第39話 第十章 放たれた呪いのビキニ(3/3)
【約3300文字】
【異世界に召喚された勇太は、帰ったら人体発火が決まったのであるが、ミマが勇太を助けようと
なんか、とんとん拍子過ぎて、勇太にとっては、狐につままれたようだ。
「お、俺って、死なないで済むの?」
イラシャがドンと胸を叩いた。
「召喚が継続しました。なので、先程のラスト勝負は無効となります。
改めてのラスト勝負は、再契約したクエストの完了後に、再度行ってください。
……ですからね、今日の焼死はなくなったんですよっ!」
事務的なイラシャの顔に、心からの笑みが上塗りされている!
「やっっっっっっったーーーーーーーーーーーっ! 俺っ! 死なずに済んだぞっ! ミマッ! ありがとうっ!!」
勇太はミマに抱きつかんばかり!
「命を賭けて助けてもらったのですわ! あたしも、最大限の手を尽くしたかったのですわ!」
ミマも感激のあまり泣きそうだ。
イラシャが胸を張る。
「まあ、それは、うちが民間企業だから、なんとかなったんですよ。
国営や、
ですので、召喚仲介業のパイオニア、『ショウチャン株式会社』を、今後ともご
耳につく社名が、勇太にはかえって頼もしい。
だが、イラシャの興味は別に向く。
「あ、そこのお兄さん!」
領主に呼びかけた。
「お兄さんも異世界人の人材について、ご利用はございませんか?
あ、これは名刺です。そしてこれが割引券! 初めてのお客様には、さらにお得な割引がございますよ!」
チョコチョコと紙片を渡しては、ニコニコと手をもんだ。
「召喚は高いんだよな」
領主は乗り気ではない。
「国営や神営は少々安価ですが、サポート体制が充実しておりません。今のようなケースで、融通が
イラシャはニンマリと営業スマイル。
領主は困った顔。
「今、特に異世界人は
イラシャは、ちょっと、がっかりだが、めげたりなんてしない。
「そうですか……。それでは、ご利用の際には、この名刺を掲げてお呼びください。すぐに飛んでまいります!」
営業スマイルを忘れなかった。
「ああ、気に
「それでは、皆様! お騒がせいたしました!」
ビューーンッ!
イラシャは飛んでいってしまった!
勇太には気になっていたことがあった。
「でも、ミマ、まだ毒師がいるって言ってたけど……」
勇太はピコナ以外に毒師がいるとは思っていなかった。
毒の危険が無ければ、特に毒見役の必要はないはずである。
必要がないのなら新しい契約も、破棄されかねないと心配したのだ。
でもミマには、心配の色なんて1つもない。
「呪いの服が町に出回ったのですわ! 毒師が持つかも知れませんわ! その時のために毒見役が必要なのですわ」
可能性としての毒見役と言ったようだ。
ミマは続ける。
「これからは、ずっと、ずーーーーっと、勇太を信じますわ! これかも毒見役をお願いいたしますわ!」
「ああ、がんばるよ」
言った勇太の目には真剣さが宿っている。
その
「あのですの。毒だったんですけど、
スクマミロンを食べてよかったと、わたしは思っているのですわ」
すまなそうに、ニコッと笑った。
勇太には、考えてもみなかったことだ!
「死ぬところだったんだ! 『よかった』なんて、おかしいよ!」
倒れたミマを思い出し、まごまごしたほどに不安を
「そうなんですけど、しばらく食べられないと思っていた好物を食べられたのですわ。倒れる直前が、このパラダイ国に来て、一番幸せを感じた時だったのですわ。
でも、そんなことよりも、ずっと大事なことが分かったのですわ!
