第22話 決定
「Cogit, ergo sum」は、哲学者デカルトの言葉。すべての意識内容は疑いえても、意識そのもの、意識する自分の存在は疑うことができないという意味だ。自分の存在は自明のものと思い込んできた。だが違うらしい。
マックス・プランク研究所の研究では、人間が判断を下す七秒も前に、脳活動でその判断の内容を「予告」できるという。判断は無意識のうちに決まっている。行動を決めているのは自分の「自由意志」ではない。
この研究は、人間の複雑な選択についての調査ではない。ボタンを右手で押すか左手で押すかという判断である。だが「右か左か」という二者択一の判断は、生きる上で無視できないことも少なくない。
過去の経験が無意識の決定に関わっている可能性はあるにしても、過去の行動自体が無意識の産物であることは否定できない。無意識が行動を決めるのなら、自分が今までしてきたことは何だったのだろうか。
今、「自分」だと思い込んでいる意識のあずかり知らぬところで「自分」の行動が決められている。そうして決められた行動について、後付けで理由を考えるのが「自由意志」なのかもしれない。
「Cogit, ergo sum」……意識する「自分」の存在は疑えない。無意識が行動に働きかけているなら、「自分」が後付けで考える「自由意志」の積み重ねもまた、無意識の決定に影響を与えられるかもしれない。
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