第102話 雨
四季の変化に富む日本は、雨の多い国でもある。多い分、呼び方も豊富だ。季節ごとの雨だけでなく、降り方やタイミング等でも細やかな違いがある。湿気対策は大変だが、農家や花粉症の人間には有り難い。
春は、春雨。菜の花の咲く頃は「菜種梅雨」、赤い花全般に降るのは「紅雨」で、桃の花に降れば「発火雨」。新緑を潤す「緑雨」までは細かく降る「小糠雨」で、やがて「五月雨」となり「梅雨(麦雨)」を迎える。
夏は、夕立。雨脚が白く見えるほど激しいことから「白雨」とも言う。七夕前日に彦星が牛車を洗うのは「洗車雨」。七夕に降れば会えないので、織り姫と彦星の「酒涙雨」。雷雨になると神のお告げの「神立」。
秋は、秋雨。夏以来の激しい降り方のときは「白驟雨」。長引けば「秋黴雨(あきついり)・秋湿り・秋霖(しゅうりん)」となる。春に「小糠雨」と呼んでいたのが秋には「霧雨」。降りが弱まり冷え冷えすると「冷雨」である。
冬は、時雨。「○○時雨」という呼称がたくさんある。基本的に弱い降りだが、「横時雨」「村時雨」は激しい。風流を感じるなら月明かりの「月時雨」。「氷雨」「凍雨」になると、寒くてたまらない。
日本は、雨が多い。「篠突く雨」は外出を躊躇うが、「涙雨」「天雨」「狐の嫁入り」の明るさや「翠雨」「甘雨」の潤いなら嬉しい。「慈雨」「喜雨」なら感謝の祈りを捧げたいくらいだ。日本には雨の「恵み」がある。
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