第23話 鰻めし

 六月の季語に「鰻めし」というのがある。鰻丼のことだ。ウナギは、古いところで万葉集の時代から食べられてきた強壮食品。夏の盛りや土用丑の日の定番である。淡白な印象のある和食の中では、異質な存在でもある。

 栄養的にもかなり優秀なウナギ。タンパク質、ビタミンA・B1・B2・D・E、カルシウム、鉄分と、体に必要な栄養素が数多く含まれている。万能の食品と言ってもいいくらいの優れものである。

 健康食品でもある。がん・認知症・動脈硬化・骨粗鬆症・風邪の予防、眼精疲労の緩和、滋養強壮に美肌効果と、こちらも盛りだくさん。ダイエットの敵である脂質には不飽和脂肪酸が多く含まれ、意外にも体に優しい。

 近年とみに漁獲高の減ってきたウナギ、実は絶滅危惧種である。ランクは「絶滅危惧1B類」で、八段階中、上から四番目。稚魚のシラスウナギの孵化は、大学の研究者が何とか成し遂げたが、実用化は先の話。

 レッドデータに記載されたからといって、鰻丼が食べられなくなるわけではないらしい。しかし、野性動物保護のため結ばれたワシントン条約では、規制の対象になるかもしれない。季語「鰻めし」は死語になるのか。

 ワシントン条約に批准している日本は、クジラ類だけは留保。鯨肉を食べることで国際的な非難を浴びた日本が、ウナギで国際的に孤立しない工夫が必要だ。無形文化財である和食から、ウナギを消してはならない。

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