第28話 第七章 合わせ毒の解毒剤(3/5)

【約4000文字】



【本話にはラスト勝負についての記述があります。その中で、考えられるラスト勝負の『パターン』を、幾つか提案しています。つたない私の文章を読むだけでは、頭がこんがらがるので、パターンが示された直後に『—■—』ではさまれた中に、そのパターンのフロー表示を設けました。ただし、比較のためにラスト勝負以外のフロー表示も記しています。それらのパターンは0~7まであります。同じ番号もありますので、ご注意ください】


【ミマが合わせ毒によって倒れ、意識を失ってしまった。解毒剤はガーゾイルに取り憑かれていたピコナのかばんから見つかったのだが、なんと3つもあったのである】



「3つとも同じ解毒剤じゃないの?」

「それはないな。2つはダミーだよ。わたしの習慣を踏襲しているのならね」

 ピコナは自信たっぷりだ。


 でも、それなら簡単と勇太は思った。

「3つとも飲ませればいいじゃないか!」

 今度は勇太が自信たっぷりだ。


 しかし、ピコナの額には、悩ましいシワがよる。

「どうして3つあるのか考えたのかい?

 わたしはね、解毒剤が敵に見つかった時のために、3つを用意しているんだよ。だから、残りの2つには解毒剤を無効化する薬を入れているんだ。

 ここに小瓶が3つあるということは、ガーゾイルも、その習慣を踏襲して無効化する薬を用意しているはずなんだ」


 勇太の思う通りには進まなかった。

「いっぺんに飲めないのか。つまり、この3つから1つを選ぶというわけか。難しいな」

 それにカエルシールの点滅が、いつ速くなるか分からない。急ぎたかった。


 勇太が続ける。

「本当に、解毒剤を小瓶に入れた時の記憶はないの?」

 ピコナの顔が曇る。

「ごめん、解毒剤を作った記憶もなかったんだ。どれが解毒剤なのかという記憶もないんだよ」


 勇太は困り顔。

「適当に選ぶなんて、できないよ! 3分の1の確率か!


 ……3分の1?


 どこかで聞いたような……」


 ひらめいた!


「そうか! ジャンケンだ! 希望はあるぞ!」


 勇太はミマとのラスト勝負を思い出したのだ。


「ダメケロ!」

 ポヨン ポヨン


 カエルシールのチクミだ。

 チクミは芝生の上に横になっているミマの左胸に貼られている。規則的にゆっくりと点滅するとともに、カエルが跳ねるように、ミマの胸を揺らした。


「今、勇太の能力は封じられているケロ。ジャンケンは、ラスト勝負の1回だけケロよ!」


 勇太はチクミの所へ行く。

「それは知っているよ。そのことで、チクミに2つ聞きたいことがあるんだ」

 勇太を召喚したイラシャも、分からないことはシールに聞けと言っていた。


「質問の内容は、あっしにも分かるケロ。

 1つ目は意識のない依頼者(ミマ)と、ラスト勝負ができるのか? ということケロね」

 ポヨンとミマの胸を1回揺らす。

「そうだよ。よく分かってるじゃないか! 女剣士に襲われた時に『気絶なら焼死回避措置がある』って言ってただろう?」


 朽ちた別荘の草地で、勇太たちがガーゾイルに取り憑かれた女剣士パルに、追いかけられた時のことを言っているのだ。

 ミマが斬殺されたのなら、ラスト勝負ができないので勇太も焼死する、と言ったのに合わせて、『気絶なら焼死回避措置がある』とも、言っていたのを憶えていたのである。(第12話参照)



—■—■—■—■—■—■—■—■—■—


┏【パターン0】

┃ミマが毒以外で死亡

┃  ↓

┃ 勇太焼死

┃(今回は関係ない)


┏【パターン?】

┃焼死回避処置

┃気絶したミマとのラスト勝負

┃  ↓

┃ ???

