第二章 魔法姫
第5話 第二章 魔法姫(1/7)
【約3600文字】
【高1の勇太は学校の教室から異世界であるトロピ界に召喚された。直接召喚したイラシャから離れて真っ暗な空間を、顔に風を感じながら1人寂しく飛ばされていた】
第二章 魔法姫
パッ!
真っ暗の中を飛んでいたが、急に明るくなった。
青空と太陽だ!
透き通るような青空の中、黒い学生服を着た少年が、太陽を見ながら飛んでいた。
召喚される前は学校の教室にいたので、勇太は学生服のままなのだ。
だが1人である。イラシャは一緒ではなかった。勇太は体が浮いたあたりから気付いていたので特に心細くはなかった。
「空ってことは、落ちてるのか?」
視界には空と太陽だけだ。
真っ逆さまに落ちているかも知れない!
それに日光が
体を
すると、下界が見えた。
眼下は一面の森である。
落ちてなかった。ほぼ水平に飛んでいる。
詳しい高さは不明だが、思ったより高度がある。ドローンというよりは航空写真のようだ。森の木々は
それに速さも飛行機のように高速ではない。前方から
「すぐの落下はないだろう」
勇太は何か特別な力によって飛んでいると思った。
徐々に降下しているっぽかったが、ほぼ水平飛行なので気持ちに余裕が出てきた。
なので、遠くに目をやると、連なった山々が見えた。けど、海はなかった。
右側には白い山脈が続いている。手前にはもっと低い山がいくつも見えるが緑に覆われ、雪の気配は感じられない。
左側は森が地平線のように続いていた。山は見当たらなかったし、水辺らしきものもなかった。
勇太は主に右側の山脈を眺めた。
「異世界って、自然がいっぱいなんだな」
などと言いながら、しばらく、そんな風景を堪能した。
ビュンッ!
何かが勇太の左足をかすめた。
後方を見ると突出して高い木のてっぺんが遠ざかっていく。
足が開き気味だったので、足だけに枝がかすったようだ。右側を見てたから気付かなかった。
知らないうちに高度が下がっている!
「ヤバイぞ!」
ヒュン ヒュン
森の海からところどころに突き出した枝先が、勇太の体をかすめ始める。
飛行機ほどには速くはないが、自転車くらいには速い。
大きな枝に当たったら大ケガだ!
ビューーーーンッ!
と思ったら、急に落ちた!
森の海に落ちる寸前で、森が途切れた!
地上は草地に代わった! そこへ目がけ落ちている!
ドターーーーンッ!
ゴロゴロ……
勇太の体は草の地面を転がる。
ゴロゴロ ゴロゴロ
まだまだ転がる。
思った以上に転がってから、うつ伏せになった時に止まった。
落下のエネルギーが回転エネルギーに変換したかのようだった。
そのためか、特に痛くはなかった。
うつ伏せのまま横に目をやると草、稲のような葉っぱがたくさん伸びている。そのように見えるのだが、視界がはっきりとしない。
ゴロンと半回転してから上体を起こす。
景色が定まらない。視界全体がクーッと回っては、スッと戻る。その繰り返し。
目が回っていた。
徐々に平常に戻っていく。
そこは木々に囲まれた草地であった。
草地は野球場より若干広いくらいであり、
そして、遠い草地の果てに大きな家が1軒見えた。屋敷のようなドッシリ感があり、民家というよりは、金持ちの別荘と言う風格がある。
でも、朽ちている。ボロボロだ。
「洋風のお化け屋敷だな」
勇太は屋敷に誘われるように立ち上がった。
カサ カサ
草を踏みしめる音! 誰かが来たのか?
勇太はその音に振り向いた。
ブォッ!
鮮血が飛び散る!
勇太の血なのだが、攻撃を受けたわけではない! 鼻血だ。
ビ、ビキニの女の子!
3色の横線が描かれたビキニを着た子だ。
ビキニのトップにもボトムにも、上から青赤緑の3本線があった。それらの線は同じ太さで隣接しており、その上下は白地だった。ただ、白より色の面積の方が遥かに広い。
特にビキニの布が小さいわけではないが、豊満な肉体が思った以上にエロく見えた。
そう、その子の胸はスゴく立派なのである。
超巨乳というわけではないが、そこそこ大きい。
しかし、その胸のスゴイところは、その大きさではない。垂れることなく、ポワンと浮かんでいるように、張りがあるところなのだ。
自然に浮いた感じなので、思ったほど胸の間にある峡谷は狭くなかった。
ハンドボールのボールより幾分か小さい、白くて柔らかな肉まんか
ビキニの素材である布の端っこが、豊満な体を軽く線状に押さえて、肉の柔らかさを勇太に教えていた。
もう、目に
あまりにも目に染みるので、勇太は下を見た。
胸の下は腹である。
くびれている割にはポッチャリ感がある。だが、肉が余った風ではない。
豊かさを
その真ん中にあるヘソは、きれいな縦筋。ゴマなんて入ってない。実に美しい
腹の両脇に構えた腰は、女性らしくくびれている。高校生には刺激が強い。
勇太の目はさらに下へ。
腹の下、ボトムビキニにも、例の白地に青赤緑の3本線が横に描かれていて、その布は大き過ぎず小さ過ぎず、スタンダードな大きさであるだが、形は下着と変わらない。
そこが、かえってエロい! 凝視できない。
ビキニの下、太腿も多少ポッチャリ気味ではあるものの、内股の肉は目立ってない!
