猫な彼女とデートあと

@山氏

猫な彼女とデートあと

 俺と咲弥は遊園地に行った帰り、電車に乗っていた。

「楽しかった?」

 そう聞くと咲弥は頷いて、眠そうに眼を擦る。

「着いたら起こしてあげるから、寝ててもいいよ?」

「ん……」

 咲弥は俺の肩に体を預けて、目を閉じた。

 少しすると、安らかな寝息が聞こえてくる。

 俺は携帯を眺めながら、時間を潰していた。降りる駅まではまだしばらくかかる。

「んん……」

 ゆっくりと咲弥が目を開けて、体を起こし、俺の方を見る。

「まだもうちょっとかかるよ?」

「んー」

 そう言うと今度は俺に体を預けるわけではなく、俯いて眠った。

 電車に揺られ、咲弥の体が左右に揺れる。俺の反対側に倒れそうになり、咲弥の腕を少しだけ引っ張って俺の方に倒れさせた。

 咲弥は気にしていないように寝息を立てながら、俺の方に体重を預けてくる。

「はぁ……」

 少しため息を吐きながら、俺は携帯を見る。

 そして、俺たちが降りる駅までたどり着いた。

「咲弥、着いたよ」

「んー」

 生返事をする咲弥の肩を揺すって起こそうとする。

「咲弥、起きて」

「うん……起きた……」

 うっすらと目は開けているものの、咲弥は動こうとしない。

「降りないと、帰るの遅くなっちゃうよ?」

「うん」

 俺はため息を吐いて、チラっと周りを確認する。幸い、あまり乗客はいない。

「行くよ、咲弥」

 声をかけて、咲弥のことを抱きかかえる。

「……えっ?」

 急に体が持ち上がったことに驚いたのか、咲弥はビクッと体を跳ねさせて、足を伸ばして地に付ける。

 視線を感じ、俺は咲弥の手を引いてさっさと電車を降りた。

「びっくりしたじゃん……」

 咲弥は不満そうに俺の脇腹をつんつんと突いてくる。

「だって起きてくれないんだもん」

「恥ずかしかった」

「俺も恥ずかしかったよ」

 改札を抜けると咲弥は腕を絡ませて来て、俺を引っ張って歩き出した。

「早く帰って寝よう」

「晩御飯はいいの?」

「んー、今日はいいや」

「そっか」

 それから俺たちは他愛のないことを話しながら家に帰った。

 

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