第47話 次の仕事の前に

 ひとこと言わせてもらおう。

「風呂は最高だ!」

 俺は今まで貧乳派だと自分で思っていた。

 だが両手にちょっと余る程度の巨乳もかなりイイ!

 あの柔らかさと包容力は最高だ。

 理想を考えると巨乳美女と貧乳美女、ロリとショタと4人集めなければいけない。

 そしてそれが実現したのが今日の風呂だった訳だ。

 世界バンザイ! 俺バンザイ!


 でもそんな至福の時間はまたたく間に過ぎて、帰るリーザさんを送っていく。

 リーザさんは強いので本当は送る必要はない。

 だが俺がちょっと話したい気分だったのだ。

 サリナ達がいると色々と話せない事もあるしな。


「それにしてもジョアンナさん、本当に女性だったんですね」

 リーザさんは以前の俺を知っている。

 だから女装していると思っていたのだろう。

「色々あって若返りついでに性別変更をしたんです。魔法紋がそのままだったのは誤算でしたけれど」

「魔法紋だけでなく容姿もほぼそのままよ。強いて言えばあれから十年経っているにしては若いかなという位で」

 サリナ達3人がいないとこんな話も気軽に出来る訳だ。


「そういえばリーザさん、ギルドで本来はどんなお仕事をしているんですか」

「主に魔法関係の依頼とか相談の受付担当よ。私自身は本当は外にいる方が好きなんだけれども、炎熱系の魔法しか使えなかったからね」

「今使っている魔道具はそのまま使っていていいですよ。回収しても使う予定は無いですから」

「でも本当にいいの。国宝級以上の品よ、これって」

「だから下手に商売には出来ないんです。でもどうせなら有効に使ってもらった方がいいですからね。私自身が必要ならまた作ればいいだけですから」


 リーザさん、ふうっとため息をつく。

「その辺本当に謎技術よね。実はあの開拓村と難民居住区を結ぶ通路、今日の昼に長寿族エルフの長老が来て調べたそうよ。ただ材料と描いてある魔法陣はわかったけれど魔法陣の意味が全く解読できないし、仮に作ったとしても起動させる魔法がわからない。お手上げ状態だって」

「早いですね」

「長老と言っても見かけはまだ若いし、普段は近くの街にいる人だしね」

 嫌な予感がする。

 該当しそうな人物が1名思い浮かぶ。

 まさかあの人じゃないよな。

 あと2人追加で思い浮かぶが1人は多分長寿族じゃないし、もう1人はラシアさんより若そうだから大丈夫だろうけれど。


「ところでジョアンナさんはどうするの? 暫く1人で動くって言ったけれど」

「考え中なんです。一つ案があったんですけれど、どうも一人では手が足りないのと私自身の知識で足りない部分が多すぎて」

「一人で手が足りないなら臨時のパーティを組むとかでは駄目かな」

「多分もっと必要になるでしょうね」

 内乱のトップ部分を全部潰しただけでは国内が混乱する。

 その後今までの行政組織をまとめ上げて監督指揮する担当が必要だ。

 それも1人2人ではなくかなりの人数が。

 貴族や普通の王族等には家臣団がいるからトップを挿げ替えても行政や軍を維持することが出来る。

 だが俺は現在1人しかいない。

 サリナ達を巻き込みたくないし、巻き込んでも多分役に立たない。


「なら依頼と言う形でギルドに出さない。ある程度ならそれなりの専門分野を持った人材を揃えられるわ」

 なるほどな。

 でも今の分裂している権力者双方を叩いた後、行政を指揮させる人材なんて……

 そういえばその辺を嫌って南部に脱出してきた人がそれなりにいるのか。

 例えば長寿族エルフあたりにはそういった人材はけっこういる筈だ。

 そして俺は思い出す。

『でももし難民の様子を見て、それでジョアンナさんから一時的にでも昔の名前に戻ろうとするならば、その時は教えて欲しいかな。場合によっては力を貸せるかもしれないわ。私個人か、私達が』

 リーザさんが以前俺に言った台詞だ。

 ならば。


「明日、ギルドへ依頼の相談に行ってもいいですか。ちょっと大仕事になるので色々と案件についてまとめてからお願いしに行こうと思いますから」

 言ってしまった。

 俺は一歩踏み出してしまった。

 今までは俺自身の考えの中にしか存在しなかった『俺しか出来ない、俺がやるべきかもしれない事』への第一歩を。


「何なら案をまとめる事を依頼に含めてるのも有りよ」

 その辺の俺の決意に気付いてか気付かないでか、リーザさんはさらっとそんな事を言ってくれる。

「勿論その辺もお願いしようと思っています。ただ基本的な方針はある程度しっかりまとめた方がいいでしょう。それに今私が依頼金として出せる費用も計算しないといけませんしね」

「その辺も依頼内容を受けてから計算する事は出来るわ」

「自分のお財布の方の確認ですよ。何せその辺把握すらしていなかったですし」

 取り敢えずサリナに片づけてもらった金貨や銀貨の確認をしておこう。

 何せ国を変えてしまう大仕事だ。

 必要最小限程度は残して出せる分は出してしまおう。

 サリナ達の生活に困らない程度に残せばいい。

 その気になれば俺も色々稼げるしな。

 最後の手段は素材や魔道具を売り払うなんてのもある。

 怪しい自作魔道具も普通なら無茶苦茶高価な素材もそこそこ在庫があるしな。


「わかったわ。明日サリナちゃん達が次の仕事の話し合いでギルドに来るからその時でどうかしら。どうせあの移動魔道具、サリナちゃん達用にセットするんでしょ」

「そうですね。わかりました。それでは明日お願いします」

 冒険者ギルドのある通りの2本裏。

 今目の前にある3階建ての建物の2階がリーザさんの部屋だ。

「それじゃこちらこそよろしくね。おやすみなさい、今日はありがとう」

「こちらこそ。それではおやすみなさい」

 リーザさんと別れる。


 帰りは面倒だから空間魔法で帰ろう。

 俺の魔力は一日ごとに戻っている、いや増大している。

 魔道具の助けを借りなくても1人でこのくらいの距離を移動するのは楽勝だ。

 もともと空間系魔法は俺の持ち魔法だし。

 魔法を起動して3歩で今夜で最後のお泊りとなる山海館モンテブス・マーリックに到着。

 部屋に戻ると既にリビング部分は誰もいない。

 カルミーネ君は自室。

 サリナとカタリナは……先に寝てしまったようだ。

 ならば明日に備えやるべきことをやっておこう。

 まずは手持ちの資金の計算だな。

 あと使いそうな異世界の知識も少し書き出しておこう。

 俺は簡易転移門を通って森の家へと移動する。

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