第39話 開拓村造成作業
倉庫で積み込んだものは、
〇 冷凍・冷蔵の食糧大量
〇 麦栽培用の種籾
のほかに、
〇 特製お弁当5人分
なんてのまで用意されていた。
「美味しい事で評判の
おいおいその辺私情入っていないか。
まあ俺達としては大歓迎だけれども。
「ここからは川に沿って上流へ飛んで。
ならちょい飛ばすとするか。
「ゆんゆんやんやん
最近大分魔力が上がったのでちょっといつもより速度を上げてみる。
「速すぎて怖いですね」
カルミーネ君はそんな感じ。
「はやいはやい!」
カタリナは喜んでいる。
サリナはどうしているかなと思ったら、
「いつもの倍くらいでしょうか」
なんて街や川の様子から速度を冷静に確認していた。
うん、固まってばかりの頃からは大分進歩したな。
今の速度はサリナが言う通り、大体1時間当たり
この速度なら
川は狭隘部を抜け、両脇がまた広くなってきた。
「もうすぐよ。この先川が右に曲がる手前」
俺も見せられた図面をだいたい覚えている。
何となく図面で見た地形になって来たな。
速度を落として高度もやや下げる。
「そう、大体この辺」
川の両側は2段の自然堤防になっていてその両側に雑木林が広がっている。
確かに植生と地形から見て時々氾濫するという感じだな。
雑木林の成長具合から見て最後に氾濫したのは5~10年くらい前。
確かに堤防を高くして洪水を防げばいい農地になりそうだ。
「人の気配は無しと。まあこの辺には集落は無いし、魔獣掃討の冒険者には川向こうの魔獣駆除をお願いしているからね。最初の方針では向こう側を先に開発する予定だったし」
「何故向こう側を先に開発する予定だったのでしょうか」
サリナが尋ねる。
「ふわふらたんぽこの皆がいなかったら堤防の工事なんかも大変でしょ。その場合は向こう側の方が比較的洪水が少ないから、先に向こうを開発しようという計画だった訳。でもここの皆の魔法だと堤防を高くしたり川を浚渫したりで洪水対策が出来るでしょ。なら洪水のおかげでより土地が肥えているこっちを先に開発した方が食糧事情が少しでも良くなるだろうって事になったの。
それじゃまず最初の作業、焼き払いいくわね。熱波!」
燃えるというより一瞬で灰になる感じだ。
そんな場所がまず川沿いから増え始め、徐々に川から離れた方向へと進む。
炎も煙も特にないが熱だけはこれだけ離れていても感じる。
見ているうちに山すそ部分から川までの範囲がきっちり焼け、全部灰になった。
残っているのは灰をかぶった土と多少の岩だけだ。
「やっぱり見事ですね。他に一切延焼させないで、範囲内だけを完全に焼いている」
「燃やすというより指定範囲を超高温にして草木を分解するという感じかな。だから魔法の範囲外はほとんど影響ないの。まあすぐ近くなら多少熱の影響はあるけれどね」
ただ燃やすのとは数段違うレベルの模様。
「さて、この後は順番通りなら住宅地の造成ね。とりあえず下に降りましょうか」
取り敢えず上流側の自然堤防の上を着地地点と決めて、その付近の灰を風魔法で払ってから着地する。
「次はカルミーネ君の番よ。まずは図面で何処を住宅用にするか確認して、それから作業をしましょう」
「わかりました」
「図面はこれです」
うーん、ただ広げてみるのではやりにくいな。
「ちょっと待ってね。土魔法応用で作業台!」
家を作るのと同様に土を操作して簡単なテーブルを作り、サッと焼き固める。
先程の灰で表面をコーティングしたので滑らかな仕上がりに出来た。
リーザさんがふっとため息をつく。
「何か色々万能よね、ジョアンナさん」
「家を作るのよりは簡単ですね。あった方が楽だし」
テーブルに図面を広げて場所と範囲、作り上げる地形を皆で確認する。
「でも今日の作業だとカルミーネの負担が大きくないでしょうか。それに私やカタリナの作業がほとんど無いような気がします」
サリナの疑問はもっとも。
でもその辺については俺も一応考えてある。
「大丈夫。確かに一番大変なのはカルミーネだけれどね。今日はサリナもカタリナもガンガン魔法を使ってもらうから。
それじゃカルミーネ、君の今日のメインは宅地造成よ。魔力を全部使うつもりでいいからお願い。手順は任せるわ」
「わかりました。上から見た方がわかりやすいので、飛行しながらやります」
カルミーネ君が空へと舞い上がる。
「さて、次はカタリナよ。カタリナにやってもらうのはこの畑の部分。大量の水を川からこの畑部分に持ってきて、土と水で泥にして行ったり来たりさせてこの畑部分を平らにして。この方法だと細かい作業がやりにくいから住宅地の手前
「わかった。力をいっぱい使うからお姉ちゃん、あの踊り一緒に御願い」
また2人で開発した魔法を強くする踊りの新作が出たようだ。
どれどれ。
「わかったわ」
「それじゃお姉ちゃん、3、2、1、はい!」
「「さらさらじゃばじゃばおんでーぬ、さらさらじゃばじゃばおんでーぬ、お願い水の妖精さん」」
ここまで2人による身振り手振り入りハモりだ。
なお今回の踊りは両手を耳の処でぐーぱーぐーぱ―させながら膝を曲げ伸ばししつつ腰を左右に振るというものだ。(※1)
踊りそのものは以前より単調だが動きは激しい。
そしてやっぱり無茶苦茶可愛い。
どうやってこんな踊りを開発したのだろう。
なお踊りはまだまだ続いている。
ここからはカタリナの独唱のようだ。
「川からおいでお水さん、いっぱいいっぱいよっといで」
以前にも見たスライム状の水の塊が川で形成され、ずるずる這って堤防を越えて畑予定地へやってきた。
なお2人の踊りはまだ続いている。
まだまだ呪文というか続きがあるようだ。
「水さん土食べてどーろどろ。どんどん食べてどーろどろ」
なるほど、こうやって俺の指示した通りになった訳か。
それにしてもこの辺の台詞はカタリナの即興なのだろうか。
こんな魔法を使うなんて事前に言っていなかったしな。
踊りと最初の部分はどうやら決まっているようだけれども。
「どーろどろ、はいどーろどろ、どうか平らに作ってね、どうか平らに作ってね」
カタリナが最後に右手をまっずぐあげたところで踊りは終了だ。
うん、確かに今の長い歌? と踊りは効果があったようだ。
魔力の増強効果が半端ない。
結果カタリナ自身の魔力はかなり節約しつつあの泥の塊をコントロール出来ている模様。
「あの呪文と言うか踊りはどういう原理で魔力を増幅しているんだろ。私の知識ではよくわからないわ。でも確かに効果があるのは感じるけれど」
リーザさんがそうつぶやく。
まあそうだよな。
「この
リーザさんはますます??? という顔をした。
「何故可愛ければ効果が大きくなるの? その辺にどういう意味があるのかしら。何か私の知らない神様か何か介在しているのかしら。わからないわ」
真面目に考えているリーザさんにまさか俺の趣味嗜好ですとは言えない。
可愛さ判定システムとかその辺の脅威のメカニズムについて本当はちょっと熱く語りたいのだけれども。
可愛い事はいいことだ!
でもこの場で主張するのはとりあえずやめておこう。
※ 参考 踊り方は『ウッーウッーウマウマ』あるいは『キャラメルダンセン』で検索のこと。
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