第36話 高級宿満喫?
宿はちょっと強烈だった。
強烈と言うか冒険者から見たら豪華すぎるというか使用者の階層がが違うというか……
従業員の服装からしてもう違う。
揃いのびしっとした服に常ににこやかな笑み。
広くて趣味のいいロビーとそこここに使われている高級素材。
違う世界に来てしまったと慄きながら部屋へ案内される。
ああ、部屋もやっぱり全然違う。
シンプルで広いだけと見せかけて色々家具が豪華。
間取りも広いリビング風の部屋に個室の寝室が4部屋ついている。
しかもどの寝室もベッドが大きい。
筋肉ムキムキマッチョメンな冒険者が2人夜のプロレスをしても余裕な位だ。
そんなの見たくもないけれ……いや他人事なら案外面白いかもしれないな。
「室内の物はどれもご自由にお使いください。なお夕食は下の食堂になさいますか、こちらでお食べになりますか」
ちょっと考える。
「この部屋で。
何せこんな場所でのテーブルマナー、皆さん知らないだろうからな。
食堂で恥ずかしい思いをしたくないしさせたくない。
「畏まりました。どれくらい後にお持ちしましょうか」
「1時間後で。少し休憩してからいただくわ」
「畏まりました。それではごゆるりとお寛ぎください」
従業員さんはそう言って去っていく。
思わずふーっと一息。
うーん慣れないなこういう宿とその従業員さんへの指示なんてのは。
でも俺以外はもっと慣れていないだろう。
だからまあ仕方ない。
「何かお姉ちゃん、凄い部屋だね」
これはカルミーネ君。
なおサリナはお約束通りまた固まっている状態。
一方カタリナは、
「お姉ちゃんこのベッドひろーい。それにびょんびょんする」
と平常運転だ。
「ベッドのクッションが痛むからほどほどにしておきなさいね。あと食事前に少し出かけるよ」
寝室の一つの奥にいつもの簡易転移門を設置する。
「何処へ行くの?」
「カルミーネのお家。お母さんに事情を話して、ついでに仕事の前金の一部をお渡ししておくの。そうすればカルミーネ君も安心してお仕事できるでしょ」
ポシェットから封筒を取り出しささっと正銀貨を入れる。
取り敢えず正銀貨で12枚入れておけばいいだろう。
勿論長引いた場合、せめて1週間毎にはご挨拶には行く予定だけれど。
「それじゃ皆で行こう。あと取りに行った方がいいものがあれば取ってこようね」
全員でシデリアの街の事務所へと移動。
◇◇◇
シデリアのカルミーネ君の家、森の家と回って戻ったらもう夕食少し前だった。
従業員さん数名がやってきてリビングのテーブルに一式を並べていく。
「連絡して頂ければ片づけに参ります。それではごゆっくりと」
一礼して出て行ったので、全員でテーブルへ。
「すごーい。いっぱい」
「これって全部食べていいんですか」
「何か見たことがない料理があります。あ、この透明なの何でしょうか」
大騒ぎ状態だ。
「本当は食べる順番とか色々あるんだけれどね。今日はお仕事色々したし疲れただろうから好きに食べていいよ」
食卓のマナー教室は明日からにしよう。
そんな訳で食事開始。
ここは海沿いだけあって海の物も色々豊富だ。
白身魚のチーズ香草パン粉焼きとかムール貝の白ワイン蒸しとか。
無論お肉もある。
多分これ、アヒル肉にザクロのソースかけた奴だな。
タマネギソースで食べる牛のステーキもついている。
メインが何種類あるんだこの献立は。
パンですらドライフルーツ入りなんてものだったりする。
ドリンクは俺達が子供に見えたからか酒類はなし。
グレープジュースとオレンジジュース、牛乳、炭酸水がデカンタで置いてある。
「美味しいです」
「美味しいですけれど、こんなのを食べていいんだろうかと思うと……」
なおカタリナは無言で美味しそうにぱくついている。
デザート系よりメイン、肉魚系を集中的に攻めているのがカタリナらしい。
サリナはおかずもだがそれ以上にドライフルーツ入りのパンが好みの模様。
カルミーネ君は非常にバランスよく食べている感じだ。
「今日は何十人もの人が数か月かけて働くだけの仕事を一気にこなしたしね。だから遠慮なく食べた方がいいと思うよ。残してもギルドが宿に払うお金は同じだしね」
俺は白身魚のチーズパン粉焼きを炭酸水を頂きながら食べる。
海の物、それもこれだけ手をかけたものを食べるのは久しぶりな気がするな。
一品だけなら
でもこうやって種類で攻められるともう……最高!
俺も3人に負けじと食べる事にする。
なお一番食べているのはきっとカタリナだ。
サリナは食べつつ時々呆けているし、カルミーネ君はある意味きっちり自分分食べている感じだし。
俺も含め食べ盛りが4人いるとペースは早い。
ドリンクもデザートもきれいさっぱり無くなるまでそうかからなかった。
さて、ここの宿は宿についての説明書をテーブルの上に置いてある。
食べながらちらりと見たのだが、そこで俺はなかなかいい施設を見つけた。
これは是非試してみなければならない。
そんな訳で食べ終わった後、片付けを従業員さんに頼んだ際に尋ねてみる。
「この宿には貸切の浴室があると説明書で見たのですけれど」
「ええ。これからですと大浴場も貸切にすることが出来ます。お使いになりますか」
よし、キター!
「お願いするわ。時間はどれくらいよろしいかしら」
「1時間単位となっております」
「それではこれから1時間、大丈夫かしら」
「承りました。すぐ用意いたします。
ふふふふふ。
他の風呂に入るのはこの身体になって初めてだ。
高級宿の大浴場とやらの真価をみせてもらおうではないか。
場合によっては明日、リーザさんを誘ってもいいな。
まあうちの3人を洗ってやるだけでも万歳三唱なのだけれども。
そんな訳で風呂だ。
大浴場と言うから広さも期待したがそこまで広くはなかった。
森の家のものより少し広い程度だ。
あと森の家にあるシャワーはここには無い。
まあシャワーは俺が空間系魔法で知った異世界の風呂にあった付属施設。
だからこの世界の普通の風呂に無いのは仕方ないけれど。
それでも広いのはそれなりにいい。
3人とも楽しそうで隙だらけ、観察し放題だ。
カルミーネ君も大分肉がついてきたし身長もちょい伸びたかな。
これくらいの少年って独特の色気があっていいよね。
他の2人と一緒に見るのもいい。
ただリーザさんを誘うなら森の家の風呂の方がいいかな。
シャワーで髪を洗うという名目で色々タッチできるから。
それにここの風呂に宿泊客以外を入れるのも何だしさ。
本当はこの風呂をいつまでも楽しんでいたいのだが、残念ながら3人が風呂にいるのは
上がった事をフロントの従業員に告げて部屋へ。
ここでカタリナからのお願いが入った。
「ベッド広いし一緒に寝よう。サリナお姉ちゃんもジョアンナお姉ちゃんも一緒」
そういえば森の家でも一緒の部屋で寝る事にこだわっていたな。
その辺やっぱり両親がいないし寂しいのだろうか。
そんな訳でカルミーネ君は別だが3姉妹は一緒のベッドへ。
カタリナが真ん中で俺とサリナが両側で就寝となる。
今日は流石に色々やったので全員お疲れ気味。
俺も2人の寝顔を愛でるまでもなく意識が遠のいたのだった。
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