第7章 難民受け入れ作戦(1)

第32話 コスチューム1名追加

「それではまず、今回の運搬任務についての報酬だ」

 正金貨5枚と受領者未記載の領収書が出てくる。

「はい、確かに。ですが1枚は正銀貨でお願い出来ますか」

「了解した。あと各自の証明書を一応確認させてほしい。ここのギルドは初めてのようだから書類を作成する必要があるからな」


 そんな訳で全員の冒険者証明書を提出する。

「了解した。ダリア君、他ギルド籍冒険者の書類作成頼む。今回の功績点も加算してくれ。

 あとリーザさん、ちょっと頼むこっちへ来てくれ」

「わかりました」

 女性事務員1名が俺達の証明書を持って奥のデスクへ。

 そして冒険者に近い服装をした一見若い女性がこちらのカウンターにやってくる。

「ここの副支部長サブマスターのリーザさんだ。俺は魔法を使えないから魔法関連業務は彼女に任せている。

 さて、依頼する前に各自どのような魔法を使えるか確認したい。説明を頼めるか」


 ん、ちょっと待て。

 リーザという名前で赤い髪とオッドアイの女性は以前の俺の記憶にある。

 オッドアイは魔法で隠しているけれど間違いない。

 感じる魔力もそれを裏付ける。

 でも『紅蓮のリーザ』は確か10年前、王国第3魔法騎士団副長だった筈だ。

 今頃は騎士団長辺りをやっていてもおかしくない筈。

 それが何故こんな処のギルドにいるんだ。

 疑問を感じながらも俺は説明を開始する。


「わかりました。それじゃ若い順に。

 この子はカタリナです。9歳ですが水魔法を一通り使えます。魔力そのものはDランク相当です。

 次にこっちの男の子がカルミーネ君、11歳です。専門は土魔法です。同じくDランク相当の魔力を持っていますし、それ以外に魔獣解体の技能も持っています。

 そしてこの子がサリナで12歳です。本来の専門は氷雪魔法です。ですが魔力管理は上手いので治癒魔法と回復魔法の初歩なら使わせて大丈夫です。魔力は氷雪魔法の場合はDランク+という程度でしょうか。ただ回復魔法や治癒魔法を使わせるなら事前に一度私が魔法を見せて確認させます。

 そして私はジョアンナと申します。15歳で本来は空間系魔法が専門です。それ以外ですと上級以下の風魔法全般とほぼ全属性の中級以下の魔法を使えます。魔力はまあ、ご確認くださいと言う事で。

 また全員1時間程度なら飛行が可能です。ただ他の人を同伴させて飛行できるののは私だけです」


 リーザさんは頷く。

「申告の通りですわ。あとジョアンナさんの魔力は私では測定不能。大きすぎて」

「君よりもか」

「論外よ。まず勝てない」 

 俺も念のため確認しておこう。

「紅蓮のリーザさんですよね。何故こんな処にいるんですか」

「その辺はまあ後でね。ただ私は炎の攻撃魔法専門だからこういった事態だと役に立てないの。せめて魔獣退治なら別なんだけれどね。だから今は事務所詰めって訳。それよりもジョアンナさん、以前王都にいなかった? 何か覚えのある魔法紋なんだけれど」

 おいおいまずいぞ。

 騎士団の副長なら俺の魔法紋を知っていてもおかしくない。

 リーザさんは俺がまだ皇太子として表に出ていた頃の魔法騎士団副長だし。

 まだ誰かまでは思い出せていないようだけれども。


「その辺はまあ後程」

「何にせよ今までにない即戦力よ。依頼したい仕事は山のようにあるわ」

「なら任せた」

「わかったわ」

 リーザさんはペンを取ってささっと何かをかきつける。

「Cランクのパーティ宛指名依頼にするわ。報酬は1日当たり小金貨2枚。ただ今日だけは半日扱いで半額ね。依頼内容は難民受け入れ事業に関わる全般。期間は当該事案が終了するか被依頼人が申し出るまで。これでいいかしら」

「おいおい随分高額な指名依頼だな」

 支部長マスターはちょっと渋い顔だ。


「そこのちびちゃんだって1日正銀貨1枚のEランク5人以上の実力はあるわよ。ジョアンナさんなら本当は個人で小金貨が数枚単位で必要だわ。一応自称Dランクだから既定の上限金額にしたけれど。どうせチェーザレ公から臨時の運営資金が出ているんでしょ」