痛い思いをしなければ、感じられない想いがあったのですわ。痛い思いをしたからこそ、深まる想いがあったのですわ。
もし、あたしが痛い思いをしないで、毒から逃れたとしたら、そう、毒を警戒してスクマミロンを食べなかったのなら、勇太への想いが深まるどころか、逆に恨みを
だから、スクマミロンを食べたことで、勇太を恨まずに済んで、よかったと思ったのですわ。
ごめんなさいね」
すまないような嬉しいような複雑な笑みであった。
つまり、勇太の毒見を信じたがために、勇太を恨みたくなったのである。
勇太は想いが深まるなんて言われて、気恥ずかしくて気の利いた
「も、もういいよ。
ミマが再契約してくれて、俺も焼死を
俺らしいジャンケンもできるようになったみたいだし、全然大丈夫だから」
勇太はミマに笑みを返した。
「そう言っていただけると、あたしも嬉しいですわ。
……そうですわねぇ。
勇太の能力が戻ったか確かめるためにも、ジャンケンをやりましょう!」
勇太の能力が回復したことを確認するためなのだが、そんなことよりも『俺らしいジャンケン』と聞いて、ミマは勇太と会ってすぐに行った大皿の連続毒当てジャンケンを思い出したのである。
ジャンケンの連勝を見て、その感動を味わいたくなったのだ。
ミマの顔には感動できる嬉しさが
「毒見する食べ物なんて無いよ……」
意地悪っぽいというよりも、毒見にこだわった疑問であった。
「そんなの無くても構いませんわ! あたしが勇太と、ジャンケンをしたいのですわ!」
踊るような歯切れの良さに、勇太の心にも火が着いてきた。
ラスト勝負に負けた勇太である。無敗を誇るジャンケン人生の中で初めての黒星であった。
なので、少なからず悔しい想いがあった。
火の着いた心が、リベンジをやりたいと言っている。
そして何よりも、自らのジャンケンに酔ってみたくなった勇太なのだ。
「ああ、いいよ。一番の強さを見せてあげるよ」
「それでしたら、どちらかが10連勝するまで、勝負を続けますわよ」
普通の人間であれば、何日かかるのやらと言いたくなる。
「すぐに俺が10連勝さ!」
軽く言ってのける勇太の自信!
「じゃあ、いきますわよーーーーっ!」
ミマの
「「最初はグー、ジャンケン…………」」
お・し・ま・い
ピコナの後日談
ミマを助ける解毒剤は、ピコナのネックレスに
いささか乱暴だったと悔いた領主は、その日のうちにピコナに謝罪し、後日同等な金色のネックレスをプレゼントしたそうだ。
また、引きちぎった方もメイドが回収していたので、修理させて本人に返した。
ゆえに、ピコナは2本のネックレスを手にすることになる。初めてのことだったので並べてみたくなった。
ペンダントを通さずに、2本のネックレスを重ねて
鏡に映る自分を見て、予想以上にうっとりとしてしまった。
金色に光る二重のネックレス、長さのバランスもよかった。2本が複雑にきらめき合い、大人っぽく自分を引き立てている。
そのためか、小さ目な胸が気にならない。
正直、ピリを入れた金色のペンダントを提げていた時よりも、ずっと似合っていた。
実のところ、ペンダントを着けていると視線がそこに集中するので、胸にも目が向きやすいのだ。
だが、ペンダントを外してネックレスを二重にすると、異なるデザインのネックレスから複雑な光が放たれる。それらの光が全体的に広がり、自然と視線が分散して小さな胸が目立たなくなるという訳だ。
ピコナにはすこぶる利点であった。
また、もう1つ気付いた点がある。
ピコナにとって、ピリを見せるということは大人への憧れだった。しかし、それとは裏腹に、物欲しそうな安っぽい大人に見せていたのだ。
それは、ピコナの期待からは、大きく外れていた。
などなどピコナは考えて、使ったこともないし、自分には似合わないピリを、これからは身に着けるのをやめようと、心に決めたのであった。
【このあと、「エピローグ」と「■あとがき■」が待ってます。再度になりますが、■あとがき■は長いですので、ご興味があればどうぞ……】
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