少しさみしそうに肩を落として「そうか……お前もまだまだだな」と笑うから、僕はなんだか申し訳ないような気持ちになってしまった。
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