第1章 第3話

「王国軍だ。家を開けろ! 」

 やってきたのは警備隊ではなく軍、しかも王国軍だった。何かあったときのために、芽衣子さん二号に対応してもらおう。二号さんなら爆破されても大丈夫だ。いや、待てよ、二号さんだと相手を激昂させてしまうかもしれない。一号さんにはリビングで待機してもらいながら二号さんを遠隔操作してもらおう。

「一号さん、二号さんを操作して対応してください。」

「承知しました。ご主人様。」

「えー、同期は気持ちわr、ドウキガ カンリョウシマシタ。」申し訳ないが、緊急時だから気持ち悪いのは我慢してもらおう。

「ご主人様、それでは対応してきます。」そういうと、芽衣子さんは玄関まで走って行った。



「今すぐ鍵をお開けします。」相手は王国軍、緊張するけど怒らせないようにしないといけないですわ。

「遅いわ! 俺たち王国軍を待たせるということは、国王陛下を待たせるということ! 反逆罪で逮捕してやっても良いんだぞ! 」どうやらもうすでに怒らせてしまったようですわ。なんとか落ち着かせないと。そう思いながら玄関の鍵を開けました。

「申し訳ありませんでした、以後気を付けさせていただきます。」

「ほう、良い女じゃないか。」そう言うと奥の方にいた装備の豪華な兵隊さん、隊長さんかしら、が私の腕を掴んできた。他の兵隊さんたちもニヤニヤしながら私のことを見てきます。嫌な気分ですが、リビングにいる私を使って兵隊さんたちの人数と装備をご主人様に伝えないと。

『全員鉄鎧で、武器は機関銃が十五人、剣九人、盾が十五人、あと何も持っていない隊長らしき人がいます。』

『了解。』

 そうこうしているうちに隊長さんが私に抱きついてきた。

「なあ、こんなど田舎捨てて俺と暮らさないか? 」

「嫌です。」左腕で私の身体を包みながら腰をさすってくる。

「俺はお前ら愚民どもを守ってる偉い兵隊なんだぞ、お前に拒否権はないんだよ。」偉い兵隊さん? エロい変態さんの間違いでしょ! だいたい、国民を守っていないでしょ。この村はご主人様が食料を分けているから餓死する人はいないけど、周りの村は毎年餓死者が出てるのよ! それなのにこんな綺麗な指輪をつけて!

 隊長さんの手が腰から服の中に入り、お腹に動いていく。

「そこはやめてください!」

「ほう、ここが弱いのか。」そう言いながら隊長の指輪が芽衣子のへそに当たった。そのときだった。大きな爆発が発生し、芽衣子と隊長の意識がなくなった。芽衣子のへそは充電端子になっており、指輪が当たったことで芽衣子に蓄えられていたエネルギーが一気に放出されたのだ。その結果、隊長は真っ黒焦げとなり、芽衣子は充電切れになった。隊長を失った部隊は王妃を確保し出世するために一機の家に入っていった。



「ご主人様、申し訳ありません。」芽衣子さん一号が謝ってきた。それと同時に兵隊たちがリビングの中に押し寄せてきた。

「二号は無事なのか? 」

「バッテリーが完全に壊れてしまいました。」なんだとっ! あれだけ頑丈に作っておいた芽衣子さん二号がこんな短時間で壊れるとは何が起きたんだ? メンテナンスだって数日前にしたぞ。いや、今はそんなことはどうでもいいこの場をしのぐのが先決だ。とはいえ主力の芽衣子さん二号が動けない以上逃げるしかないな。

「三号、二号を連れて緊急脱出だ。」

「ご主人様、お言葉ですが、相手は四十人近くいます。この状態で二百キロもある芽衣子さん二号は連れて行けませんし、助け出してもバッテリーを作り直さない限り二号は動けないただのガラクタです。私たちはご主人様にまた作ってこらえますけど、ご主人様や優姫さんはしんでしまったら取り返しがつきません。ここは二号をおいていくべきです。」芽衣子さん三号はそう言うと腕からシートベルトを出し、俺と優姫と芽衣子さん一号を固定し始めた。

「行きますよ! 」

「おい、お前ら、これだけ囲まれて逃げだせるわけないだろ。余計な真似はするな! 」そう言って兵士の一人が発砲した。彼が撃った弾は優姫の右肩を貫いた。

「ゔっ……。」

「ごめんなさい、もう少し準備が早く終わっていれば。」そう言いながらも芽衣子さん三号が足の裏から炎を噴射し、ロケットのように飛び立った。

「なっ、」「はぁ!? 」「嘘だろっ……。」兵士たちは突然のことにとまどう。しかし、それは兵士全員ではなかった。一人の兵士、幹部候補となっているこの軍の最年少の男は、完全に作戦失敗のこの状態でも挽回できることを確信した。



「本当に申し訳ありません、私がもっと早くシートベルトを用意していれば……。」俺たちは今、上空五百メートルにいる。芽衣子さん三号は選択ミスを悔いている。麻酔で眠っている優姫ちゃんを芽衣子さん一号が手当てしている。俺は周囲の警戒しかできることがないので警戒しているが、空を飛べる人間はおそらく俺だけだろうから攻撃されることはない思う。もちろん集中を切らすわけにはいかないが。

「そんなこと言ったって仕方がないだろ。今は治療をしやすいように飛行に集中してくれ。」

「安定して飛行できるように頑張ります。」

「ご主人様、大変です。この弾丸は非常にもろくて肩の中で粉々になっています。取り出すのが困難で時間がかかってしまいます。」嘘だろ! とはいえ芽衣子さん三号の充電が満タンだったのがせめてもの救いか。あと二時間くらいは飛べるだろう。

「どのくらいかかりそうか? 」

「二、三時間くらいかかると思います。」

「本当ですか!? とはいえ、こんな手術なんて空中じゃないとできないですよね。なるべく長く飛べるように頑張りますね。」うーん、そうするしかないよな。神様、何とか手術が無事に終わりますように。そう思いながら親父から受け継いだお守りのペンダントを握りしめていた。

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