第6話 寂
一人で静かな場所にいるとき、落ち着いた気持ちになるとともに「さびしい」とも感じる。このとき使う漢字は、「寂しい」か「淋しい」か。また、読み方として「さびしい」と「さみしい」は、どちらが正解だろうか。
周りが静かで、その結果感じるのが「寂しさ」。周りは関係なく、気持ちとして感じるのが「淋しさ」。「寂しさ」に近い読み方が「さびしさ」で、「淋しさ」に近いのが「さみしさ」だという。
常用漢字表にあるのが「寂しい」だ。「淋しい」は表外字。公用文には使われず、歌詞や詩歌に使われるだけである。歌詞や詩歌に使われるくらいだから、気持ちとしての「さみしさ」が強調されているのだろう。
演歌の歌詞でよく使われるのは「酒」「涙」「未練」「別れ」などの言葉。一人きりで、そうでなかった時期をしみじみ思い出せば、立派に「演歌の世界」が出来上がる。日本人は、昔から群れるのが好きだった。
群れで安定する日本人の社会は、一般に一人でいる状態を良しとしない。「協調性がない」だの「自分勝手」だのと理由をつけて、群れに引き入れようとする。だが新しい発見は、あくまで個性の賜物である。
一人で静かな場所にいるとき、落ち着いた気持ちになる。それは元々、「寂しい」のではない。「一人静か」なのだ。花にもヒトリシズカがある。花言葉は「隠された美」「愛にこたえて」。
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