第45話 難民対策終わり記念に
仕事を終えてもまだ日は高い。
夕食までまだまだ時間がある。
「少し事務所でお話したいと思うけれどいいかな」
リーザさんの台詞に頷いて、ネイプルに戻って更に冒険者ギルドへ。
今回は中へ入った後、カウンターでは無く奥の部屋へ案内された。
会議室風の部屋だ。
事務員が何か書類等が入った大封筒を受け取って、リーザさんが席に着く。
「みんなも空いている場所に座って」
という事でテーブルを囲むように座った。
「さて、本日までお仕事お疲れさま。2日半で終わっちゃったけれど、あの仕事量なので早期完了報酬を含め
金額を確認していつものように領収書を書いて提出。
むろん頂いた報奨金はその場で全員均等にわける。
今回はサリナもカルミーネ君ももちろんカタリナも素直に受け取った。
「さて、ここからが本題、今後の事よ。
これで新しい開拓村が出来た。名前も正式にカナル村に決まったし、明日からは入植者が入って農作業も今週中に始まる予定。
でも開拓したばかりで付近の魔獣や魔物はまだ結構いるようだし、新しい村だから医療とか冷凍なんかの食品加工をする人も足りない。更にはカナル村とセットになる他の開拓村や開拓街を作らなければならない。
そこですごーく虫がいいお願いなんだけれど、サリナちゃん、カルミーネ君、カタリナちゃんの3人にカナル村での常駐をお願いしたいの。メインは空を飛んでの魔獣魔物対策で、他には色々な作業の魔法でのお手伝い。お手伝いの内容は簡単な治癒魔法や肉野菜の冷凍冷蔵作業、あとたまにこの前みたいな土木関係ね。
今よりは落ちるけれどそれなりの報酬は用意するわ。もし受けてくれるならDランクの指名依頼としてお願いするけれどどう?」
「ジョアンナお姉ちゃんは?」
カタリナが真っ先に尋ねる。
「ジョアンナさんには流石に常駐仕事をお願いできないわ。Cランクの常駐をお願いするほどの仕事は無いし、予算も正直言って無い。だから4人一緒の依頼がいいというなら断ってくれても構わないわ。その際は仕方ないから今までのように個別の依頼で対応してもらう形になるけれど」
「ちょうどいい依頼かもしれないですね」
俺はそう思う。
今日のサリナの動きを見てわかった。
もう3人は俺からある程度自立しても大丈夫だ。
勿論魔道具は全部渡したままで、転移門も使える状態にしておくけれど。
それに……俺は思う。
俺も少しこのパーティを離れて動くべき時なのかもしれない。
それにはいい機会だろう。
「お姉ちゃん、カタリナ達と一緒じゃやだ?」
「勿論そうじゃない。ふわふらたんぽこを解散するつもりはないわ。でもちょっと私も独りでやってみたい事があるの。それに離れていても時間があればすぐに会えるしね。転移門も森の家もシデリアの事務所もそのまま使うつもりだし」
白竜と闘ってみてわかった。
俺はもう力をほぼ取り戻している。
そして俺自身として何かしなければならない事があるような焦燥感を感じる。
じわじわとだが、少しずつ強くなっているような気がする。
「お姉ちゃん、何かする気なんですか」
「まだちょっと完全には考えがまとまっていないんだけどね」
「いなくなるの」
「ちゃんと戻ってくるから大丈夫だよ。それにカタリナ達も色々魔法を使えるようになったよね。なら今度はジョアンナお姉ちゃん無しでも大丈夫なところを見せて欲しいな」
「何処かへ行ってもちゃんと戻ってくる?」
「勿論。それに暇なときは顔を見に来るしね。どんなに遠くにいても私なら簡単にここに戻ってこれる事、カタリナも知っているでしょ」
カタリナ、黙っている。
何かを必死に我慢しているような表情だ。
俺もリーザさんも、サリナもカルミーネ君も黙ってカタリナを見守っている。
そして。
「わかった。でも必ず帰ってくる。約束」
「ありがとう、カタリナ」
リーザさんも頷いた。
「それじゃ明日にはお仕事の案内が出来るように用意させるね」
用意させる、か。
その言葉でふと俺は思い出す。
今までやろうと思って実現しなかったある野望をだ。
でも念のためまずは予防線をはっておこう。
「なら今日は夕食の時間には帰宅出来そうですか」
「ええ、大丈夫な筈よ」
よし、それならばだ。
「それならリーザさん、今日は一仕事終了と言う事でお祝いかねて一緒に夕食にしませんか。色々お世話になったのでリーザさんの分はご馳走しますよ」
お誘いの理由は言ったとおりだが、勿論誘いには裏がある。
お風呂でリーザさんのお胸を体感しようという野望だ。
ご飯に誘ってついでにお風呂も誘い、そして……
俺の今まで果たせなかった野望、成否はいかに!
「いいの。あそこの食事、美味しいけれど結構高いわよ」
「今回の報奨金を頂きましたから。それにリーザさんにも色々働いて頂きましたし、いてくれたおかげで色々スムーズに出来ましたからその感謝も含めて」
「リーザさんも一緒だと楽しい」
カタリナも攻撃に出た。
リーザさんもこれにはにっこり。
「ならちょっと申し訳ないけれど受けようかな。ただこの後ちょっと事務仕事を片づけるから今から2時間くらい後になるけれど、いい?」
「勿論です」
俺以外のパーティメンバーも頷く。
だがサリナ達は俺の野望には気付いていないだろう。
ふふふふふ。
楽しみだ。
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