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尊敬する人は? と尋ねられたら、僕はちょっと考えて、大好きなバンドのメンバーとか、小説家の名前とかを浮かべて、でもやっぱり父親の名前を挙げると思う。
僕にとって、尊敬する人というのは、すなわちカッコいい人だ。見た目とか、そんなのではなく、生き方が。その見かたで僕の周りを見渡した時、一番カッコいいのは、間違いなく父親だ。
僕の父親は、自営業を営みながら家族を支える、酒と音楽と本とジーパンとアロハシャツが大好きな、インテリだ。
家での印象は大概、パンツとTシャツだけで歩き回って、ウイスキーを飲みながらアコースティックギターを弾く姿。
きっと、父親たちの世代の、音楽に興味があった人と同じように、ビートルズとボブディラン、オーティスレディング他、洋楽のアーティストが大好きな人だ。父親の部屋にあるCDラックはそれらの音楽家のCDで埋め尽くされている。その中に、ごく数枚の邦楽アーティストのCDがある。エレファントカシマシ、ゆらゆら帝国、トモフスキー、そしてサンボマスター。
中学校の時、夏休み前にあったPTAに、父親がジーパンとアロハシャツで来た時、僕は心底カッコいいと思った。周りの数少ないお父さんたちが、黒いスーツや灰色の作業服、もしくは適当なシャツにチノパンみたいな格好で来ていた中、父親の着ていた黄色のアロハシャツは目に痛いくらい目立っていて、履きならしたリーバイスのジーパンも、授業参観の空気とはえらく不釣り合いだった。だけど、僕はどの父兄よりも、父親が一番カッコいいと思ったし、僕を見る父親の口元に含み笑いのような、にやにやとした笑みが浮かんでいることが嬉しかった。
そんな父親の横に、何食わぬ顔をして立つ母親も、大概カッコよかったけど。
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