第38話 第十章 放たれた呪いのビキニ(2/3)
【約2200文字】
【召喚された勇太はラスト勝負に負けて、帰ったら人体発火すると決まってしまった。一方、呪いのビキニが完売となったとの報告を聞いたミマが、何かに気付いたのだった】
ミマは領主から離れ、完売の意味を真剣に考える。
「と、いうことは、持ち主が分からない呪いの服が、世の中に出回っているのですわ!」
そんなことをつぶやくと、ボトムビキニの内側をごそごそと、まさぐり始めた。
すぐに何かを取り出し、つまんだその手を高く掲げた。
ミマが持っているのは、名刺っぽい長方形の紙片である。
「召喚仲介のショウチャン!」
タクシーでも呼んだみたいに、空に向かって大きく叫んだ。
ビューーーーッ スタッ!
「いらっしゃいませ! お呼びでしょうか?」
10秒もしないうちに空から降り立ったのは、古代ギリシャの女神みたいな服を着た女性。
イラシャ・イマセだ! 勇太を直接召喚した人物である。
ミマは切羽詰ったように訴える。
「わたしを狙う毒師は、まだいますわ! 毒見役を継続したいのですわ!」
「あー、でも、毒見役は契約が破棄されて、その異世界人も送還が決まりまして……」
予想通りの答えだった。
「まだ毒師がいるのですわ! わたしの命が危ないのですわ! 毒見役が必要なのですわ!」
もしかして、ミマは勇太を助ける方法を見つけたのだろうか?
「それでは改めて召喚いたしますが……」
「そこに毒見役がいますわ! この毒見役がいいんですわ!」
勇太を指差した。
「ですから、すでに送還が決まっておりまして……」
「正規量の魔法力を支払いますわ! 召喚済みですから、費用は発生いたしませんわ! 丸々
なんか、下世話な計算理論を出してきた。
「でもですねぇ、契約破棄になった異世界人を、再び使うという前例はございませんし……」
イラシャは、なびかない。
「契約破棄はあたしの間違いでしたわ! そこは謝りますわ。それに、もう
ミマが深々と頭を下げている。
「謝罪していただいた上に、信用を誓っていただけるのは、大変ありがたいのですが、なにぶん、前例が……」
イラシャという山は、簡単には動かない。
ミマは次の手段。
「だったら、正規量の2倍の魔法力を支払いますわ!」
Vの指だ。
金に物を言わす。
ではなく、魔法力に物を言わす! である。
ミマにとっては、魔法力は
「そこまでおっしゃるのであれば、そうですねぇ、契約を完了できなかったことですし、本部に連絡をとってみましょう」
イラシャが何やらスマホのような物を取り出した。
ミマの希望を通話相手の本部に伝えている。
本部が答えを出す。
……契約破棄の実績も消せる上に、利益も見込めますね。神界には、こちらからうまく取り
そもそも召喚者の焼死は、悪い召喚者を排除するために、神界が決めたルールである。
このため、ラスト勝負は勇太のような真面目な召喚者には容易に設定されている。重要なのは、ミマのような召喚の依頼者が、クエスト内容を見てラスト勝負を『受ける』か『否』かで、異世界人を評価するシステムなのだ。
だから、召喚者がトロピ界に有益なのであれば、神界も許すであろうと、通信相手の担当上司が楽観したのである。
イラシャがたずねる。
「姫様、正規量の3倍であれば承認できますが、いかがですか?」
「構いませんわ! 3倍でよろしいですわ!」
即答のミマはニンマリ。
「それでは、再契約という方向で進めさせていただきます。
じゃあ、ちょっと失礼しますね」
イラシャはさっき通話に使ったスマホのようなモノを、チクミに向けてピピっと何かを操作する。赤外線でデータ送信したような感じだ。
でも、チクミの見た目には特に変化は見られない。
「はい、これで仮の再契約を結ぶ作業が完了しました。
えーと、それで魔法力の受け取りですが、3倍となりますと、こちらにも準備がございますので、後日ご連絡させていただきます。
また、新しい契約書につきましても、その時に改めて作成させていただきます。よろしいでしょうか?」
「構いませんわ!」
ミマは、大きな魚を釣り上げたような顔をした。
イラシャが勇太に向く。
「
イラシャがミマへ振り向いた。
「呪いの服が、全て回収できるまで、ですわ」
ミマは胸を張って答える。
「全てって、回収する服は、何着あるんですか?」
「全部で13着ですわっ!」
さらに、腰に手を当てた。
「多いですねぇ。……まあ、本部の承認を得ておりますし、良しとしましょうか。
勘秘勇太さん、あなたは呪いの服が全て回収されるまで、召喚が継続となりました。
能力も元通りになりますよ。
その他につきましても、召喚されてから契約破棄となった時までと、条件は一緒です。カエルシールもそのまま使います」
「やった、ケロ!」
プルンッ ルン!
チクミが喜びのあまり、貼り付いているミマの胸を揺らした。
「やったのですわっ!」
プル プル プルンッ! プル ルンルンルンッ!
ミマも自らの体を小刻みに上下させて、もっと、もっと、胸を揺らした。
チクミの真似をして、そして、それ以上の喜びを表したのである。
なんか、とんとん拍子過ぎて、勇太にとっては、狐につままれたようだ。
「お、俺って、死なないで済むの?」
【勇太の運命が本人抜きでどんどんと進みました。本当に勇太は助かるのでしょうか? 次回が本編のラストとなります。エピローグと■あとがき■も同時公開の予定です。その■あとがき■は長いです。ご興味があれば読んでみてください】
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