第七章 合わせ毒の解毒剤

第26話 第七章 合わせ毒の解毒剤(1/5)

【約3800文字】



【毒見役の勇太が止めるのも聞かずに、ミマがスクマミロンを食べてしまい、倒れてしまった】



   第七章 合わせ毒の解毒剤

 

 領主の屋敷にある西洋庭園にて、領主、ミマ、勇太の3人が、昼の会食を行なった。

 そして、毒見役の勇太が食後のデザートに危険を感じる。

 しかし、ミマは毒見役の召喚契約を破棄してまで、デザートのスクマミロンを食べたのだった。

 すると、すぐに意識を失い、芝生の上に倒れてしまった。


 だが、かろうじて息はある。


 その傍らに呪いのビキニを着た女の子がやって来て、全員の前で堂々と自らをガーゾイルと名乗ったのだ。


 しかし、ガーゾイルを知っているのは、勇太とナーガだけだ。


 その名前を知らない領主が、勇太とガーゾイルのもとへ来た。

「お前が運んだスクマミロンで、人が倒れたぞ! どういうことだ!」


 スクマミロンはミマの国が原産の果物であるが、腐りやすいため輸出されていなかった。今回は冷蔵の新技術を使って運んだと領主は言っていた。


 このガーゾイルがスクマミロンを運んだ張本人だったのだ。

「フンッ!」

 その張本人は答える気などない。


 勇太は倒れたミマが心配だ、ガーゾイルでもすがりたい。

「なあ! 治す方法はないのかよ!」


「わざわざ毒殺したのだ! 治すなど、あるわけがない!」

 憎らしい顔でニタリと笑う。


「ど、毒殺だって! くそっ! お前を砂に埋める前に切り刻めばよかったよっ!」


 勇太とミマは、一度ガーゾイルに襲われている。

 呪いの人格であるガーゾイルが、女剣士パルを操って襲わせたのだ。しかし、勇太が呪いのビキニを脱がすことにより、その難を逃れたのだった。

 そして、再び呪いのビキニが使われないように、川の砂地に埋めてから領主の屋敷に来たのである。


「砂? 埋める? そんなのは知らんな」

 と、ガーゾイルは、とぼけた顔をする。


 蛇のナーガが気付いた。

「勇太! 違うっす! この服は違うっすよ!

 ひもが違うっす! 左右の胸をつなぐ紐が、昼前に埋めた服とは違うっすよ! この服は別物っす!」


 勇太はガーゾイルの胸を改めて見る。


 その大きさは普通サイズよりも小さい。

 にもかかわらず、金色のペンダントをげ、汗ばんだ肌に呪いのビキニをフィットさせて、膨らみ曲面をリアルに表現している。

 さらに、その汗からは、男を誘う匂いをプンプンとさせているのだ。

 予想以上にエロく見えて、年上のお姉さんを思わせていた。


 なのに、勇太からは鼻血が出ない。

 そう、治癒魔法によって、ミマのポロリよりも強い刺激を感じないと出ないのだ。

 刺激はミマの方がまさっているのは明らかなのだが、呪いのビキニはフィットしている割には、頂上の突起が見て取れないことも一因のようだ。


 鼻血が出ないのはいいのだが、まじまじとは見れない。

 勇太は、がんばって胸の谷間を凝視する。


 ……


 確かに違う。


 ナーガが言うように、左右の胸をつなぐ紐が違う。

 埋めた呪いのビキニは、1本の太い紐でつながっていたのだが、このビキニは2本の細い紐になっている。


ガーゾイルは馬鹿にした顔。

「私は2週間も前から、この娘に取り憑いているのだ。昼前に埋めたなど、お門違かどちがいもはなはだしい」


 領主が一歩踏み込んできた。

「取り憑いただとっ! なら、お前は誰だ! 運送屋の娘ではないのか?」

 ガーゾイルは運送屋と言って領主に取り入ったようだ。


「私の名前はガーゾイル。


 ミーリークでは有名なアンチ魔法組合の者であり、サマルカンドを全員殺す者である。


 私は、その人格を受け継いだ呪いなのだよ!


 それに、この取り憑いた娘は運送屋ではない。

 表向きは薬剤師だが、本業は毒師だ! 私はその知識を利用して、このサマルカンドの姫を毒殺したのだよ。まだ息はあるが、死ぬのは時間の問題なのだ。

 フハハハハ……」

 自慢するように白状すると、高笑いをした。


 勇太は理解した。

 元は同じ人間の呪いであっても、ビキニが違えば別人格なのだ。


 領主が、ガーゾイルをにらみみつける。

「おい! 貴様が姫を毒殺したんだなっ!」


「そうだ!」

 ガーゾイルは誇りをもって答えた。


「衛兵! この者を取り押さえよ!」


 ダダダッ


 領主の指示で10人ほどの衛兵が、ガーゾイルを取り囲み、取り押さえようとする。


「きゃーーーーーーーーーーっ!

