第1章 第2話
「次のニュースです。」
毎朝の日課で、ニュースを見ながら朝食を食べる。しかし、普段芽衣子さんが作ってくれる料理と何か違う。今日の料理は美味しいのだ。普段芽衣子さんが作る料理も(一号さんがメンテナンス中でなければ)絶品なのだが。
「私の料理、どうですか? 」優姫が尋ねてきた。そうか、今日の料理は優姫が作ったのか。だからいつもと違うのか。って、俺の自慢の芽衣子さん一号よりも料理が上手いだとっ!
「お礼になるか分からないですけど、家事を芽衣子さんと分担させてください。」
「気持ちはありがたいけど、芽衣子さんたちはメイドロイドだから疲れないんだよ。優姫ちゃんが無理をする必要はないよ。」
「いくら疲れないって言ったって、時間は有限なんだから、私が分担した分地下室での作業時間を増やせるわよ。」
確かに優姫の言うことにも一理ある。三号さんのバッテリーが劣化して来てるから、新しいバッテリーを作りたい。そのためには鉱石を掘り当てないといけないし。優姫は迷惑って言ってたけど、むしろ俺の方が悪いなって思うぞ。この時はまだ優姫が迷惑といった理由を知らなかった。
「続いてのニュー、えーっと、ここで速報が入りました。」
速報か、何があったんだろう。そう思ってテレビを見た俺は衝撃を受けた。なんと、優姫がテレビに映っているのだった。
「国王陛下の第14妃が行方不明との」そこでテレビが消えた。優姫がリモコンを持っている。
「今の見ちゃいましたか? 」
「見ちゃいましたね。」
「えーっと、どう思います? 」
「やっぱり、さっきのニュースって優姫ちゃんのことで合ってるんだなって……。」
「そうなんです。増税の原因を作って国民の皆様を苦しめてしまってる国王陛下の第14妃なんです。」そう言うと優姫は泣き出した。
「ひっぐ、私の、せいで、多くの国民の、うぇっ、命が……。」
「うーん、とりあえず、優姫ちゃんは俺たち国民のことを考えてるんだろ? そうやって泣けるってことは。何があったのか教えてくれるかな? 」
優姫は言葉に詰まりながらもなんとか話してくれた。経緯をまとめると以下のようになる。
優姫の実家は貧しく、優姫は家族を養うために商業都市オメガを支配する貴族の家で働き始めた。
商業都市オメガに視察に来た国王に見初められ、王宮に連れて行かれた。
この時に家族を養うためのお金は払うつもりがないことを国王に言われた。
国王と結婚しても言いなりになることと笑顔でいることを強要されるも、笑えない。国王は嘘を見抜くだけはあるらしく、喜ぶ演技は通用しない。
国王が意地になり、(あくまで意地でしかない)あらゆる贅沢を自慢して喜ばせようとするも、そのために増税して国民の負担が増えているので、優姫は喜べず、悪循環になっていった。
そんな国民の負担を減らすために王宮から逃げ出し、自殺を試みるも勇気が持てず、今に至る。
「なるほどな。」
「やっぱり迷惑ですよね? バレたら大変です。出て行きます。」
「いや、こんなに優しい娘を守らないで何が男だ。それに、お妃様がこんなど田舎まで逃げてくるとは思うまい。それに、優姫ちゃんが良くてもお腹の子供は何の罪も無いだろ。ってまてよ、優姫ちゃんがお妃ってんなら、その子供は………」
「国王陛下の子供で間違いありません。っていうか本当に良いんですか? もし見つかったら王妃の誘拐犯になっちゃうんですよ? 死刑になっちゃいますよ? 」
「家から出ないのになんでバレるんだよ? あっ、地下にジムもあるから健康には問題ないからな。それにこの辺でテレビ持ってるのなんて俺だけだよ。絶対バレないって。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ。」安心してくれ。それに万が一バレたとしても、俺と芽衣子さん達で逃げ出せないはずがない。そう考えながら首から下げたペンダントを握りしめた。
「分かりました。ここまでして貰えるんです。役に立てるように頑張らせていただきます。」
それから、優姫は必死に働いた。炊事洗濯掃除だけでなく、地下農場での農作業も。あまりにも働くから、心配になるほどだ。
「あんまり働きすぎるなよ。」
「このくらい大丈夫ですよ。元々平民で体力はありますから。」
「そんなこと言ったって、今は優姫ちゃんだけの体じゃないんだし、とにかく、これ以上はダメだ。休め。」不満そうに見つめる優姫。しかし、こればかりは譲れない。ただ、気持ちはありがたい。なんとかして肩の力を抜かせる方法はないだろうか。
その時だった。家中の警報機が鳴り響いたのは。
「ご主人様、大変です、武器と害意を持った集団がこの家にやってきます。」
「バレてしまったんですね。」
「みたいだな。」
「私の充電も完了しましたし、お姉さんたちも80%以上充電されてます。」
「じゃあ、なんとかなりそうだな。」しかし、バレてしまった以上はここに居座れないな。地下基地は使いたいからバレないように封鎖するか。っていうか、なんでバレてしまったんだ?
「しっかし、俺たちもついてるぜぇ。獲物の女がお妃様様って知った時は驚いたぜぇ。」
「おかげさまで司法取引が成立したっす。あいつには感謝しても仕切れないっす。」
「お前らを蹴飛ばした女をいたぶらせてもらえないかなぁ。」
何処かの牢屋でそんな会話をしている大男三人組。
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