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 階段を上って教室の近くまで行くと、鉛筆がカツカツと机をたたく音が聞こえてくる。三年五組のプレートがかかった教室の手前で立ち止まり、耳にはめていたイヤホンをポケットにしまう。そうっとドアを開けて、覗き込むようにしてから中に入ると、何人かのクラスメイトが僕に気づいて顔を上げた。もう、そんな時間かと。

 朝学習の時間が終わる間際で、朝のホームルームの直前。これが僕の登校時間だ。もちろん僕が勝手に決めているだけだけど。

 一番前の席に座っている工藤に、おはよう、と小さな声で言われた。おはようと同じくらい小さな声で返しながら、ゆっくりと教卓の前を横切って歩いて、何食わぬ顔で席に向かう。途中で、足立が嫌な顔を隠そうともせずに、僕を睨みながら舌打ちをした。僕はそれに小さく手をふって応えて、自分の席に着いた。

 真っ黒な学生服と紺色のセーラー服に囲まれて、机の上に置かれた自習用の英語のプリントを見てから、一日の始まりを覚悟する。僕はそのプリントを丁寧に折りたたみ、机の中に乱暴に押しこむと、なんだか無性に音楽が聞きたくなって、だけど肩身が狭いから我慢して、代わりに鞄から本を取り出した。

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