第60話 何でここに●●●●が!

 さっくり白竜を5匹討伐し、森の家へと移動。

 久しぶりのこの家に、やはり我が家はいいものだとしみじみ実感する。

 王宮のように豪華では無いがとにかく落ち着くのだ。


 さて、制作仕事の前にまずやるべきことがある。

 それは勿論、お風呂だ!

 ジョーダン国王代理になってからのんびり風呂に入っていない。

 魔法で一応さっぱりとはさせていたけれど。

 これはなかなか由々しき事態である。

 何せ俺は風呂が大好きだ。

 一人で入っても風呂はいい。

 最近はサリナやカタリナ、カルミーネ君を見たり触ったりする事を楽しんでいたのだけれども。

 むしろ3人がいないから、ぬるめの湯でのんびり長湯を楽しむのも悪くない。

 そうだそうしよう!

 魔道具の製作は明日になってからでも構わないし。


 そんな訳で魔法でシャワータンク、浴槽ともにお湯をたっぷり入れ、ささっと魔法で身体を洗浄した後湯船へダイブ!

 中央でゆったりと四肢を伸ばす。

 うむ、いい湯だ。

 ただこの姿勢だと水魔法で継続して持ち上げなければ顔が沈む。

 なので背中が湯船にくっつくところまで後退。

 背中を湯船で支えて他を伸ばしまくる。

 そう、これこそが正しいお風呂だ!

 程よいぬるさでぼーっとする。

 これなら何時間でも入っていられるなと思う位だ。


 人生やっぱりこういうゆとりの時間が大事だよね。

 そう思いつつ湯船にどれくらい浸かっていただろう。

 ふと人の気配がした。

 ここには限られた人間しか来ることは無い。

 サリナかカタリナかカルミーネ君かな。

 まさかとは思うがリーザさんなんてのも大歓迎だ。

 だが微妙にその辺と気配が違うような……

 これは、まさか……


「あ、やっぱりいらした、お兄様」

 ちょっと待った!!!

 何故ここにロッサーナが来るのだ!

 ここの事は教えていないぞ。

「何故ここがわかったんだ?」

「向こうの家にいらっしゃいませんでしたからサリナちゃんに聞きました。そうしたら多分ここじゃないかっていう事でしたので」

 サリナが悪いんじゃない。

 ロッサーナが悪いんだ!

「でも気持ちよさそうなお風呂ですね。ちょっと私も失礼しますわ」

 ささっと服を全部脱いで、魔法で身体を洗って入ってきやがる。

 それも俺のすぐ横にだ。


「確かにいいですわこれは。お風呂に浸かるのは本当に久しぶりです」

 もう少し向こうに行け、空いているぞ。

 確かにロッサーナは綺麗だしプロポーションもいい。

 胸だってローザさん程ではないがなかなかいい形だと思う。

 でも妹なので食指が動かされない。

 ぶっちゃけ俺の近くにいると邪魔だ。

 そう思うのだけれども無論奴は知らん顔だ。


 しかもそのうち、もっと面倒な事に俺の方を向いてじろじろ見たりもする。

「お兄様、それにしても本当に女の子になったのですね」

 それは知っているだろう。

 まあ見たのは初めてかもしれないけれど。

 だからもう少し遠くにいってくれ。

 場所は空いているんだ。

 そこにいると俺が右手右足を伸ばせない。


「こうやって見るとお兄様、可愛いですわね」

 ロッサーナはそう言うとふっと近づき俺を抱えた。

 こらロッサーナ何をする!

 俺の意志を全く無視して自分の真正面に抱きかかえるように俺を移動させる。

 ちょうど俺の背後全面を覆うような感じだ。

 背中に腕に柔らかい感触が……

「本当に可愛いですわお兄様。髪もいい匂いだし可愛くてしょうがないです」

 こら背後から抱きしめるな体温や感触が邪魔だ。

 ぶっちゃけ妹と触れ合う趣味は無い!


「でもちょっと細すぎですね。もう少しお肉がついた方がいいかもしれませんわ」

 こらあちこち触るな胸を揉むな。

 俺の胸なんて男子並み程度しかないぞ……悲しいけれど。

 もう駄目だこれは落ち着いて入っていられない。

「離れてくれロッサーナ、いくらでも場所はあるだろ」

「何故ですのお兄様。姉妹でしたらこれくらいのスキンシップは普通ですわ」

 いや普通じゃない。

 同性で妹なのに貞操の危機を感じる。


 こらロッサーナ俺の身体を撫で繰り回すんじゃない。

 俺もサリナやカタリナやカルミーネ君にはやったけれど。

 俺が触るのはかまわない。

 でも俺は触られるのは苦手なんだ。

 もういい逃げよう。

 そう思うのだがロッサーナの手が俺を離さない。


「そろそろ上がる」

「なら身体を拭いてさしあげますわ」

「いやいいから」

 こうなったら仕方ない。

 任意移動魔法だ。

 強化衣装コスチュームが無いので効率は悪いがやむを得ない。

 脱衣場へと魔法移動。

 そのまま身体を魔法で乾かしつつ収納庫ポシェットと服を手に取り逃げるように脱衣場を去る。

 ロッサーナは追ってこない。

 どうやら逃げ切れたようだ。

 でもまだ安心できない。


「仕方ない。お仕事するか」

 研究室へ入り収納庫ポシェットから下着とジャージを出して着用。

 なお研究室入口には『魔道具製造中・立入禁止』の札をかけておく。

 これで邪魔される事も無いだろう。


 さて、まずは簡単な転移門用の魔法ユニットから作るとするか。

 白竜の角を適当にカットして積層魔法陣をくっつけておけば後は作成したもらっている簡易転移門の器にセットするだけ。

 器は20個用意してくれるそうだからユニットも20個でいいな。

 門の形でない丸太加工の簡易タイプも使用しているけれど、こっちの方が門らしいし。

 性能は実はあまり変わらなかったりするけれど。


 魔法陣は粘土板を焼いて作ろう。

 文様さえしっかり描けていれば大きさは小さくても問題ない。

 粘土板なら焼けば小さくなるし小さく作ればそこそこ硬くて丈夫。

 しかも筆等で描くのと異なり文様が消える事も無い。

 せっせせっせと白竜の角を磨いて削ってカット。

 実はこういった製造作業も俺は結構好きだ。

 なので自然と夢中になり、時を忘れてガンガン量産しはじめたりする。

 消耗品は一気に作っておいた方が楽だしな。

 そういう言い訳を思い浮かべつつ、20個予定の簡易転移門用魔法ユニットはいつの間にか30個、40個と…… 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る