第3話 これからどうする?そんなの決まっている。

 引芹



「どういう事だよ!?」

 そんな声を上げる者もいれば、

「俺…可愛い…」

 なんて、言う奴も。どうやら、俺は女っぽくなっているだけで、まだ男らしい。ただ、全く女になっていない奴もいる為、何がトリガーでこうなったのかは謎である。いや、大方予想はついているが、確信が持てない。

「おい、ヒッキー!」

 この呼び方は似榎磐だ。声が男の出す低い声とは違い、所謂女声になっているから、多分女になったのだろう。

「ヒッキーはどんな感じだ?」

 その言い方もどうなんだ。とは思ったが口には出さないでおく。俺の所に来た似榎磐は、紺髪のショート(より少し長い)で、俗に言う美少女と言う奴だった。ちらりと周りを見てみると、美少女しか居ない様子。まるでギャルゲーの世界に来た気分だ。

「俺はまだ女じゃない」

「そっか、残念だな……なあ、さっき鏡で見てきたんだけど、めっちゃ可愛いな!ドストライクなんだけど!」

「残念でもないしどうでもいい……それよりも、これからどうするのか、とか考えたらどうだ」

「もちろん満喫するに決まってんだろ?」

「はあ、勝手にしてくれ」

 男なら当然の感情でもあると言える。それと共に後先考えて行動すべきだ、とも思う。

「引芹くん、君は女になった?」

 そう俺に声をかけるのは、巳環みたまき。俺の友人だ。

「いや、微妙な所だ。お前は……まだみたいだな」

「ああ、そうだよ。それにしても……」

「それにしても?」

「こういうのって!いいよね!」

 言いたいことは分からんでもない。がそれを口に出すと揶揄われかねないので黙っておいた。

「良くない、色々と面倒だろう」

「女でもない君がそれを言うのかな」

「それくらい女でなくても分かるってことだ」

「はいはーい、喧嘩はダメだよ?特に引芹くん。可愛い顔が台無し」

「別に男で可愛いって言われても嬉しくねぇよ……それで?何を言いに来たんだ、巳環」

「女になるトリガーの話だよ」

「大方予想はついてるよ」

「そうだろうね、別に難しい問題でもなかったし。それで多分、トリガーは寝ることだ」

 案の定寝ることだった。賢しいこいつの回答を経てやっと確信が持てた。

「皆、ちょっといいかな。」

 声の主へと皆の視線が移る。声を掛けたのはクラス委員の夢来羽…の筈なのだが、その姿はまるで優等生の様だった。男の時とは打って変わって、黒髪ロング。いかにも優等生って感じだ。ってか、お前も寝てたのかよ。いや、そりゃ人間だし眠くなることぐらいはあるだろうけど。ちょっと意外だった。

「女性になって、混乱する気持ちはよく分かる。実際、僕もそうだからね。でも、騒いだところで何か変わるわけじゃない。だから、今は一旦落ち着いて席に戻って、巫先生の判断を仰ごう。職員室へ伝えに行ってくれているからね」

「引芹くん、話の続きはまた後で」

「ああ」

 皆、言われた通り元いた席へと座り直した。こういう時は素直に従っておくのが懸命な判断だよ。

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