第11章 俺のお仕事?
第59話 俺の秘密なお仕事
先日のアレドア伯爵家襲撃事件の調査結果はあまりはっきりしない内容だった。
直接の襲撃を行ったとみられる十数人のうち、捕縛された5人は全員捕縛された現場で死亡。
打ちこわしに参加した群衆はその時の記憶は何も残っていない状態。
強力な暗示魔法でも使われたのではないかという事だ。
なおロッサーナは襲撃の轟音が聞こえるまで、全く気づかなかったとのこと。
無論被害も何もなく、ただただ驚いていたそうだ。
結局、
「アレドア伯爵家は元々住民に対してかなりの圧政を行っていました。こうなるのも時間の問題だったのでしょう。監査が間に合わなかった事が反省材料です」
というラシアの意見でとりあえずこの件については幕を閉じる。
◇◇◇
さて、俺は国王代理だ。
しかも現国王代理3名の中で筆頭者だ。
多分きっと現在のこの国では一番偉い。
でも場合によってはただの運送担当扱いされたりもする。
何せこの国をたった3か月で変えようという作戦の最中なのだ。
何処へでもほぼ瞬時に移動可能な俺の魔法は大変重宝する。
しかもこの3ヶ月と言うのは基本的には俺の要望。
だから多少はこき使われても仕方ない。
そしてこの日もそうだった。
リーザさんが伝令としてやってきて、エンリーコがいないのを確認してからわざとらしく言う。
「ジョアンナさんに依頼です。ロンバードの行政官から付近の領主及び代官からの書類を巡回して受け取ってきて下さいだそうです。お取次ぎ出来ますでしょうか」
仕方ないな。
「はいはいやりますよ。そんな訳で行ってきます」
「気をつけて行って来てくださいね」
俺がいない間の国王代理であるロッサーナに手を振られ、俺は第2貴賓室へ。
ここは本来ロッサーナの部屋なのだが、今は俺の変身用に使用している。
流石に荷物運びが国王代理だと表面的にはまずいので、ここで着替えと同時に変装もする訳だ。
「メタモルフォーゼでメイクアップ!
なおこの灰色の
型紙はやはり異世界から流れて来た、グレーと白のセーラ服とかいうものを使っている。
何でも『オレイモキリノコスプレ』というデザインらしい。
異世界の事なのでこれが何を指しているかはよくわからないけれど。
なお型紙のオリジナル通りスカーフが赤で靴下は黒だ。
その辺は何の意味があるのかわからないがとりあえず原典通りとしておいた。
更にもう一つ身バレしない為の魔法を起動。
「変装魔法、女の子モード!」
これはやや小柄になって髪の毛が伸びるという魔法だ。
性別はまあ元々女の子だけれどもやや背が高めな方だったので。
俺は本来闇属性や治癒属性の変身魔法は使えない。
だから補助として
だから服装チェンジをしてからでないとこの変身魔法は使えない。
不便だがまあ仕方ないな。
それじゃポシェット下げて行ってくるか。
「任意移動、俺、第2会議室!」
ラシアが陣取る会議室へと移動魔法で移動。
これはこの姿で貴賓室に出入りしているのを見られない為の措置である。
決して歩くのが面倒だからではない。
「ジョアンナ、出頭しました」
「すみませんジョアンナさん。この通行証を持ってロンバードの冒険者ギルドに向かってください。地図はこちらです」
大雑把な地図を渡される。
でも以前行ったメディオラ侯爵の館も描いてあるので場所はわかりやすい。
うん、把握できた。
「それでは行ってまいります」
「お願いします」
そんな感じで俺はロンバードへと飛び立つ。
なおこの日はロンバードで担当者と合流した後、24カ所もの役場だの商業ギルドだのを回って書類を回収した。
流石に俺でもこれだけ任意移動魔法を使うとくたびれる。
この日ばかりは横にロッサーナがいても気にせずあっさり眠れた。
◇◇◇
そんな運び屋仕事が数日続いた後。
今度は『ジョーダン国王代理』あてに御願いが入った。
