第18話 お家の中で一仕事

「このままギルドへ出すんですか」

 カルミーネ君が俺に尋ねる。

「そのつもりだけれど」

「勿体ないですよ。洗って解体してからならその分高く引き取ってくれます」

 確かにそうだけれどな。

「でも私もサリナもカタリナも解体出来ないの」

「僕が一通り出来ます。20匹程度ならお昼にはじめれば夕方までには全部終わりますから」

 何かそれでは申し訳ないような気がする。

 でもまあその分ボーナスをあげればいいか。

 でも待てよ。


「それならギルドのように冷たくて水が沢山使える場所が必要よね。そうしないと肉が傷んじゃうし」

 そう言ってふとある方法を思いつく。

 これならちょうどいい解体場所を提供可能だ。

 しかも……ムフフフフ。

 よし!


「それじゃちょっと待っていて。あとカルミーネ、ここの穴を魔法で埋めておいて。この場所をちょっと使いたいからなるべく平らにね。お姉ちゃんはちょっと出かけてくるから。でもすぐ戻るからね」

「わかりました」

「了解です」

「わかった」 

 3人の返事が返ってきた処で俺はポシェットから魔法道具を取り出す。

 お馴染み簡易型転移門だ。

「すぐ戻ってくるから誰もこの転移門を通らないようにね」

 そう言って俺は中へ。

 背後でカルミーネ君が驚いた声が聞こえたような気がしたが気にしない。


 やってきたのは通称『森の家』だ。

 俺はいつも通りリビングに出た後、玄関から外へ。

 家を前にしてまっすぐ立てば準備完了だ。

「収納!」

 必要以上に大きく頑丈な家がポシェットに吸い込まれる。

 そう、この家は元々収納具で運ぶ事を前提に設計及び建造した。

 だから必要以上に頑丈に造ってあった訳だ。

 出したり仕舞ったり、多少地盤が悪い処へ出したりしても大丈夫なように。

 この家なら備え付けの魔石で水を自由自在に使える。

 風呂場を魔法で冷やしておけば解体用にちょうどいい。

 全部終わったら収納庫に毛皮や肉をしまい、風呂場を清掃魔法で綺麗にして皆でお風呂だ。

 どうだ俺の完璧な計画。


 家の中にあった転移門ごと仕舞ってしまったので、代わりに簡易型転移門を出してさっきの森に戻る。

「ええっ。出た」

「簡易型転移門と言って他の場所へ移動するための道具。わかっているとは思うけれど他の人には秘密にしてね」

 カルミーネ君にそう言って、そして俺は平らになった元大穴の方を向く。

「うん、これくらいきっちり平らだと楽でいいかな。それじゃ出すよ」

 デン!

 四角い頑丈そうな大きな家が出現した!

 流石にこれにはサリナやカタリナも驚いているようだ。

 久しぶりにサリナが固まっているところを見た。

 うん、こういうのも可愛いよな。


「これってあの、お風呂のおうち?」

 カタリナは気づいたようだ。

「そう。あの家はこのポシェットで運べるように頑丈に造ってあるの。だから平らな場所があればこうやって出せるわけ」

「本当にジョアンナお姉ちゃん、何者なんですか」

「普通の魔法使いだよ。さあ中に入って」


 ご飯を食べて解体作業をしようと思ったがちょっと考えを変える。

 まだお昼にはちょっと早い時間だ。

 しかも森の中で水を使ったので少しみなさん泥で汚れている。

 ならば解体や昼飯は後だな。

 ここはやっぱり風呂の時間にすべきだろう。

「解体の方はもう少し後でいいわ。時間停止措置がかかっている収納庫に入っているから。だから皆汚れているし、先にお風呂にしましょう!」

 ふふふふふ、ショタとロリのお風呂天国だ!

