第1章 第20話
「来ないようなら私から行かせてもらうわ。」
「ふん、若造が。好き勝手せい。」
「火剣|≪ひけん≫! 」様々な物体を焼き切る炎でできた剣を発現させたツバサ。ちなみにこの技は○NE PIECEに出てくる某二番隊隊長や某革命軍参謀総長とは関係ないのであしからず。
「!! 」物体ではなく魔法の盾で防ぐ魔貴子。
「そう来るのは予想できてたわ。」
「ロイヤルフラッシュ! からの十連火球! 」
「キャスリング! 」ロイヤルフラッシュはドラゴン某ルに出てくる天○飯のT陽拳のように強い光を放ち目くらましをさせる魔法で、キャスリングは身体を見えない膜で覆い物理的に城のように固めて徹底防御する魔法である。
「防戦一方のようね。」
「ふん、守りは最大の攻撃なのじゃ。」攻撃するようにけしかけてみたけど、うまくいかないようね。
ツバサには一つ気がかりなことがあった。百年前に絶世の美女ともてはやされていて、妙齢だった魔貴子。魔女は老化が極めて遅く、たった百年では今の魔貴子のように皺だらけの老婆になることは考えられない。そこで考えられる原因は二つあり、一つは人間たちに不審がられないように変装魔法を使っているということで、もう一つは老化速度上昇系の魔法を使っているということ。前者ならなんに問題もないが、後者の場合老化速度上昇系の魔法を掛けられた生物は新陳代謝が向上するので体内での魔素の生成速度も上昇してしまうため、持久戦には持ち込みたくないと思うツバサであった。
「なんじゃ? 短期戦に持ち込もうと思うとるのか? まあ、そうじゃろうな。今までお主に気づけんかったことから考えるに、封印魔法でも使ってたんじゃろう。さすれば、お主は今魔素がほぼ満タン状態のはず。バカ容量でバカ放出量のお主なら短期戦に持ち込んだ方が圧倒的に有利じゃからのう。」ちっ、読まれてるわね。そのうえで誘ってくるということは魔貴子にとっても短期戦のほうがいいってことかしら? それとも私の魔素切れを狙っていて、防戦だけならしのげるって算段なのかしら? それとも裏をかいて?
魔貴子のセリフの後、お互いに牽制し合うようになる。
「どうしたのじゃ? 短期戦に持ち込みたいんじゃろ? ほれ。」そうなんだけど、罠かしら? いったん落ち着かないと。百年間じっとしていたせいか集中力が落ちれるわね。いったん深呼吸をしましょ。
深呼吸をするツバサ。
「あっ。」
「どうしたのじゃ? 早く攻撃してくれんかのう。」
「何でもないわ。」迂闊だったわ。あの卑怯者がまともに戦うわけないじゃないの。現にたくさんデバフ魔法が掛けられてるわ。思考阻害に、魔素放出に、身体能力低下に、疲労に、ダメージ増加……。それぞれの防御魔法とデバフ検知を掛けるしかないわね。略奪防御だけじゃすまないって苦戦しそうね。
「おや、気づいたようじゃの。でもいいのかい? そんなに魔素を使って。」
「ええ、構わないわ。この魔素が切れる前に倒せばいいんでしょ?」
「ふん、小娘が。」
「一気に行かせてもらうわ、影分身! 無詠唱! 」五人に影分身したツバサは無詠唱──地球にやってきて新たに手に入れることができた応用技──で攻撃魔法を展開した。
「なっ。」やっぱり|発明≪はつあき≫と研究・練習した無詠唱は強力ね。反射神経で対処するしかないものね。それに五対一。どこまで対処できるかしら?
「お主ごときに本気を出さねばならぬとは。わしも年老いたもんじゃ。」
この魔貴子セリフは決して強がりではない。今でこそデバフ魔法を用いて卑怯な戦術を取っているが、魔貴子は若いころ決闘の天才と呼ばれていた。感覚魔法を駆使して周囲の状況を知覚する能力、その状況から適切に動く思考力・表現力。そのバランスにおいて彼女の右に出る者は彼女の息子で武神と呼ばれていた鬼龍院|貴男≪たかお≫以外に居ないと言われていた。
バカ容量でバカ放出量vs決闘の天才の戦い。エフインベの住人がこの戦いを見ていたらそう言ったであろう。彼女らの戦いは一時間にも及び、お互いにほぼ魔素が尽きるような状況になった。
「どうした、さっきから物理攻撃しかして来ないのう。」
「そちらこそ、デバフ魔法を仕掛けてこないし、息も上がってるんじゃないの? 」そう言いながら放ったツバサの拳は魔貴子の鳩尾に当たった。
「うぐっ。」苦しそうな表情を浮かべる魔貴子。しかし実際はツバサのほうが焦っていた。なぜなら、魔素の回復速度は魔貴子の方が早く、新たに魔法を発動できる水準まで魔貴子が回復してしまえば、そこで勝負が決まってしまううえ、魔法が使えないツバサには勝負を決める決定打が何もないからだ。物理攻撃でダメージを与えているのは魔貴子の回復を遅らせるという延命手段でしかない。
くっそ、全力でかかったけど、倒せなかったわね。何とかする方法はないかしら?
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