第4話 第一章 異世界召喚(4/4)

【約2200文字】



【異世界へ召喚された勇太が、無事に帰るにはシールが必要であるのだが、その入手方法は、召喚の依頼者とジャンケンをして勝つことである。しかしその時、勇太のジャンケン全勝の能力は停止しているという。普通のジャンケンで勝つなると確率の問題となってくる。シールをゲットできないと勇太は焼死なのだ。生命の危機を感じたのだった】




 ちょい待ちっ! メチャクチャヤバイことを言い出したぞ!


 ジャンケンに勝ってからシールを剥がすはずである。ジャンケン全勝の能力がなかったら、勇太は勝てないではないか!


 勇太は慌てる。

「シールをゲットするにはジャンケンに勝つんだろう? 能力が停止って、俺はジャンケンができないってことかよ!」

 人体発火現象が頭をよぎる。教室で焼死じゃん!


 客観的に見ても、学校で生徒が焼死すれば大事件である。


 イラシャは真剣に答える。

「ジャンケンができないのではなくて、勇太さんの場合、普通の人と同じになるということです」


 似たようなもんだ。

「なら、絶対にジャンケンに勝てるって、わけじゃないじゃんっ!」


 シールがなければ、無事に帰れないってことだ!

 ここに来て焦りに焦る!


 イラシャは、なだめるような営業スマイル。

「ご安心ください。


 ジャンケンの能力は1回だけ戻ります。その1回を逃さずにかして、依頼者とのジャンケンに勝てば大丈夫です。問題なくシールを剥がせますよ」


「驚かすなよ!」

 勇太は安堵の空気に浸った。


 イラシャは続ける。

「ですが、ラスト勝負に勝っても、すぐにシールを剥がせばいいわけではありません。


 勇太さんがラスト勝負のジャンケンに勝つと、シールがグリーンに光ります。光っている間に、依頼者の体から自らの手で剥がしてください。


 でも、一定の時間を過ぎると光が消えてしまいますので、注意してくださいね。そして、そのシールを自分の肌に貼れば人体発火せずに元の世界に帰れます」


 勇太は理解できたが、1回だけ戻るとは、どういう時なのか? 知らない間に過ぎたりしたら目も当てられない。


「なあ、1回だけ俺の能力が戻るって、どんな時なんだよ」

「勇太さんの手がシールに触れている時に1回だけ戻るんです。勇太さんの場合、シールに触りながら依頼者とジャンケンしてもらいます」


 なんてことはなかった。

 いや待てよ。

 シールって大事な所に貼ってあるんだぞ。ということは、大事な所に触ってジャンケンをするということだ。


 女の子の大事な所にさわれる!

 なかなかの役得だ。


 しかし、喜んだ顔をしたらメッチャハズイ。

 はぐらかすように別のことを聞いた。

「そ、それじゃあ、シールがグリーンに光る前に剥がしたら、どうなるのかな?」


「強制的に元の世界に戻されて、人体発火となります。安全に剥がせるのは、グリーンに光ってる時だけなのです」


 ジャンケンは1回勝負であり、シールがグリーンに光っている時だけゲットできる、ということだ。

 難しいと言うほどではないと思った。


 これなら、なんとかなる!

 道が見えた。


 となると、クエストが気になってくる。

「それで、クエストって何? 俺は何をやるの?」


「守秘義務があって、私の口からは申せません。依頼者から直接聞いてください」

「なぁんだ、残念」


 とにかく、そのクエストが終われば、お触りジャンケンと、Hな場所のシール剥がしが待っているのだ。


 想像力が勇太の体内をめぐる!






 ………………(具体的な想像内容は自粛します)………………






 まるで、エロ親父であった。


 いやいや、簡単に卑下ひげしてはいけない。


 ジャンケンも、シール剥がしも、勇太の人体発火がかかってるのである。生死に関わることなのだ!



 決してエロだけじゃない!


 俺にはエロを正当化できる理由がある!


 堂々と胸を張った。


「他に質問はございませんか?」

 勇太の妄想を破ってイラシャが聞いてきた。そういえば、今は手ぶらである。


「装備とかは無いの? ゲームなら最低の装備があるんだけど……」


「ここには、お渡しできる装備や品物はございません。依頼者にお聞きください」

「丸腰かよ!」

 武器もなく、魔界へ放り込まれる勇者の気分だ。


「大丈夫です。死ぬことはございませんので、ご安心ください」

 忘れてたの? というようなあきれ顔だ。


 勇太はシールに気を取られて考えが及ばなかった。

「そうだった、俺は不死身だった。なんか、そう思うと気分が大きくなるな。でも、痛みはあるみたいだけど……」


 不安そうな勇太にイラシャは答えず。

「他に、質問はございませんか?」

 とか、かすように聞いてきた。


 勇太は、ちょっと考える。

「うーん、ないな」

 思い浮かばなかった。


「それでは地上へ移動してもらいます……」

「え? 移動は分かるけど、ここは地上じゃないの!」


 真っ暗だけど、地上のどこかと思っていた。


「ここは世界と世界の狭間はざまです。まだ、トロピ界ではありません。


 ――あっ! そろそろ時間のようです。これから依頼者の所へ移動となります。

 もし、何か分からないことがありましたり、困りごとが発生いたしましたら、シールに直接聞いてくださいね。

 私の名前がスイッチになっていますから……」



 スーッ!

「あわわっ!」


 イラシャが言い終わるよりも早く、勇太の体が宙に浮いた。宇宙のような無重力だ。

 少々慌てたので、ロウソクの灯を見失ってしまった。

 暗闇の中なので、床から高く持ち上がったのか、低いままなのかも分からないどころか、無重力なので、どっちが上か下かも分からない始末だ。


 間もなく、顔に風を感じ始めた。

 闇の中を飛んでいるみたいだ。


 風下を振り返ると、やっぱりロウソクの灯は見えない。


 イラシャは、分からないことはシールから聞けと言っていた。

 でも、シールってしゃべるのか? ちょっと心配に思ったが、聞けと言ったんだから、たぶん聞けるのだろう。楽観的に考えた。


「よし、依頼者の女の子に会うぞ!」



 この時、勇太は自分のジャンケン能力に安心しきっていた。






【第一章は、ここで終了です。第一章では直接召喚したお姉さんだけで、女の子が登場しませんでした。次回に召喚を依頼した女の子が登場します。どうぞ、お楽しみに!】



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