第23話 祭りの御馳走より
上空から見る限り、まだ半径
「私が今見た限りゴブリンは1時間半以内に村を襲うような範囲にはいないわ。だから一度降りて村長にこの事を伝えた後、回りを飛んでゴブリンを捜索することにしましょう」
「わかりました」
皆さん納得してくれたので全員で下へと降りる。
俺が村長に、
○ 現在半径
○ これから近辺を飛行してゴブリンを捜索すること。
○ 姿は一時的に見えなくなるかもしれないが、すぐに戻れる範囲にいるので心配する必要は無いこと。
を告げた後、再度全員で空へ。
「とりあえずぐるっと周りを飛んでみて、ゴブリンの足で2時間以内の場所にいないか調べるよ」
「わかりました」
「了解です」
「わかった」
村を中心に今度は半径
まず俺達は東北方向を目指す。
午前中の話ではこちらが一番注意すべき方向だから。
でもそうやって
これはいるな、間違いなく。
「この先で気配を感じるわ。魔法で気配を消して近づいてみましょう」
「わかりました。それでは会話もしない方がいいですか」
「その辺含め魔法で向こうに気づかれないようにするから大丈夫よ」
「わかりました」
「了解です」
「わかった」
気配隠匿の魔法を起動して速度をやや落として注意深く飛行。
案の定ゴブリンの群れがいた。
雑木林の中にやや広い広場を作って雑木を束ねた棲み処を作っている。
150匹位のかなり大きな群れで、今起き出してまもなく動こうかという状態。
ここから村までは
真っすぐ村へ向かったと仮定して午後4時くらいだな、襲撃は。
「攻撃しましょう」
サリナの言葉でちょっと考える。
他も回って全体的にゴブリンがいないか確認してからの方がいいだろうか。
でも今ならゴブリンもこっちに気づいていない。
それなりにまとまっているから攻撃しやすい。
サリナの魔力も魔法を使い始めてから数日にして結構成長している。
属性は氷雪魔法だから雑木林の中で広域攻撃をかけても被害はあまり無い筈。
巻き込むような人の気配もいない。
「わかったわ。今回はサリナにお願いするね。出来るだけ強力な魔法で一気に全部を凍死させて」
「わかりました。それではカタリナ、練習したあれ一緒にお願いしていい?」
「うん、大丈夫」
何故カタリナがお願いされるのだろう。
何を練習したのだろう。
でも取り敢えず俺はサリナに全て任せることにする。
「それでは行きます。さん、はい」
「「ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん、ちゃん、ぴゅーぴゅーさむさむチルノたん。どうかお願い大寒波。寒ーい寒ーい大寒波。お願い全てを凍らせて!」」
サリナとカタリナ2人で身振り手振りまで交えて唱和というか踊った。
手や腕を振り回す感じの踊りで足は左右方向への2ステップ。※1
ぶっちゃけすごく可愛い。
さてはカタリナと練習時間に色々試して開発したなこれは。
ここまで可愛いと魔力増幅効果も凶悪なまでに高くなる。
凶悪なまでに増力したサリナの寒冷魔法が起動!
ゴブリンを含む辺り全てがあっさり瞬間冷凍された。
ゴブリン達も何が起きたのか感じる間も無かっただろう。
俺は村でパーティを『大規模魔法攻撃を得意とする』と説明した。
確かに今の攻撃は大規模魔法攻撃そのものだ。
サリナがまだ魔法を使うようになって半月程度なのに成長著しい限り。
お姉ちゃんはとっても嬉しいぞ。
「降りて回収するよ。でもその前に回りの樹とかを元に戻してあげて」
何せ見事に凍っているからな。
このままだと雑木林のこの部分だけがハゲになる。
「あ、そうですね。では行きます。『ぴゅーぴゅーさむさむチルノたん。ゴブリン以外は解凍ねっ!」
無事木々や地面は解凍された。
瞬間冷凍だったから木々等の損傷もほとんど無いようだ。
でもゴブリンは凍り付いたままで生命反応も全て消えている。
「それじゃ回収しようか」
全員で着地し、手当たり次第にゴブリンを収納庫ポシェットに回収。
一通り無くなったところで残りを確認……全部回収したな。
「それじゃ最後にぐるっと村の回りを回って他にゴブリンがいないか確認して、それから村へ戻るよ」
「わかりました」
「了解です」
「わかった」
俺はいつもの恥ずかしい呪文を唱える。
でも大分慣れてきたかな、これも。
◇◇◇
村から半径
更に言うと他の魔獣もいない。
捜索ついでに見つけ次第全部倒したからだ。
そんな訳で村へと戻る。
村長宅前へと降り、扉をノック。
「ああジョアンナさん。ゴブリンの方はどうでしょうか?」
「もう大丈夫です。村から
「本当ですか!」
おっと調子が変わったぞ。
「何人か確認役を呼んでいただけますか。あとこの前の広場を貸していただけると嬉しいです。倒したゴブリンを確認していただこうと思っています」
