第25話 第六章 デザート(4/4)
【約1600文字】
【毒見役として召喚された勇太が、危険と言って止めたのに、ミマは勇太の召喚契約を破棄してまで、スクマミロンを食べてしまった】
ミマの細い喉が小さく動き、スクマミロンを腹へと落とした。
顔いっぱいに、最高の満足が華やいでいる。
「ほら、何ともございませんこと……よ……」
ドンッ!
バタンッ!
ミマが一瞬で眠りに落ちたかのようにテーブルに崩れ落ち、さらにイスからも
ピクリともしない!
「ミ、ミマーーーーーーーーーーーーーーッ!」
でも、勇太は動けない。衛兵たちに取り押さえられているのだ。
「きゃーーーーーーーーーーーーーーっ!」
ビキニメイドも悲鳴を上げた!
「姫様っす!」
ナーガはテーブルから芝生へ飛び降りた!
「やってしまったケロ。あっしのせいじゃないケロよ」
逃げ
領主も青い顔をして立ち
ビューーーーッ
っと、冷たい風が辺りを吹き抜けた。
あっけに取られた衛兵からも力が抜けた!
ブバッ! バッ!
勇太は衛兵たちを振り払い、倒れたミマのもとへ。
領主も衛兵たちに首を振り、勇太の開放を許した。
ナーガがミマを心配そうに見てる。
勇太も、顔を覗き込んだ。
幸い苦痛の色は見て取れない。
静かに眠っているようだ。
でも、心配に変わりはない。勇太が呼ぶ。
「ミマ! ミマ!」
ヒューーーーーーっと、冷たい風が吹き抜けるばかり。
ヤバさが、マックスだ!
勇太は手の甲を、ミマの口と鼻の前に差し出した。
「息はある! でも、どうしたら?」
息があるのは良かったが、何をどうしたら、助けられるか分からない!
まごまご、手をこまねくばかり!
「どうするっす! 何をするっす!」
ナーガもウロウロ、ニョロニョロするばかり! 蛇だけに手も足も出ない!
他の人たちは声も出せずに動けないでいた。
勇太が思いつく。
「吐き出させよう!」
指をミマの口へ入れようとした。
その時!
「ムダ、ムダ!」
知らない女の子の声が聞こえた。
「だ、誰?」
勇太が振り向くと、10メートルくらい離れた木の陰に、ビキニの女の子が立っていた。
耳には金色のピアスを着け、首からは金色のペンダントを
勇太よりちょっと年上のお姉さんに見えた。
ただ、胸は標準より、けっこう以下ではあったのだが、勇太には見てる余裕はなかった。
バンッ!
真っ先に反応したのは領主である。その両手が、テーブルを叩いた。
「おい! お主が運んだスクマミロンで、人が倒れたぞ! どういうことだ!」
トコトコ
その子は領主に見向きもしないで、勇太と倒れているミマの方へ歩いてくる。
勇太も黙っていない!
「ムダとか、何だよ!」
「毒はすでに体中を
「なぜ、そうと分かる! お前は誰だっ!」
「私か?」
歩きながらそれだけを答え、ニヤリと笑う。でも、それ以上何も言わない。
「ちっ! まだ生きてるか!」
ふてぶてしいにも程がある!
「おいっ! お前は誰だっ! ムダとか、毒が巡っているとか、いったい何を知ってるんだっ!」
勇太は、つかみかからんばかりだ!
その子は、すっと立ち上がって勇太を見上げた。10センチくらい背が低い。
その何とも憎らしい、すました顔が答える。
「分からんのか? サマルカンドに関わる者が、この服を見ても分からんのか?」
勇太はハッとした!
そのビキニ!
その配色!
灰色の地に、細くて黒い縦線が、同じ間隔で何本も並んでいる。
「そのイメージカラーッ!
お、お前は、ガーゾイル!」
それは、呪いのビキニであった。
呪いのビキニとは、ミマを斬り殺そうと、追いかけてきた女剣士パルが着ていたビキニだ。勇太が脱がして川に埋めたのだ。
だが、今、呪いのビキニを着ているのは、パルではなく、全くの別人である。
「そう、私がガーゾイルだ。名前だけ言えば、意味は分かるだろう?」
キュッと、バカにした笑みを結んで見せた。
埋めたはずの呪いのビキニが、掘り出されたのだろうか?
とてつもない悔しさを、どうすることもできない勇太であった。
【呪いのビキニを着たガーゾイルが再登場しました。でも、女剣士ではないようです。呪いのビキニが川の砂地から蘇って、毒を盛ったのでしょうか? そして何よりも、ミマは助かるのでしょうか? 次回からは第七章です。そのサブタイトルの名称も含めて、お楽しみに】
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