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川沿いの土手を行けば一本道ですぐだけど、僕は思いっきり回り道をして学校に行く。だいたい、三十分から一時間くらいかけて。当然遅刻なんだけど、気にしない、というよりどうでもいい。きちんと時間を守って学校に行くよりも、僕は好きなだけ好きな音楽を聞きながら自転車を漕いで、その後学校に行きたいんだ。行きたくもないところに行くんだし、せめてそれまで目いっぱい好きなことをしたい。どうせなら。
今日は三十五分かけてなんとか到着した。去年完成した立体駐輪場にも正門の靴箱の前にも、もう誰もいない。朝の自習時間が始まって二十分も経っているんだから当然だ。誰もいない駐輪場はいい。混雑していないから動きやすい。誰もいない正門も好きだ。靴箱のところでまごつかないし、何より先生に急げとか何とか言われなくてすむ。
だけど、シンと静まり返った校舎だけは好きになれない。今この学校には四十人かける八クラスかける三学年、ぷらす先生も合わせて、計一〇〇〇人近くが真新しい校舎の中に収納されているというのに、一つの騒ぎ声も聞こえない。一〇〇〇人が全員、机に向かって勉強をしている。何の疑問も持たず、同じことをしている。そう考えると、うすら寒いものをこの学校全体から感じて、嫌な気分になる。
諦めるようにため息をついて、うすっぺらいスリッパをぺたぺたとマヌケに鳴らしながら薄暗い廊下を歩いた。
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