「そりゃそうだが」

「なら論より証拠よ。ちょっと同行して行ってくる。現在の懸案事項の3割は解決してくるわ」

 うーむ、ここでは支部長マスターより副支部長サブマスターの方が押しが強い模様。

 支部長マスター自身もリーザさんをさん付けで呼んでいたし。


「もう少し報酬は安くてもいいですよ。非常事態ですし」

 ちょっと支部長マスターが可愛そうなので申し出る。

「駄目。こういう場合こそ正当な代価を払わないと。これでも正当かどうか微妙なところだわ。ギルドの規則でこれ以上支払えないけれどね。

 という訳でこの指名依頼、引き受けてくれるかしら」

「お願いがあります。3人とも年齢が年齢なので、酷使はしないで下さい。あと3人は夜8時過ぎまでには休ませてください。何なら私が迎えに行きます」

「問題ないわ。魔法使いをこき使っても魔力が減るだけで効率悪いし。なら決定ね。サインお願い」


「それでいいかな、3人とも」

「大丈夫です」

「了解です」

「わかった」

支部長マスター、宜しいですか」

「リーザさんがそう言うなら確かなのだろう」

「なら署名させていただきます」

 パーティ名欄に『ふわふらたんぽこ』、代表者名に『ジョアンナ』と署名する。


「ダリア、身分証明書はもう大丈夫?」

「先ほどの依頼でクラスが昇格したので作り直しています……終わりました」

「なら良し。ちょうだい」

「はい」

 ダリアさんがバタバタ走ってきて新しい身分証を渡してくれる。

 俺はCランク、サリナ達3人はDランクに昇格していた。

「それじゃ現場の視察かねて4人を案内してくる。後はイザベル任せるわ」

「了解です」

「じゃ行くわよ」

 そのまま速足で歩きだすリーザさんに慌てて俺達もついていく。

 

 外へ出てリーザさんは立ち止る。

「距離があるし混んでいるから飛行お願いできない? 場所はここから北西の海側。案内するわ」

「わかりました。ゆんゆんやんやん風の精シルフィたん、どうか空を飛ばせてね」

 リーザさんを含め全員が浮かび上がる。

「方向はあっち。とりあえずそこそこ速めに進んで」

 指さした方向のままに馬車よりも少し速い速度で飛ぶ。


「便利よねこれって。私は炎熱魔法専門で他が全く使えないからなあ」

「何でしたら他の属性を使える強化魔道具をお作りしますよ。今は忙しいから時間がある時にですけれど」

「うう、それ魅力的だわ。出来れば治癒属性が欲しいのよね。あれがあればいざという時に少しは人を救えるし」

 俺がちょっと考えた時だ。


「私よりリーザさんが使った方がいいと思います。魔力が圧倒的に上ですし、助けられる人の数も多いでしょうから」

 俺より先にサリナがそんな事を言った。

「どういう事?」

「いいのか、サリナ」

「ジョアンナお姉ちゃんがいいと思うなら」

 この衣装コスチュームは本来部外秘だ。

 でもサリナが言っている事は理解できる。

 確かにリーザさんは二つ名持ちだけあって魔力は上位魔導士レベルだ。

 大分成長したとはいえサリナとは比べ物にならない。

 だから治癒属性強化のピンク衣装コスチュームを纏えばかなりの人数を救えるだろう。

 でも待てよ。

 治癒と近い事が出来る属性の衣装コスチュームは他にもある。

 その中でも炎熱と比較的相性がいい属性があるよな。

 

 俺はポシェットから紙と鉛筆を取り出してささっとメモする。

 なおメモは2つだ。

 まずはリーザさん。

「リーザさん、この呪文を唱えてみてくれませんか」

「えっ何々、『メタモルフォーゼでメイクアップ! 白色のホワイトライト!』。ええっ!」

 ここから数秒は自動で身体が動く。

 リーザさんの冒険者風軽強化服がさらっと脱げて全裸に。

 うん、とっても美味しいけれどちょい悔しい。

 胸がしっかりありやがる。

 でもなかなかいい形で宜しい。

 俺は本来育ち切っていない位が好きだという自覚があった。

 なのだがこういった大きいのも実際に見るとこれはこれで捨てがたい。

 ぶっちゃけとっても美味しそうだ。

 後で一緒にお風呂に入ってくれないかな。

 もみもみすりすりした上で吸い付きたい。

 おしりもなかなかいい感じ。

 程よく鍛えられていて……ああ。


「次はサリナ、この呪文を唱えて」

「メタモルフォーゼでメイクアップ! ピンク色のピンク治療師ヒーラー!」

 うん、こっちもやっぱりいい。

 記録して後世にまで残したい。

 あとお風呂での記録映像も出来れば……

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