┃(まだ不明)


—■—■—■—■—■—■—■—■—■—



 もしそうなら、意識のない今のミマと、ラスト勝負ができるかも知れないのだ。


「よく憶えていたケロね。でも、答えは後にするケロ。

 次に、あっしが予想する2つ目の質問ケロよ。

 ラスト勝負のジャンケンに、勝った時の勘を毒見ではなくて、代わりに解毒剤の特定に使えるのかどうか、と聞きたいケロね」

 ポヨンポヨンと、今度は2回揺らす。


 勇太の毒見は勘である。勘は他にも使えそうと誰でも思いつきそうなことだ。

 なので毒見の勘を毒見に使わずに、解毒剤を見つけるのに使えないのか? と勇太が聞きたいのだと、チクミは思ったのだ。


「そう、その通りだよ。

 チクミが緑色になって、すぐにがすんじゃなくて、勝った時の勘で毒見をする代わりに、解毒剤を選んぶんだ。そして、その解毒剤でミマが回復してから、チクミを剥がして現世に帰還できるのか? ということだよ」


 ラスト勝負と、その後の勘による毒見を、解毒剤の特定に代えるという一石二鳥ができるのか? と、いう質問である。なんとも都合が良過ぎる考え方だ。


 チクミは答える前からミマの胸を揺らしている。

「重要だから2つ目からケロ。ジャンケンに勝った時点でラスト勝負は終了ケロ。終了しているので、勘は発生しないケロよ。毒見もできないケロ。

 だから、解毒剤の特定は無理ケロね」

 ポヨヨンと、最後に大きく1回揺らした。



—■—■—■—■—■—■—■—■—■—


┏【パターン1】

┃これまで(比較用)

┃誰かとジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃  毒見


┏【パターン2】

┃ラスト勝負

┃シールに触って

┃ミマとジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち → シールが緑

┃  ↓

┃  ✖勘

┃ 毒見も✖

┗『緑』


(ミマとのジャンケンでは、もう毒見はできない)


—■—■—■—■—■—■—■—■—■—



 勇太は意気消沈。

「じゃあ、毒見ができるような俺の勘は、もう絶対に使えないってことなの?」


「……」

 チクミは黙ってしまった。胸も揺らさない。


「答えてよ! ミマの命がかかっているんだ!」

 ため込んだモノを、吐き出すかのような勇太の声。


 言いずらそうなチクミ。

「あるには、あるケロ。あっしに触りながら、依頼者(ミマ)とは違う人間とジャンケンをすれば、その後の勘を使えるケロ。毒見ができるし、おそらく解毒剤の特定も可能ケロよ。


 でも、それはラスト勝負ではないケロ!


 別にラスト勝負が必要になるケロよ! その時にはジャンケンの能力がないケロ! 一般人と同じジャンケンになるケロ!


 ラスト勝負なのに、普通に勝率が3分の1のジャンケンなんだケロ。


 そして、あいこと負けは、どっちも焼死ケロよ!


 それでも、いいケロか?」



—■—■—■—■—■—■—■—■—■—


┏【パターン1】

┃これまで(比較用)

┃誰かとジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃  毒見


┏【パターン3】

┃ラスト勝負の勘を使う毒見(or解毒剤特定)

┃シールに触って

┃ミマ以外の人とジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃ 毒見or解毒剤特定

┃   +

┃ 別にラスト勝負

┃シールに触らず

┃ミマと普通のジャンケン

┃  ↓      ↓

┃  勝ち   負けorあいこ

┃  ↓      ↓

┃ シールが緑  シールが赤

┗『緑』or『赤』


—■—■—■—■—■—■—■—■—■—



 勇太は少し考える。

 普通のジャンケンに命を賭けると言い出すのだろうか?


「最初の趣旨と違うけど、1つ目の質問の答えはどうなのかな?


 まず、ミマ以外の人とジャンケンしてからの勘で解毒剤を見つけるんだよ。

 そして、その解毒剤を飲ませる前に、意識のないミマとラスト勝負のジャンケンができれば、焼死はまぬがれると思うんだ。

 意識が戻ったミマに会えないのが心残りだけどね」

 勇太は命を賭けるとは言わなかった。


 普通のジャンケンとなったラスト勝負を、焼死回避措置を使って、気絶しているミマとやってしまおう、と言っているのだ。


 チクミは残念そうな顔。

「前にも言ったとおり、焼死回避措置はあるにはあるケロ。

 カエルシールであるあっしが、勇太は優良召喚者であると認めれば、気絶して適当に開いている依頼者(ミマ)の手をパーに見立てて、ウソのジャンケンを成立させられるケロ。

 でも、それは能力を伴い、シールに触って行なうラスト勝負だけの回避措置ケロ。


 クエストが終わっても、依頼者が長く目覚めない時の特例なんだケロ。

 あと1回の能力を、他の事に使ってしまった後のラスト勝負には、適用されてないケロよ。

 勝手に使った召喚者の自己責任という判断ケロね」



—■—■—■—■—■—■—■—■—■—


┏【パターン1】

┃これまで(比較用)