「なんですと」
理解が追いついていない様子だ。
「ゴブリンは倒しました。150匹位の群れをそのまま全滅させました。また念の為この村の周囲
それで倒したゴブリンを確認していただきたいのですが、何分数が多いので確認役を何人か呼んでいただけると助かるのですけれど」
理解しやすいようにゆっくりとそう告げる。
「わかりました。それで確認役はどちらへ向かえばいいでしょうか」
やっと理解してくれたようだ。
「倒したゴブリンは収納庫に入れてあります」
「150匹程の群れを倒して、それが丸々収納庫に入っていると」
「ええ。一応魔法使いのみのパーティですのでそういう収納庫も持っております」
ちょっと不用心だったかなと思う。
通常に流通している魔法収納庫は、最大で容積10倍程度のものまで。
俺達が使っているポシェット型収納庫は若返る前の俺が空間魔法を使い、異世界の知識や発想、技術を得た上で拵えたスペシャルだ。
強いて言えば強大な魔法使いが魔力を注ぎ込んでワンオフで20倍程度の収納容積を持つ収納庫を自分用に使っていたりはする。
でも俺達が使っているような『時間停止・容量無限』なんて便利な収納庫は他には存在しない。
まあ普通の人は並みの魔法収納庫すら目にする機会は少ないので特殊性はばれないだろうけれど。
でも次回からは気をつけよう。
「わかりました。至急集めます」
「それではここの広場に倒したゴブリンを出してお待ちしています。魔法で凍らせていますから匂いも特にないし害も無いでしょうから」
俺は獣や魔獣の解体時の臭いが苦手だ。
でも魔物は獣系とはまた違う臭いを発する。
ただ今回は超低温で冷凍されているので臭いもほとんど無い。
冷凍した温度が充分に低いので短時間なら外に出しても溶け出す事も無い。
「それじゃ捕らえたゴブリンをこの広場に出しましょう。数えやすいように10匹ずつ並べてね」
「わかりました」
冷凍ゴブリンが出てくる出てくる。
村長が戻ってくる前に他の村人に見つかり野次馬がどんどん増えてくる。
まあこの作業は村人を安心させる為でもあるので特にとがめたりはしない。
見るだけ見てくれという感じだ。
村長が何人か連れて戻って来たときには既に広場の周囲を村人の皆さんが取り囲んでいる状態だった。
「おお、これは……」
「こんなにいるのですか……」
だいたい最初に村長の家で会議をしていたあの面々だな。
それぞれ絶句して驚く顔がなかなか愉快で宜しい。
「それでは確認をお願い致します。あとこの周囲
群衆から歓声があがる。
よしよし。ここに並べた意味もほぼ達成だ。
数えていた面々が村長のところに集合。
少し話し合った後、村長が俺達の方へとやってくる。
「ゴブリンキング1頭、アークゴブリン5頭、メイジゴブリン7頭、ゴブリン139頭。合計152頭、確かに確認させていただきました。それでは依頼達成証明書をお出ししますので少しお待ち下さい」
村長が一度家の中へ。
よしよし、依頼達成証明書が貰えるとギルドへの報告が楽になる。
無い場合はこのゴブリンから魔石を取りだして討伐頭数を証明しないといけないからな。
これでゴブリン処理を後に回せるわけだ。
ゆっくり風呂に入る時間も作れる。
ほどなく村長が戻って来た。
「それではこれが依頼達成証明書になります。壕や塀の強化をしていただいた件についても記載しておきました。本当にありがとうございます。宜しければ今夜は村を挙げてのお祝いを致したいと思いますので是非ご参加下さい」
お祝いのお祭りか。
ちょっと魅力的な提案だ。
昼食も美味しかったし少しだけ心を動かされる。
しかし、だ。
「いえ。私達はこの件を所属ギルドにも早急に報告しなければなりません。ですからご好意だけをいただいておこうと思います」
悪いが仕事の後の風呂の方が優先だ。
そんなの毎回やっていると思うかもしれない。
でも何度やってもいいものはいいのだ。
俺のスキンシップに対しての3人の反応が少しずつ変わってくるのも楽しいしな。
「それではゴブリンを回収します。皆よろしく」
4人で分担してポシェット型収納庫に全部仕舞う。
「以上で私達は失礼致します。『ゆんゆんやんやん
俺達は空へと舞い上がる。
あとは街までひとっ飛びだ。
ギルドに報告し、明るいうちにカルミーネ君を家に帰す。
それでも1時間くらいは風呂の時間が取れる計算だ。
今日は皆頑張ったし洗ってあげるだけで無くマッサージをしてやってもいいかな。
無論3人にマッサージをしてもらうのも気持ちいい。
そんな邪念を隠しつつ、俺達は街を目指した。
※1 いわゆるパラパラ系統の踊り方だと思ってください。『パラパラ』がわからないヤングな方は検索すれば……
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