「転移門で結べる場所を増やして欲しいという要望がかなり多く寄せられています。現在は国内6カ所6個、難民移動用に4カ所8個、南部に6カ所6個、こちらの仕事用に4個使用しています。基準は『
これをより早い事務処理や流通改善の為、『
他に土地使用状況を空から確認できれば把握しやすいという意見もありました。近距離の移動用も含め、飛行用の魔道具も配備して欲しいとの事です。これは各地区に1個設置するとして、最低で10個、理想を言えば50個欲しいとのことです」
これはラシアから『経緯は不明だが国宝級の強力な魔道具を数多く所有しているジョーダン国王代理』への報告及び請願の扱いだ。
「運送業者や馬車製造関係の皆さん等から苦情が来ませんか」
「既に試算結果が出ております。一時的には減るかもしれないですが、むしろ近距離の移動需要を喚起するため数年後にはむしろ馬車等の使用が増加する見込みです。ですので問題はありません」
「管理はどうしますか」
「今の処は転移門も飛行用魔道具も冒険者ギルドで管理しています。ただ転移門は商業ギルドで管理すべきではないかという話も出ていますので、その辺は後程検討する予定です。いずれにせよ国組織により厳重に管理する予定にはなっています」
「今現在これらを私物で使っている者には影響がないように頼みます」
「了解です」
なら俺としては言う事は無い。
ただし、俺も手持ちが無限と言う訳ではないのだ。
「現在そこまで在庫は無いから制作する必要があります」
「わかりました。これから3日間、国王代理としての業務を他の2殿下に振り分け、ジョーダン殿下には他の業務が無いように致します」
「3日とはちょっと厳しくないですか」
「以前、リーザに一晩で様々な魔道具を作って貰った話を聞きましたので」
裏はとってあるぞという事か。
容赦ないなラシアは。
「なら頼みがあります。これらの魔道具の材料になるものを作成してください。一般的な細工師なら作れるものです。
まずは簡易転移門の器になるもの。これから用意するのと同じものを出来るだけ長持ちしそうな木材で。数は必要な簡易転移門の数の3割増し程度」
俺は簡易転移門の実物を出して、中から魔力源になる白竜の角とコントロール装置である複層魔法陣を取り出し、外側部分を渡す。
「次は金属素材。飛行魔道具10個あたり
ラシアはさらさらっとメモして頷く。
「簡易転移門の器は明日夕方までに20個用意します。こちらに頂く簡易転移門は10個でお願いします。
ラシアは何気なくその辺に置かれた魔法収納庫の箱4個からそれぞれ
「既に準備済みだった訳ですか」
「多少余っても返還の必要はありません。この出納も記録には残しません」
つまり余りは俺が自由に使っていいという事のようだ。
ラシア、俺の考えを色々把握している模様。
「わかりました。では早速制作に必要な他の材料収集から始めます」
「その前にこの魔道具をお持ちください」
ラシアは収納庫から小さな銀色の指輪を取り出す。
「これは遠隔魔法通信を可能にする魔道具です。
なかなか便利そうな魔道具だ。
でもちょっと不安がある。
「これでまさか俺の現在位置とか行動とかが把握可能って事は無いですよね」
「これはあくまで通信装置です。声と同様の情報しか伝達できません。位置情報やそれ以外の情報も発信しません」
「何処にいてもこれで通信できるのですか?」
「少なくともこの大陸内では問題ない事を確認済みです」
なら仕方ないか。
俺は指輪を左手薬指にはめる。
この辺の指が邪魔にならなそうだからな。
「それじゃ行ってきます」
まずは山岳地帯で白竜狩りからだな。
「お願いいたします」
ラシアのいつもの調子の台詞に見送られ、俺はまずは
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