第1章 第16話

「うふふ、一機ちゃん、私が誰だか分からないって顔してるわね。そりゃそうだよね。」

「おいそこの女、お前が何者かは知らないが、そいつらの仲間のようだな。」佐貫が急かす。

「ゴチャゴチャうるさいわね。」謎の女はそう言うと右手を高く掲げ、指パッチンをした。佐貫、王国軍、警備隊の意識はそこで途絶えたのだった。

「流石にゲートにいる奴らの意識を奪うのまでは無理だったわね。一機ちゃん、逃げるなら私に頼るしかないと思うわよ。」そう声を掛けられた一機であったが、信用すべきか迷っていた。

「な、何者なんだ? 」

「そうね、造田ツバサとだけ言っておくわ。細かいことは逃げながらゆっくりと話しましょう? それとも、ゲートで千人の相手をするほうがいい? 私だったら相手にできるけど、もっと面倒な奴を相手にしないといけなくなるから、相手にしたくないわ。」

「造田、ツバサ? 千人より面倒な相手? 」一機の聞いたことのない名前だった。そしてそれ以上に気になることも言っている。

「とにかく、これに跨ってね。危ないからしっかりつかまるのよ。」そう言ってツバサはどこからか現れたホウキを指さした。翼の指示通りに、前から、優姫、一機、ツバサの順でまたがる。

「行くわよ。」つばさが声を掛けるとホウキがふわりと浮かんだ。


 空飛ぶホウキの上で、会話を始める三人。

「じゃあ、私が何者かってとこから説明するね。私は、百年くらい前にこことは別の世界のエフインベから来た魔女の造田つばさ。一機ちゃんのお爺さんのお婆さん、つまり一機ちゃんの高祖母なのよ。」

「魔女? 高祖母? 」

「そう、私は魔女なの。そして、私の血を受け継いだ一機ちゃんも体内で魔素を作れるみたいね。今までで、周りの人より身体能力が高いって思ったことあるでしょ?」

「そう思ってますけど、それがどう関係しているんですか。」ご先祖様だということを知り、急に敬語になる一機であった。

「それは一機ちゃんが無意識に身体強化魔法を使っているからなのよ。私たちエフインベの人間は身体強化魔法や知能強化魔法そして回復強化魔法といった基本魔法と、人ごとに決まった固有魔法の二種類を使えるの。私の息子のハヤテも二種類使えたけど、私の血が薄まったから孫の代からは基本魔法だけになってしまったみたいね。それに、家族なんだし別に敬語で話さなくてもいいわよ。というか、一機ちゃんまで敬語で話したら、読者さんが優姫ちゃんと区別がつかなくなってしまうでしょ。」

「それもそうだな。固有魔法って何なんだ?」

「さっき言った三つ以外の魔法のことを指すわ。基本的に魔女だと一人に一つずつ、そして魔法使いだと一人に三つずつが生まれたときに天から与えられて、それ以降増えることはないと言われているのよ。私は例外で、模倣Bという固有魔法の持ち主なの。他の人の魔法の真似ができるのよ。固有魔法の個数の上限の例外になる魔法は三種類あって、私の持っている模倣シリーズと、略奪が知られているわ。あと、歴史上一回だけなぜか憑依転生と狙い撃ちの二つを持つ魔女が生まれたこともあったわ。」


固有魔法 模倣B:

他人の固有魔法を見たら、その人の能力の五十パーセントの性能の模倣がで元々の能力に追加される。

五十パーセントとは、同じような威力にするためには魔素を二倍使い、同じ量の魔素しか使わない場合は、威力が半減する、というような意味である。似たような魔法に七五パーセントの 模倣A と、二五パーセントの 模倣C が存在する。


固有魔法 模倣A:

他人の固有魔法を見たら、その魔法本来の能力の七五パーセントの性能の模倣がで元々の能力に追加される。

七五パーセントとは、同じような威力にするためには魔素を三分の四倍使い、同じ量の魔素しか使わない場合は、威力が四分の三倍になる、というような意味である。似たような魔法に五十パーセントの 模倣B と、二五パーセントの 模倣C が存在する。


固有魔法 模倣C:

他人の固有魔法を見たら、その人の能力の二五パーセントの性能の模倣がで元々の能力に追加される。

二五パーセントとは、同じような威力にするためには魔素を四倍使い、同じ量の魔素しか使わない場合は、威力が四分の一倍になる、というような意味である。似たような魔法に七五パーセントの 模倣A と、五十パーセントの 模倣B が存在する。


固有魔法 略奪:

他人から様々なものを半分だけ略奪できる。固有魔法を略奪した場合、奪われた側の人間も奪った側の人間も 模倣B と同じ程度の能力になってしまう。


固有魔法 憑依転生:

一生に一度、持ち主が死亡するときにのみ使える魔法。この魔法を死の直前に唱えると、一パーセントの確率でまだ生まれていない誰かとして生まれ変わることができ、前世の記憶なども引き継ぐ。


固有魔法 狙い撃ち:

相手に気づかれていない状態で危害を加える際の命中率などの確率が百パーセントになる。ただし、飛び道具などで危害を加えた際に盾などで防がれた場合などは命中しない。


「そうなんだな。ところで、何で今一番助けてほしいときが分かったのか ? 」

「それは一機ちゃんが呼んだからよ。」

「どういうことだ? 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る