おどろくチカラ

西久史

第1話 きまり

 規則・戒律・タブー……言い方はいろいろあるが、「~ねばならない」という文末で括られる言葉を「きまり」という。最古のきまりは、おそらく「同族を殺してはならない」だろう。

 集団で助け合わなければ生き抜けなかった人類は、集団の維持のために「きまり」を作った。古来、集団の維持は、個人を守ることに通じていた。つまり、個人を守るのが「きまり」だったのである。

 個人を守る「きまり」は、いつしか人を「縛る」ようになる。集団が大きくなるにつれ、「持てる者」が「持たざる者」を守るという口実で支配するための「きまり」に変わってしまったのだ。

 支配のための「きまり」が極端になればなるほど、「革命」という形で歴史がリセットされる。支配のための「きまり」は、次第に穏やかになっていった。「中庸」の思想の誕生である。

 極端を嫌う中庸は、見方を変えれば中途半端で曖昧な考え方でもある。曖昧ゆえに、解釈次第でどうにでもなる「きまり」になる。そんな「きまり」は、守る側の「節度」がないと機能しない。

 「~ねばならない」の逆は「~したい」つまり「個人の欲」なのかもしれない。集団の維持という原則をふまえ、個人を「縛る」ことのない「きまり」のためには、「個人の欲」を制御する「節度」が必要ではないか。

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