6
階段を上って教室の近くまで行くと、鉛筆がカツカツと机をたたく音が聞こえてくる。三年五組のプレートがかかった教室の手前で立ち止まり、耳にはめていたイヤホンをポケットにしまう。そうっとドアを開けて、覗き込むようにしてから中に入ると、何人かのクラスメイトが僕に気づいて顔を上げた。もう、そんな時間かと。
朝学習の時間が終わる間際で、朝のホームルームの直前。これが僕の登校時間だ。もちろん僕が勝手に決めているだけだけど。
一番前の席に座っている工藤に、おはよう、と小さな声で言われた。おはようと同じくらい小さな声で返しながら、ゆっくりと教卓の前を横切って歩いて、何食わぬ顔で席に向かう。途中で、足立が嫌な顔を隠そうともせずに、僕を睨みながら舌打ちをした。僕はそれに小さく手をふって応えて、自分の席に着いた。
真っ黒な学生服と紺色のセーラー服に囲まれて、机の上に置かれた自習用の英語のプリントを見てから、一日の始まりを覚悟する。僕はそのプリントを丁寧に折りたたみ、机の中に乱暴に押しこむと、なんだか無性に音楽が聞きたくなって、だけど肩身が狭いから我慢して、代わりに鞄から本を取り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます