えんぴつ

@yoona0902

えんぴつ

 凄く退屈な英語の時間。俺は先生にバレないようにリオレウスを狩りに行っていた。もちろん天鱗を手にするためだ。でも運の悪いことに見つかってしまった。その場でPSPは没収。俺の心の中は先生からお説教をくらうことよりも、今倒したばかりのリオレウスが天鱗を落としてくれたんじゃないだろうかという焦燥感の方がまさっていた。そのため説教なんて怖くないやと思っていたのも束の間で、いざ教壇の前にゲーム機をとりに来いと言われると頭は一気に龍の巣窟から現実の狭い教室へと引き戻された。


 先生はゲーム機を片手に持ち上げて「お前何してたんだ。言ってみろ」と物凄い難問を突きつけてきた。何してたってどう考えても明らかなじゃないか。ゲームだよ。でも先生はそんなこと求めていない。もっと具体的な答えを求めている。


俺「リオレウスを狩っていました」

先生「はぁ?そんなこと聞いてるんじゃねーよ。ゲームだろうがよ」

–まじか。このオッさんまじかよ。ゲームが正解かよ−


 クラスのみんなは先生の逆鱗に触れないよう一斉に俯いた。クラスのみんなと同じ気持ちを共有できたのは頼もしい。一人で金獅子に立ち向かっているわけではなかった。


先生「だからオメェはバカなんだよ。バカが授業中にゲームしてんじゃね。返して欲しけりゃ英語でみんなの前で自己紹介してみろ」


 さすがに温厚な俺でもこの質問にはムッとした。自己紹介くらいできる。ただこの状況はワン公が目の前のエサ欲しさにお手やチンチンを飼い主にやらせている状況と何も変わらないではないか。2秒間の沈黙の後、俺は教壇の前に進み出た。


I am a pen.


先生「テメェーはペンじゃねーだろ!人間だろ!ふざけてんじゃねーよ」

先生は正しかった。俺は人間だ。ペンではない。クラスのみんなはとうとう笑ってしまった。


翌年、バカな俺は大方の予想通り浪人が決まった。

そして「えんぴつ」はpencilだった。

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