第53話 妹は興味外
結局、女体化したのは追手を避ける為という事にして、それ以外は大体そのまま経緯を話す事にした。
間違っても、
① 幽閉されて外の空気を吸えない状態で
② 女顔だ弱々しい使えない魔法属性だと言われ続けた事が刷り込まれた結果
③ やることが無いので魔法を鍛えて脱走したけれど
④ ②で得た認識が抜けずに、『なら女の子に』と思ってしまう
という経緯をそのまま説明する訳にはいかない。
王家とか元皇太子とか兄としての威厳にも関わるのだ。
いや本当に。
「つまりお兄様はつい最近目覚めたばかりで、しかも身体は15歳位の女の子になってしまった訳ですか」
「そういう事だ。この国がこんなになっているなんて事も実はつい最近知ったばかりだ。悪かったな、ロッサーナはこんなに苦労していたのに」
「いえ、かまいませんわ。結局お兄様は来てくださったのですもの。それで充分ですわ。それに……」
ロッサーナは俺のすぐ横へと座り直す。
思い切り横、密着している状態だ。
「ずっと昔から仲がいい姉妹が欲しかったのです。兄弟姉妹は多数いますけれど、立場上仲良くできる子はいなくて。でもお兄様がこうやって女の子になってきてくれたなんて本当に嬉しいですわ。お姉さまと妹が同時に出来たみたいで」
あれ。
何か話が変な方向へ行きはじめていないか?
俺の気のせいか?
ロッサーナは俺の方を見る。
顔がちょい赤い。
「お兄様。本当に可愛いですわ。実は以前からそう思っていましたの。兄だし皇太子だし1歳上だけれど本当に顔が可愛いなって。
そうしたら今度は私より年下になって、でもそのお顔はそのままでいらしてくれて。来てくれた瞬間これは夢かと思いました。状況が状況だから必死に冷静な態度を装いましたけれど、もうこの人なら手にかけられてもいいとまで……」
あ、やばいかも。
俺は寝室やベッドまで一緒にしてしまった事を後悔した。
言っておくがロッサーナは確かに美女だが妹だ。
だから俺はロッサーナで興奮したりとかはしないし、形状的には魅力的な身体にも魅かれたりはしない。
でもロッサーナはロッサーナで別の見解があるような……
「本当はこのままずっとお話していたいですわ。でも明日もいろいろあるのですよね。でしたら今日は少し我慢します。
それでは休みましょうか」
大丈夫だよな、俺の貞操。
今は俺も身体は女だしロッサーナは妹だし。
俺は恐る恐るベッドへ入ろうとする。
「あれお兄様。その服のまま寝られるんですの」
あ、確かにそれもそうだな。
でもこの『お兄様可愛い』状態のロッサーナの前で睡眠用の黒猫さんオーバーオールを着用するのはヤバそうだ。
抱きぐるみ扱いされかねない。
仕方ないからジャージでいいか。
ばたばたっと着替える途中で気付く。
待てよロッサーナはどうするのだろう。
「そういえばロッサーナは着替えは無いよな。何か服を出そうか」
「いえ、私は寝るときは元々着ないですから問題ないですわ」
え‘っ!
ロッサーナは特に何事でもないようにさらさらっと服を脱ぎ、全裸になる。
確かに妹だし今は同性だし問題ないけれどな。
「さあ、寝ましょう」
ロッサーナが先にベッドへ。
ちゃんと俺の場所を開けてくれているのでそこへ潜り込む。
あ、俺では無くサリナ達でもない女の子の匂い。
いや俺も女だし妹だし問題はない筈だ。
性的な興奮こそしないがドキドキはする。
何かいけない事をしているようで。
「それにしてもお兄様、本当に可愛いですわ」
真横で聞こえたそんな声の後、暖かくて柔らかい感触に包まれてしまう。
思いきり抱き締められたようだ。
両手両足、身体まで密着されて。
今までセクハラはする方だったのだがされるのは新鮮……
なんて言っている場合じゃない。
どうすればいいんだ、俺は!
仕方ない、最後の手段だ。
『強制睡眠!』
自分に睡眠魔法をかけて、はいおやすみなさ……
◇◇◇
翌朝。
俺が起きた時には既にロッサーナは起きていた。
服をちゃんと着ている事にちょっと安心する。
「おはようございますお兄様。いい朝ですわ」
その着用している服を見て気付く。
それってよく見たら夜用、寝る時に着る奴じゃないか。
だったら脱ぐ必要なかったじゃないか。
昨日は色々気が動転していたので気付かなかったけれど。
さて、なら衣服を調達しようか。
俺の手持ちだと
「ロッサーナが使える魔法は確か氷雪系統と風系統だよな」
「今はその他に少し変わった魔法も覚えましたわ」
そう言ってロッサーナはすっと右腕を伸ばす。
「闇の顕現」
すっと部屋の一部に暗い場所が出現した。
暗いというか黒いというか、とにかくその部分だけ何も見えない場所だ。
これってまさか……
「氷雪も風も直接攻撃になら有効ですけれど、私の立場で戦う為には今ひとつ使えない魔法ですわ。ですのでお兄様がいらしてくれない場合、何とかこの国を取り戻すのに使えそうな魔法系統を色々試してみたのです。残念ながら生命系統の魔法で精神操作というのは出来ませんでしたが、闇系統魔法は少しだけ適性があったようですわ。でもまだ叔父や貴族の皆様を操作する程には上達していませんけれど」
やはり闇魔法かよ。
でもそれならちょうどいいのが在庫にある。
俺はポシェットからいつもの紙とペンを取り出して呪文をメモする。
「ならこの呪文を唱えてみてくれるか」
「何の呪文ですの。『メタモルフォーゼでメイクアップ!
本人とは無関係に着装シーンがはじまる。
まあ妹なので特に注視したりしないけれど。
これがサリナあたりなら凝視しまくるのだけれどな。
「お兄様、この服は一体何ですの」
「闇系統魔法を強化する魔法装備だ。俺のこの服と同じだな」
俺も灰色のスーツを着装する。
うん、これだとやはりちょっと意識が変わるな。
少しだけ気分がジョーダンに近づく。
妹に性的興味がわかないのは変わらないけれど。
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