健康的に見える太腿だ。
でも、森の中にある草地である。さすがに裸足ではない。女子用の通学ソックスに布製のスニーカーのような靴を履いていた。
ビキニのインパクトに、体ばかり見てしまったが、顔だってメッチャかわいい。
いわゆる美少女である。
年齢は勇太と同じくらいで、少々ポッチャリ感があって、大きめな黒い瞳をして、鼻は上品なほどに小さく、口は標準くらいで、唇はそれほど厚くないものの、薄ピンク色の紅が引かれていた。
そして、栗毛色の髪は肩くらいまで伸びていて、ウェーブが少々かかり、高級、いや、高貴に見えた。
そう、勇太にとっては、とっても好みのタイプだったのである。
こんなにかわいい女の子が、どうしてビキニなんだ?
ここは、森の草地である。水辺なんて上空からは見えなかった。
シチュエーション的に、エロさが増量された感は否めない。
勇太が鮮血を噴出したのは、ごく自然な流れと言ってよかった。
そうか!
トロピ界!
トロピカルか!
だからビキニなんだ!
勇太には変な連想が頭にこびりつき、妙に納得してしまった。
「あらあらまあまあ、出血ですわ! 大変ですわ!」
と言いながら、ビキニの女の子はなんか嬉しそう。
「ご、ごめん、みっともなくて」
ばつが悪い勇太は手で鼻を押さえる。手も顔も学校の制服も鼻血で汚れてしまった。
そんな勇太にも、ビキニの子は上機嫌に微笑んだ。
「よろしいのですわ。初対面で鼻から出血されたのは初めてですのよ。ちょっと恥ずかしいのですわ。でも、出血は良くありませんから、すぐに治してしまいますね。クランケ、クランケ、セクシーリミット、出血前の体に戻りなさ~~い!」
どこから出したのか、鉛筆を2倍くらいに伸ばした細長い棒を振っている。
彼女のその声は高めでかわいく、呪文に揺らぎながらも宙を楽しく踊った。
唱え終わると、おもむろに勇太を見た。
「ねえ、鼻の下を触ってみるのですわ。もう出血してないと思いますけど、どうかしら?」
言われるままに、勇太は指で確かめた。何もついてない。鼻血が止まったと言うより、これまでの鼻血までも消えたみたいだ。
学生服は黒なので分かりにくいが、ついていたはずの血が見当たらない。予想以上の効果だ。
「ありがとう、血はつかないよ」
「これで同じ位の刺激では、出血しないはずですわ」
し、刺激って、自分の姿が刺激的って自覚があるみたいだ。
なるほど、今以上の刺激がないと出血しないから『セクシーリミット』なのか。
でも、棒や呪文で鼻血が治るなんて、勇太には実感がない。
「どうやって治したの? 出した血も消えたみたいだし」
「治癒魔法ですわ。出血したばかりでしたから、出血前の体と同じにしたのですわ」
ニコッと笑う。
出たと思いつつ、もう一度聞いてしまう。
「魔法、なの?」
ゲームや漫画の世界がよぎる。
「魔法ですわ。でも、魔法を知らないんですの? ……ああ、そうですわね! 服装も違いますし、あたしが頼んだ異世界人さんですのね」
やはり、この子が勇太を召喚した依頼者のようだ。
依頼者と気付いたら、勇太は大事な所に貼ったシールが気になってくる。
「と、言うことは、あんたの体には、帰る時のシールが貼ってあるんだよね」
答えずらくなっては
「こら! 会って早々『あんた』とは、失礼っすね! 今時の異世界人は礼儀がなってないっす!」
女の子の声?
だが、この子じゃない。明らかに別人であり、意地悪っぽく聞こえる。
キョロキョロ
でも、他に誰もいない。ビキニの子と勇太だけだ。
「どこ見てるっすか? ここっすよっ!」
【意地悪っぽい女の子はどこに? 次回をお楽しみに】
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