第15話 恩を売って身動きできなくするのは基本だよね

 ギルド2階にある支区長マスター室で待つ事少し。

 トントントン、ノックの音がした。

「カルミーネです」

「入りなさい」

 先程の少年が入ってくる。

 妙に緊張した感じだ。


「カルミーネ、貴方とパーティを組みたいという方が現れました。魔法使いのジョアンナさんとその妹さん達です。ジョアンナさん現在はD級ですが、実際はもっと優秀かつ強力な魔法使いです。でもこの辺にはあまり詳しく無く冒険者としての経験も浅いので魔獣の解体等も苦手としています。ですからカルミーネなら色々お役に立てると思って推薦しました。ご挨拶なさい」

「カルミーネです。一生懸命頑張ります。宜しくお願いします」

 うんうん必死で可愛くてよろしい。

 それに体型的にも顔的にも男の娘が似合いそうだ。

 伸ばしたままの髪は後で洗ってトリートメントした後カットして整えてやろう。

 ふふふふふ、これでまた萌えられるぜ。

 それにしても支区長マスターの説明、随分とまた俺の事をよく見ているもんだ。

 何も過去を言っていないのに説明が正しすぎる。

 やっぱりやばいよなこの人は。


 さてそんな色々な考えはとりあえず封じてにこやかにご挨拶をさせてもらおう。

「はじめまして。私がジョアンナです。あとこちらが」

「サリナです。はじめまして」

「カタリナです。はじゅめまして」

 よしよし、ちょっとかんだのも可愛いぞ。

 そう思いつつ俺は続ける。

「3人とも魔法使いでこの辺に不案内。だから君がいてくれると大変助かると思うの。明日の朝からさっそくで悪いけれど一緒に働いてくれるかしら。何も獲物を捕らなくても最低1日正銀貨1枚は保証するわ」

「いいんですか、そんなに」

 それくらいは安いものだ。

 実際はもっとやるつもりだけれどな。

 カルミーネ君が男の娘になる事を断れないよう、しっかり縛ってあげよう。


「あとカルミーネ君にもじき魔法を覚えてもらうからお願いね。その際色々他の人に秘密の内容も話すけれど、君は秘密を守れるかな」

「はい、大丈夫です」

 まあ魔法で人格を見て大丈夫だってわかっているけれど。

支区長マスター、ご紹介ありがとうございます。それではカルミーネ君と今後の事について話ながら準備をしたいと思います」

「わかりました。それではカルミーネをよろしくね」

「ええ」

 階段を降りて裏口からギルドを出る。


 さて、ちょっと小細工でだめ押しをさせて貰おう。

 カルミーネ君ごめん、君がなまじ可愛いのが全て悪いのだよ。

 そう思いながら彼に尋ねる。

「ところでカルミーネ君のお家はどこ? 良ければお母さんにでもご挨拶をしたいと思うんだけれど」

「母は病気ですので行かない方がいいです」

 そう、そこもカルミーネ君の弱点だ。

 俺の悪いの方の思考回路がそう呟く。


「どんな病気かな。これでも私は魔法使いである程度の治療魔法は使えるの。だからご挨拶ついでに治るものなら治してあげるけれど」

「本当ですか! でも家にはあまりお金も……」

「これからカルミーネ君が一緒に働いてくれるんでしょ。そのお礼代わりだからお金とかは気にしなくていいよ」

 俺の悪の思考回路に全く気づいていないサリナやカタリナの視線が痛い。

 残念ながら俺は聖人ではない。性人だ。

 だからカルミーネ君には可哀想だが俺の欲望のために沼に沈んで貰おう。

 男の娘でショタという沼にどっぷりと。


 カルミーネ君の家は南側、あの治安の悪い通りにもほど近い一角にあった。

 でも何故か今日はヤバそうな皆さんは俺に何も声をかけない。

 それどころか何か俺を見てそそくさと路地へ入ったり、目を逸らして脇へと言ったりする有様だ。

 支区長マスターの脅しが相当効いているのだろうか。

 まあ俺達も楽だから深くは考えない事にする。

 さて、カルミーネ君の家に着いた。

 でも家がかなりボロい。

 これは……後で考えよう。


「ただいま。お客さん」

 そうカルミーネ君が扉を開ける。

 うんやっぱりボロいな。

 そして家財道具が少ない。

 換金出来る物は全て売ったぞ位の状態だ。

 部屋も一部屋だけですべてが玄関から丸見え。

 一番奥にあるベッドで30代くらいの女性が寝ているのが見える。

 カルミーネ君が帰ったのにも気づいていないで寝ている模様。

 顔色や呼吸からみてかなり辛そうだ。

「お母さん、お客さ……」

 そう言って起こしかけたカルミーネ君を俺は手で制す。

「このままでいいわ。その方が治療しやすいから」


 この症状は俺にはわかる。

 栄養失調と風邪こじらした肺炎と、まあ色々だ。

 つまりまとめて言えば貧乏病。

 俺の魔法で完全治癒できる。

 でもどうせなら完全を期しておくか。

 まだ俺の魔法の力は以前と比べると弱いから。


「ちょっと病気治癒モードに変身するけれど驚かないでね」

 そう言って俺は呪文を唱える。

「メタモルフォーゼでメイクアップ! ピンク色のピンク治療師ヒーラー!」

 白地にピンク色の魔法強化衣装コスチュームに着替える。

 本来はこれ、途中で全裸になるので人前ではやらない。

 でもショタの前なら話は別だ。

 わざと見せつけるのもこれはこれで萌えるし反応もまた楽しみ。

 あ、カルミーネ君が顔色を真っ赤にして固まった。

 刺激がちょっと強すぎたかな。

 萌えつつ横目でじっくり観察しながら銀色の魔法杖を振るう。

ピンク色の優しい癒やしの精よピンクカインドリーエインセル、完全治癒回復魔法!」


 相当に栄養状態が悪かった模様。

 思ったより魔力が吸い込まれていった。

 でもこれで取り敢えず全部の症状は治癒出来た筈だし全回復した筈。

 念の為状態を確認した後、ショールをポシェットから出して羽織り恥ずかしい衣装を隠す。


「これで起きた時にはもう元気な筈よ。あとで美味しい物でも食べさせてあげて。明日からの仕事の為に準備金は渡すから」

「で、でもそれじゃ……」

「その分君が明日から頑張ってくれればいいの。でしょ」

「ありがとうございます!」

 凄い勢いで頭を下げるカルミーネ君。

 ふふふ堕ちたな。これで君は俺の思いどおりだ。

 ああ男の娘スタイルを見るのもお風呂でショタをいじるも待ち遠しい。


「お母さんはもう大丈夫。とりあえずは自然に起きるまで寝せていた方がいいと思うわ。それにまだ買い物もあるからカルミーネは一緒についてきて」

 あの服屋でカルミーネ君のショールを買って、全員分のスパッツを注文してと。

 あと彼には食料もある程度買ってあげよう。

 お金が勿体なくて使わないなんてすると困るからな。

 その後は当然風呂だ。

 何は無くともこれだけは外せない。

「お揃いの衣装を作るから次は服屋へ行くよ」

 そんな訳で3人になったお供を引き連れて歩き始める。

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