2話 教育

銀狼の母乳を与え続けて約1年。

心なしか普通の赤子より成長が早い気がする。

まぁ、こんなもんなんだろう。


「あー、うー」


それと最近、喃語を話すようになった。

声を出すことが出来れば、私の念話で話すことですぐ言葉が喋れるようになるだろう。

では少し話してみよう。


(聞こえるか、赤子よ。)


ビクゥッ!!「ふ、ふえええぇぇぇっっ!」


フェンリルが念話で話した途端、泣き出してしまった。


「ふむ......赤子には刺激が強すぎたか。」


普段余り良く聞こえない言葉を、心に直接聞かされたのだ。

泣き出すのも仕方がない。


「泣かせるのは簡単だが、泣き止ませるのが難題だな。」


そこでフェンリルはヒョイッと自分の背中に赤子を乗せ、走り回った。

すると、泣き叫んでいた赤子はたちまち泣き止み、終いには大声で笑い始めた。


「これは...将来が心配だな......」


フェンリルは子育ての難しさを改めて実感するのであった。



それから毎日、フェンリルは念話で赤子に話しかけた。

すると、数ヶ月後にははっきりとした言葉を話し始めたのである!


念話は心に直接話しかけるため、言葉の意味がわからない幼少期にも伝わるのである。


「ねーねー、おなかすいたー」

「そうかそうか、今銀狼を呼ぶからな」

「あいがとうおじいちゃん!」


言葉を理解した時、自分のことも伝えなければいけないと感じたフェンリルは、自分のことをおじいちゃんだと言う事にしたのだ。

こうすれば実の両親に会っても説明が効く。


おっと、そういえば名前を決めなければならなかったな。

フェンリルは三日三晩考え続け名前を決めた。


「よし、お前の名はルーシャだ!」

「るー、しゃ?」

「そうだ。可愛いだろう?」

「うん!」


こうしてルーシャは1歳半にして日常会話程度なら出来るようになっていた。

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