第26話 適性

 大学の一般教養の講義で心理学を受けたとき、最初に習ったのは「行動を科学するのが心理学」という言葉だった。人の心は、行動を通してしか理解できない。じっと座って考えるだけでは、何も分からない。

 中学校で、将来何をしたいのか分からなかったので、とりあえず普通科に入った。普通科の勉強で、書道の先生に心酔したため、学科は違ったが恩師と同じ大学を選んだ。大学卒業後、地元に戻り親の世話をした。

 自分に何の適性があるかなんて、一度も考えなかった。仕事でも初めてのことばかりで、覚えるのが精一杯だった。今できることをしてきた。どうしても続かないときは、書塾で食えればいいと腹をくくった。

 若い人が「自分さがし」を語ることに、違和感を感じる。適性を見極めた上で仕事を選びたいということ自体、無理がある。見極めるために、目の前の仕事を経験する以外どうすればいいのか。

 自分のしたいことをがむしゃらに続ける若者は、見ていて気持ちがいい。地方都市の路上で書の作品をを売っていた若者は、その後書家としてフランスのエキスポジャパンに招待された。彼は失敗を恐れなかった。

 人の心は、行動を通してしか理解できない。まず何かやってみる。やってみて考える。失敗に学び自分の行動について理解する。その上で、自分の行動パターンに合う生き方を決めればいい。どんな場所にも、花は咲く。

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