 なんて本音は一切表情にも言葉にも出さない。


 全員で脱衣所へ行く。

「服は着替える前の服がポシェットに入っている筈だからそれを使って。タオルはここにある奴を自由に使っていいから」

 ささっと服を脱いで先に風呂場へ。

 湯船とお湯タンクに魔法でたっぷりお湯を入れておく。

 さて、皆さんがやってきた。

 堂々とやってくるカタリナ、ちょっと気にしているサリナ、色々気にしてかつタオルで隠しているカルミーネ君。

 ふふふふふ。

 昨日とちがい今日はたっぷり可愛がる時間がある。

 俺の天国が始まった。


 ◇◇◇


 風呂はいい。

 風呂は心を潤してくれる。

 リリンの生み出した文化の極みだ。

 そんな台詞を何処かで聞いたなと思いつつ食事の時間。

 ほんとうはもっと風呂に入っていたかったが、子供が風呂で我慢できるのは半時間30分がやっとの模様。

 けっこうぬるめにしているのだけれど、やはり体温が高いからかな。

 まあそれでも色々楽しませて貰ったけれど。

 洗ってあげて感触を楽しんだり何気なく見て観察したり。

 いろいろまあ御馳走様でした。

 明日もどうぞ宜しく。

 宿屋で作って貰ったお弁当を皆で食べ、そして解体だ。

 そこで俺は一つ提案を思いつく。


「黒狼も灰色狼も継続依頼だから持っていったら報奨金が出るよね。だったら今日全部一気に解体しないで、お昼2時間で出来る処まででいいよ。どうせ保管庫に入れている間は時間停止だから痛まないしね。

 だから無理はしないでね」

 多少無理しても怪我しても魔法で治療なり回復なり出来る。

 でも痛い思いとかさせるのは嫌だ。

 基本的にロリもショタも見て楽しむ物。

 何処かの世界に『YesロリータNoタッチ』という至言があったな。

 まあ俺はお風呂で洗うと称して大分タッチしているけれど。


 さてカルミーネ君が解体をしている間、俺は俺しかしないお仕事をするか。

 まずは風呂で使ったタオルを魔法で洗浄して乾かして棚にしまってと。

 あとはその辺の木でも1本使って風呂用の椅子と洗面桶をもう少し作っておこう。

 新たにカルミーネ君が来たからな。

 なお俺には細かい寄木細工をするような技術や魔法は無い。

 なので基本的に一刀彫り方式だ。

 掘る訳では無く不必要な部分を焼いて取り除く感じ。

 あとある程度木の灰も作っておいたほうがいいかな。

 これが無いといざという時にお風呂用の石鹸がつくれない。

 更には風呂用の森の香りがする精油なんかも葉っぱから加工しておこう。

 こういった細々した作業が普段の生活を快適にするわけだ。

 なんてまだこの身体になってから片手分しか日数経っていないけれどさ。


 まずは家に近い場所に立っていたそこそこの太さの樹木を炎魔法でバッサリと伐採する。

 同じく炎魔法で枝を全部払い、皮部分を焼いて丸太状態に。

 丸太部分は風魔法で屋上へと運んで、更に枝部分もある程度切り刻んで屋上へ。

 丸太部分の太い部分を使って火魔法で風呂桶と椅子を一つ作成。

 枝の中から綺麗な葉っぱ部分だけを選んで集めて収納庫へ。

 この葉っぱは後に研究室で精油を作る材料にする予定だ。

 丸太の残りは後に使えるよう屋上の隅に転がして、余分な枝や葉っぱは魔法で燃焼させて灰をキープ。


 これくらいなら強化装備の衣装コスチューム無しでも余裕だ。

 今のところ衣装コスチュームが無いと無理なのは風魔法で空を飛ぶ位かな。

 それでも数日で俺自身の魔力、それなりに強くなっている気がする。

 俺の身体も成長期なのかもしれない。

 確か以前、強化装備無しで青龍とバトルした覚えもある。

 確か『遺伝子書換・テロメア長回復装置』用の魔石を取る為だったよな。

 今の俺はとてもそこまでの魔力は無い。

 でもこの調子で魔力が強くなっていけば、そのうちあの頃の力に届くだろう。

 その時はまた男に戻るかな。

 今の状態もなかなか楽しくなってきたのでその辺悩みどころだけれども。

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