 変態っ! 触らないでーーーーーーーーーーっ!」

 ガーゾイルが女の子を装って抵抗する。衛兵たちはたじろいでしまった。


「ええいっ! なら、メイドたち! 取り押さえよ!」


 衛兵に代わって7,8人のメイドが、あっという間に、ガーゾイルを芝生の上に押し倒し、うつ伏せにして取り押さえてしまった。

 メイドたちは素人ではなかった。領主の屋敷で働いているだけに、体術の訓練を受けているようだ。


 わめくガーゾイル。

「さあ、殺せっ! やれ、殺せっ! 目的を果たしたのだ。死んで悔い無しっ!」


 ガーゾイルは呪いの人格である。呪いは命ではないので、死を恐れていないのだ。


 ナーガがニョロっと首を伸ばした。

「殺す必要はないっす。ガーゾイルは昔の呪いっす。その娘に取り憑いているだけっすよ。その娘に罪はないっす」


「お供の蛇よ。どういうことだ?」

 領主はガーゾイルの自己紹介だけでは分からなかったようだ。


 ナーガがガーゾイルについて補足した。

 元は約100年前のアンチ魔法組合にいた人物であり、今はビキニに取り憑いて、そのビキニに触った女の子を操って、サマルカンド元王家の人間を殺そうとする呪いの人格であると。


 ガーゾイルを取り押さえているメイドの1人がビクンとする。

 呪いのビキニにさわったら操られてしまうのだ。


 しかし、逃げる訳にはいかない。それに、ビキニの面積はせまいので、れずとも取り押さえることはできた。


 領主は事情が分かっても、ビキニにさわれないので対処が思いつかない。

 ナーガが答える。

「異世界人には呪いは効かないっす。勇太が、この呪われた服をぐっすよ」


「えっ! また、俺が脱がしちゃっていいの?」

 ミマが大変な時なのであるが、男の何かが、ちょこっとうずいた。


「それしかないっすよ。ガーゾイルは姫様を助ける気などないっす。服を剥いでとっとと鎮めるっす。すると、毒師の娘が解放されるっす。毒の情報が得られるかも知れないっす。だから、バーゼさんには代わりの服を用意して欲しいんすよ」

 バーゼさんとはバーゼラルド、領主のことである。


 ガーゾイルは不敵にも笑う。

「ハハハッ この毒師に記憶が残っていればな。とにかく、姫はもう手遅れさ。それにしても、蛇のくせに、よくも私を知っているな!」

 ガーゾイルはミマを毒殺したと思っている。余裕たっぷりだ。


「蛇と言っても、アタイはナーガっすよ!」

 蛇だけど、胸を張る。


「ナーガか、聞いたことがあるな。サマルカンド王家直属の生物兵器だったか」

 ガーゾイルは100年前の人格なのに、ナーガを知っていた。ナーガは思ったよりもずっと長生きなのかも知れない。


「昔のことっすよ。そんなことより、勇太は急いで服を剥ぎ取るっす!」


 そう、ミマの死は時間の問題なのだ。少しでも情報が欲しい。

 倫理的なことなんて、この際どうでもいい、勇太は取り押さえているメイドたちの間から手を入れる。

 呪いのビキニの紐を1本ずつほどき始める。


 うつ伏せにおさえられているガーゾイルが、最後(最期)の雄叫おたけび。

「再びサマルカンドが出現すれば、別の呪いが目覚めるだろう! その時が来るまで、さらばだ、サマルカンド関係者諸君!」


 言い終わると同時に、勇太が呪いのビキニを上下とも剥ぎ取った。

 ガーゾイルは、悪役らしくカッコをつけて消えていったのだった。


 勇太は毒師の子に毒の情報を聞きたいのだが、7、8人のメイドたちに囲まれて全裸のまま気絶している。(残念ながらうつ伏せなので、見たい部分は何も見えない)

 勇太がすぐにできることはなさそうだ。


 ビュー ヒュー


 気付くと、冷たい風に、勇太が握っている呪いのビキニが踊っていた。

 人が多いのでビキニの感触を楽しむことも出来ないし、ずっとビキニを持っているわけにもいかない。

 だからと言って不用意に置いて風に飛ばされたら、誰かに拾われてしまうかも知れない。


 見ると近くに、人間の胴体ほどに太い木が植わっており、ビキニを結び付けるには手頃である。

 さらに面白いことに、目線の高さに木の股がYの字を作っている。


 勇太はちょうどいいと思い、木の股に呪いのボトムビキニを上下を逆にして結び付けた。


 空へ向かって開脚倒立をしているようだ。

 いやーんっと聞こえてきそうなくらいに、トップレスに見えるので、トップビキニも上下を逆にして胸の辺りに結んであげた。首の紐はきつく締めないようにして、ビキニらしさを演出した。


 逆立ちしたビキニが出来上がった。


 逆立ちは非常にインパクトがある。この騒ぎを知っている者であれば、近づくことはまずないだろう。




 毒師の子に着せるメイドビキニが到着したようで、メイドたちに囲まれながら、気絶のままに着せらているようだ。


 それよりも、勇太はミマの様態が心配だ。

「ミマ!」

 特に変化はない。


 領主も来た。

「異世界の少年よ、すまぬ。お主の毒の見立てが正しかった。本当にすまぬっ!」

 頭を下げているが、今さらどうでもよかった。


「そんなことはいいです。ミマを何とかしなくちゃ! 早く毒師の子に起きてほしいんだけど」

 まだ着せてる最中のよう、目覚める様子はない。


 領主が告げる。

「今、気付け薬を取りに行かせている。ただの気絶なら、すぐに目覚めるはずだ」

「ありがとうございます」

 勇太は気付け薬を待った。


 すると、いきなり領主が声を上げた。

「おおっ! その服は?」









【倒れたミマを助けるには、ガーゾイルに取り憑かれていた女の子に頼るしかなさそうです。また、木に縛ったビキニ(服)を見た領主が何かに気付きました。次回、呪いのビキニについての新たな事実が明らかになります。次回は紹介文に掲げた文字数よりも多いです】






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