第26話 新しい着装具
翌朝。
宿で精算をして、ついでに注文していた弁当10個を受け取ってギルドへ。
ギルドでカルミーネ君と合流し、ギルドの表に回って相変わらず受付席にいる
「住居変更承りました。ところでジョアンナさん、寝不足ですか?」
一応回復魔法で誤魔化したつもりだったのだがこの人には通用しないらしい。
「ちょっと引っ越しで色々と作業をしたものですから」
「ジョアンナさんなら多少は魔法でカバー出来るでしょうけれど、無理はならさないで下さいね」
「気を付けます」
そう言ってから暫くぶりに依頼が貼ってある掲示板へ。
俺達一行が掲示板に近づくとそれまでいた皆さんがささーっと道を空ける。
うん、なかなかありがたい。
それ以上細かい事はもう考えない事にした。
そんなパーティ名俺達は知らないからな。
さてそれでは掲示板でお仕事を探すとするか。
「たまには違う感じのもやってみましょうか」
「そうですね。この辺では狼魔獣も少なくなりましたから」
誰のせいだよ、という小声が背後から聞こえたような気がしたが気にしない。
おっと、これはちょっと今までと違って面白い依頼かな。
俺は一つの依頼書に目をとめる。
内容はマウリアという薬草の採集。
依頼ランクはDで報奨金は小金貨5枚とかなりお高め。
マウリアそのものは割とメジャーで便利な薬草だ。
少量でどんな病気にもそれなりに効くという便利な性質だが、生育条件が厳しい。
『空気が澄んだ高地で朝夕は霧が発生しやすくなおかつ風通しがいい砂礫の土壌』にのみ生育するという性質があるのだ。
結果的に生えているのは山奥の深い谷の崖とか岩場。
つまり魔獣が多い上に地形的に採取困難な場所に生えている。
だから薬草採取にDランク依頼で報奨に小金貨5枚なんてついてしまう訳だ。
「でもマウリアが生えている場所って結構遠いですよね」
「いつもの方法で行けば日帰り出来るよ。それに便利な道具も昨日作ったしね」
寝不足の理由はこれである。
正に色々という感じで便利と思われる道具を幾つか作ったのだ。
まだ作りかけや案段階のものも多いが、取り敢えず昨日の段階で2種類完成。
早速今日使ってみるつもりだ。
「それじゃこれ、ちょっとやってみようね」
継続依頼じゃないので依頼用紙を剥がし、受付へと持っていく。
受付嬢よろしく座っている
「この依頼を受けたいのですけれど、受付お願い出来ますでしょうか」
「助かりますね。そろそろマウリアの在庫が切れそうだと商業ギルドの方からせっつかれていましたから。期限は一応30日ですが宜しいでしょうか」
「大丈夫です」
出来れば今日中、遅くとも明日には終わらせる予定だ。
その方法もすでに頭の中にある。
「わかりました。なお今回の依頼はマウリア5株ですが、それ以上の場合も重さによって報奨金を増額させますので宜しくお願い致します。更にこれは継続依頼ではありませんが……」
「この依頼、Cランクですがふわふらたんぽこなら大丈夫かと思います。もし完了したら依頼受付即完了という形でお受けしますので宜しくお願い致します。あえて今の時点では依頼受け付けをしないので、もし出来たらという形で結構です」
どれどれ、内容を見てみる。
狩猟系依頼で
ちなみに報奨金は1頭あたり正金貨1枚。
確かにマウリアが自生している場所付近なら
毛皮や肉だけでなく様々な部位が薬の材料として珍重されている魔獣だ。
新鮮な状態で、というのはその辺の用途も考慮されているのだろう。
ただし
しかも獲物を倒すために簡単な風魔法まで使う。
だからよほどの冒険者でもなければ手が出せない。
1匹で正金貨1枚というのもむべなるかな、という処である。
ただ、風の
俺が奴の風魔法を防いで、サリナに氷雪魔法で倒して貰えばいいだろう。
奴の弱点は低温、体温が5度以下になると冬眠モードに入るからな。
「わかりました。それでは行って参ります」
「宜しくお願い致します」
「今日はちょっと近道をするよ。ついてきて」
行く場所は俺達の新しい事務所というか、家の入口というかあの場所だ。
「ここがこれから私達の拠点だからよろしくね」
「便利な場所ですね。でも何故ここへ?」
「近道するのに便利な場所があるの」
ここからマウリアが自生する山までは
しかし森にある俺の家からなら
以前フィアンの村へ出た時に付近の地理は何となく確認済み。
「それじゃ森の家へ行くよ」
事務所に鍵をかけて俺達は洋服ロッカーの中へ。
「ここって」
「そう。毎回お風呂に入っているあの家だよ」
更に階段を上って屋上へ。
「ここから飛んでいくのが一番早くて近いと思うんだ。
それじゃ今日のこれからの予定をを説明するね。
まずはここからいつものように空を飛んでティカールの峡谷を目指す。だいたい
ついたらそれぞれで崖を探してマウリアを探す。といっても多分生えている姿を皆見たことは無いと思うから最初は皆で一緒に探すつもりよ。
1時間くらい探したら付近に
「でも確かマウリアは崖に生えているって聞きました。僕達が崖に取り付いて探していくんですか」
うーむ、カルミーネ君、その辺知っていたか。
「今回はちょっと新しい道具があるの。まずは皆、いつもの恰好になってみて」
「わかりました。メタモルフォーゼでメイクアップ!
「めたもるふぉおぜでめいくあっぷ! ぶるうおーたー!」
「メタモルフォーゼでメイクアップ!
うん、3人の一斉着装シーン、イイ!
細かな処まで見逃さないよう俺は集中して3人を見る。
どうもご馳走様でした。
「それじゃ次、サリナとカルミーネはこれを、カタリナはこれを唱えて」
表音文字だけで書いてあるか表意文字が含まれているかだけで基本は同じ呪文だ。
「
「しるふぃいどたんおねがいします! ひそーちゃくそう!」
シャキーン、シャキーン、シャキーン。
〇 頭に大きなリボンがついたカチューシャ
〇 腕に同じく大きなリボン形と小さな翼がついた腕輪
〇 足のブーツにやっぱり大きなリボンと小さな翼
がそれぞれ装着される。
「えっ、これは」
「想像つくでしょ。空を飛ぶための装備よ。試しにこの呪文を唱えてみて」
飛行呪文を書いて紙を渡す。
なお飛行呪文は俺と共通だ。
「ゆんゆんやんやん
「ゆんゆんやんやん
「ゆんゆんやんやんしるひたん。 おねがいおそらをとばせてね」
3人ともあっさり上空へ。
「これ面白い!」
怖いもの知らずのカタリナは早くもガンガン飛んでいる。
一方でサリナは注意深くゆっくり。
カルミーネ君はその中間くらい。
「凄い、こんな事も出来るんだ」
「昨日頑張って作ったの。ただ皆まだ魔力がそこまで余裕ないから、行きと帰りは私の魔法で飛んでもらうね。その代わり現地ではこれでめいっぱい飛んでもらうから。カタリナも確認したら戻っておいで。行くときは私の魔法で皆で行くよ」
「わかった。でも楽しい」
元気だけれど聞き分けはいいんだよな。
そこがまた可愛い。
「それじゃ行きます。ゆんゆんやんやん
これで
その気になれば『速く』を更に増やすことでもっと速度をあげられるが、これ以上は極端に魔力の消費が大きくなる。
だから長距離移動の場合は今のところこの速度にしている。
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