第72話 相互理解

 外国の人と一緒に過ごすとき、相手の国の文化が分かっていないと不安になる。たとえば、ユダヤ教・イスラム教・ヒンズー教の食習慣は、我々日本人には細かすぎて理解に苦しむこともある。

 ユダヤ教では、カルシュートという厳しい戒律があり、禁忌とされる食物だけでなく、屠殺方法も決められている。イスラム教でもハラールという決まりがあり、食材の禁忌や屠殺の儀礼が規定されている。

 ヒンズー教は、同じインドで生まれた仏教がそうであるように、肉食が禁じられている。日本でウサギを「一羽」と数えるのは、僧侶がウサギの肉を獣肉と見なさないための詭弁であった。

 国際線の飛行機では、食事にも宗教上の配慮がなされている。乗客の宗教に応じたメニューが、多数準備されているのだ。だが、違う戒律を守る異教徒が、隣どうしで食事をしていたら、どうだろうか。

 互いの違いを「理解」していても、その違いを目の当たりにして冷静ではいられまい。禁忌とされるものを食べる隣人を「理解」した上で、互いの「違い」をどう乗り越えるのか「葛藤」することが必要だ。

 ユダヤ教とイスラム教は、ともに断食の習慣がある。ヒンズー教の菜食主義は、ユダヤ教の一部では奨励されている。「神」の前でより良く生きるという点では同じだ。「共通点」を探すことが、大切なのかもしれない。

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