┃誰かとジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃  毒見


┏【パターン2】

┃普通のラスト勝負

┃シールに触って

┃ミマとジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃ シールが緑

┗『緑』


┏【パターン4】

┃気絶したミマとのラスト勝負

┃(焼死回避措置)

┃シールに触って

┃ウソジャンケン

┃  ↓

┃ ウソ勝ち

┃  ↓

┃ シールが緑

┗『緑』


┏【パターン5】

┃勇太が提案した気絶したミマとのラスト勝負

┃ラスト勝負の勘を使う毒見(or解毒剤特定)

┃シールに触って

┃ミマ以外の人とジャンケン

┃(能力を伴っている)

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃  毒見

┃ or解毒剤特定

┃   +

┃ 別にラスト勝負

┃(焼死回避措置)

┃シールに触らないで

┃ウソジャンケン

┃(能力を伴っていない)

┃  ↓

┃ ✖ウソ勝ち

┃  ↓

┃ シールは変わらず

(能力を伴わないラスト勝負には、焼死回避措置は適用されない)


—■—■—■—■—■—■—■—■—■—



「うーん、勝手じゃないのになぁ」

 勇太は承服できない様子。

「今回はクエストの終了ではなく、契約破棄によるラスト勝負ケロ。クエストのイベントは継続中だから、複雑になっているケロよ。


 ジャンケンで解毒剤を見つけた後のラスト勝負は、依頼者(ミマ)の意識が回復してからケロ。


 そして、普通のジャンケンになるケロ、さらに時間制限もあってリスクが大きいケロよ。


 加えて、今回の契約には特記事項があるケロ。

 クエスト中に依頼者(ミマ)が毒殺される危険があることから、毒殺された時の規定ケロ。


 依頼者が毒により絶命した場合、または、毒の回復処置を施しても絶命した場合は、ラスト勝負無しにあっしが緑に光るケロ」

 チクミはポヨンと、ミマの胸を小さく1つ揺らした。


 絶命なんて言葉は、今の勇太は、聞きたくもない!

「ミマが死んでしまったら、元も子もないんだよ! それは絶対に阻止だ!」

 勇太はミマを助けたいのだ。



—■—■—■—■—■—■—■—■—■—


┏【パターン6】

┃ラスト勝負の勘を使う毒見(or解毒剤特定)

┃シールに触って

┃ミマ以外の人とジャンケン

┃  ↓

┃  勝ち

┃  ↓

┃  勘

┃  ↓

┃ 毒見or解毒剤特定

┃   +

┃解毒剤を使ってもミマが回復しない場合

┃ラスト勝負できず

┃  ↓

┃ 時間切れ

┃  ↓

┃ シールが赤

┗『赤』


┏【パターン7】

┃ミマが毒により死亡

┃(ラスト勝負不要)

┃  ↓

┃ シールが緑

┃(これは、絶対にダメ!)

┗『緑』


—■—■—■—■—■—■—■—■—■—



 色々とパターンが増えて、複雑になってきた。まとめてみよう。




【今回は変な所で切れてしまいました。次回は始めにまとめがあります。そのまとめにはズルっぽいですが、『—■—』ではさまれた中の『パターン№』を使用しています。また、次回は紹介文で決めていた文字数より多いです】


【勇太もチクミも言わなかったことをここに捕捉します。

 パターン7の場合、毒を食べて死ぬまでの時間は特記事項によって、時間切れが猶予されるのではないかと思うかも知れません。

 ですが、ミマが毒を食べるよりも先に勇太の契約を破棄しているので、猶予されないのです。

 もし、契約を破棄せずに毒を食べてしまった時には、特記事項によってミマの絶命までクエストは終わりませんので時間切れもなく、勇太の能力制限もありませんでした。ラスト勝負の勘を使うこともなく解毒剤を特定できると喜んでいたことでしょう】


【お知らせ

 生活パターンの変化が起こると予想されています。これまで月曜日と木曜日に公開しておりましたが、木曜日のみの公開といたします。もうすでに全話が出来上がっておるのですが、最終チェックを行っている時間が取れなくなりそうなのです。また、皆様の作品を読むペースも、読む時間も変わると思います。勝手を言って申し訳ありません。今後とも『姫毒』を、よろしくお願いいたします】



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