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 幼稚園のころは、スーパーサイヤ人になりたかった。

 小学校の初めはガンダムのパイロットになりたくて、卒業文集には海上保安官になりたいと書いた。スイミングスクールに通っていたから、水泳がとても得意だったんだ。あとはマンガの影響かな。

 だから中学に上がって、当然のように水泳部に入るものだと、そういうものだと思っていたんだけど、入学してから、去年で廃部になったことを知った。部員がいなくなってしまったらしい。そこで、何とか部員を集めて部を立ち上げようとしてれば映画みたいな楽しい話になるんだろうけど、そんなやる気はなかった。おかげで僕は、何をしたいのか、何になりたいのか、すっかりわからなくなってしまった。

 わからないまま、それでも、不安に駆られて勉強だけはした。勉強さえできれば、まあなんとかこれから先だって、結構楽しくやっていけるんじゃないかなんて、考えていたから。その結果は今、後悔につながっているんだけど。

 中学の終わり、なんとなく、音楽とか本とか、そういうのに関わりたいんじゃないかと思ったけれど、僕はそれが何をどうやって関わる人のことを指しているのか、さっぱりわからずに、それでもずっと、ぼんやりとした気持ちの火種だけが燻って、高校に入ってようやく、どうするかってことを自分で決めるに至った。

 けれど、高校三年の今になって、また不安になってきている。周りの空気。就職のことを考えて、理系へ。将来のことを考えて、いい大学へ。そんな周りのみんなを見ながら、僕は息苦しくなる。他人と自分を比べてどうこうするのは嫌いだけど、見ない振りをするには距離が近すぎるんだ。何か別のことをしていなければ、頭の中がどんよりと曇った気持ちに覆われて、空気が回らなくなってしまう。すっかり酸欠状態だ。

 ちらつき始めた「将来」という言葉が、やけに重い。将来とか、生活とか、僕は何も考えられていないんじゃないか。夢は夢だと、どこかで切り捨てなければいけないんじゃないか。

 けれど、だったら僕は何を諦めようとしているんだろう。何もせずに、自分の中の何を計った気になっているんだろう。


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