第2話 第一章 異世界召喚(2/4)

【約2500文字】


【勇太が学校で英語の授業を受けていると、異世界召喚を求める声が聞こえてきた。帰る時に死ぬかも知れないと言うので、勇太は召喚を断ろうとするが、声の主は死なないアイテムについて切り出してきた】



 そろそろ回答してやるか。


「まあ、俺は人に頼られるってのは好きだし、不死身には心が動きそうだったけど、報酬の確約は無いし、何と言っても、帰る時に死ぬのは絶対に嫌だから、この召喚は無しってことで……」


 3つ目の帰る時に死ぬ場合があるというのが、答えの全てだった。


 声は慌てる。

「ちょ、ちょ、ちょっと! 必ず死ぬわけじゃないですよ! あるアイテムを持っていれば、安全に帰れますよ!」


 そのくらいでは安心できない。そのアイテムが簡単にゲットできるとは限らないからだ。


「それって、超レアアイテムとか、言うんじゃないの?」

「勇太さんの場合、能力をかせば、簡単にゲットできるアイテムです」


 能力?

 ジャンケンのことである。


「俺がジャンケンに勝つと、安全に帰れるレアアイテムがもらえるの?」

「その通りですが、アイテムはあらかじめ勇太さんのために用意されているので、レアではありませんよ」

 なら、一番の心配事であった帰る時に死ぬ場合があるというは回避できそうだ。


 だが、報酬は不明なので、召喚される意欲につながらない。興味をそそられるのは不死身だけなのか?


 そういえば、言ってたアイテムって元の世界に持って帰れるのかな? もらえるのなら報酬と思ってもいいかも。

 金とか、宝石とかだったら、報酬と言っていいはずだ。

 聞いてみよう。


「なあ、アイテムって、何? スゴイやつ? もらえるの?」

「アイテムはシールです。依頼者、えーと、召喚を依頼した人の体に貼ってあるシールです。帰る時に持ってないと死んでしまうので、誰もが持って帰っているはずです」


 ただのシールか。報酬とは言えないな。でもまあ、記念にはなりそうだ。


 無事に帰れると思ったら、シールを貼っているという依頼者が気になった。

「なあ、その依頼者って、どんな人?」


「召喚の承諾をもらっていないので、詳しくは話せませんが、依頼者は女の子ですよ」


「女の子!」


 勇太は男と思っていた。というのは、これまで代理ジャンケンを頼んできたのは男子ばかりだったからである。


 女の子からジャンケンを期待されるのは初めてだった。

 勇太に特別な期待感が沸き起こり、何やら運命的なものまで感じ始めた。


 女の子とは縁がなかった俺が、女の子にジャンケンを望まれているのか!


 声が続ける。

「いいですか、よく聞いてください。

 依頼者の体には、勇太さんが無事に帰るためのシールが貼ってあるのですが、肌に直接貼ることになっています。しかも、適当な場所ではありません。


 大事な所を隠すように貼る規則になっているのです。


 そして、勇太さんが元の世界に帰る時、勇太さんの手でそのシールを剥がさなければならないのです! この意味が分かりますか?」


 なんか、声がいやらしくなってるぞ。


 この意味って、つまり、女の子の大事な所に貼ってあるシールを、俺が剥がしていいってことじゃないのか!

 ペリペリとシールを剥がせば、貼ってあった大事な所が見えてしまうに違いない。


 大事な所が問題だ! 大問題だ!


「なあ、大事な所ってどこなの?」

 勇太は、もうスケベな好奇心が丸出しだ。


「そこまでは分かりません。依頼者本人が、大事と思っている所……です」

 これまでになく恥ずかしそうな声になってる!


 勇太はハズイ場所と確信した!


 あの3箇所だ!

 男子高校生が考える女の子が見せてはいけない3つの場所、そのどれかだ!


 俄然がぜん、やる気が出てきた勇太だった。


「そっか、女の子の大事な所に貼ってあったシールを、お土産にして持って帰れるのか。それが報酬なんだ」


 変態の報酬である。


 不味い! 変態に思われるぞ!


「そ、そのシールがないと死ぬんだよな。だから、持って帰るしかないんだ。仕方ないから、持って帰ろう」

 ごまかした。でも、棒読みだった。


「はい、帰る場所はこの場所で、同じ時間になります。あまり例はありませんが、何年トロピ界に滞在しても変わりませんのでご安心を」


「その異世界、トロピ界だっけ、そこで何年過ごしても、俺は年を取らないの?」

 同じ時間に帰るのだから、そう考えるのが妥当である。


「はい、時間の流れが違うとお考え下さい」


 異世界での勇太は、不死身だから死なない。さらに年を取らないときた。


 マジで、不老不死じゃん。いいじゃん、いいじゃん!


 気分が乗ってきたところで、勇太は召喚について整理してみる。


 召喚先のトロピ界では俺は不老不死、んで、代理ジャンケンをすればいいだけだ。俺にとってジャンケンはチートだから、勝つも負けるも思いのままだ。

 でも、報酬は不明。


 その代わり、シールをもらえる。ジャンケンに勝って、女の子の大事な所から剥がして手土産にできる。

 そう、女の子の大事な所から、俺が剥がすというところがポイントだ。


 そして、この教室の同じ時間に帰ってくるってわけか。

 英語の授業中っていうのが、ちょっとあれだけど、ラノベや漫画の異世界転生モノみたいに死んで生まれ変わったり、行ったきりになって、この世では行方不明ってこともない。

 無事に帰れた上に、俺の貴重な時間を浪費しないで済む。


 良心的じゃん。


 そして、勇太は他人に頼られるのが好きだった。

 それは代理ジャンケンの経験からきており、その時は勝敗を思うように操って、頼んだ奴から感謝されていたのである。


 例えチートでも、誰かに感謝されるというのは、気分がいいものなのだ。


 頃合いを見計らったのか、声が聞く。

「どうでしょうか? 召喚を承諾しますか?」

「分かった! OKだ! 俺には特にメリットはなさそうだけど、能力を望まれて異世界へ行ける上に、そこで不死身ってところが気に入った!」

 勇太はカッコをつけて、建前を並べた。本命は大事な所のシール剥がしである。だが、スケベ根性は隠しておいた。


「あー、でも、不死身ですが痛みは感じますよ」

「ゲッ! 痛みはあんのか……」

 建前を並べたら、思いもよらないものが出てきた。


 でもまあ、多少痛くても不死身なんだし、攻撃を跳ね返せるんだから、まあ、いっか。


「そこは目をつぶるよ。俺は異世界召喚を承諾するよ」

 勇太は召喚を受け入れた。


「了解しました。それでは、勘秘かんぴ勇太さんをトロピ界に召喚いたします!」


 ピカッ!


 教室全体が白く光った!

 勇太は一瞬、その光に包まれてしまう。






【ポイントは隠れた報酬ですね。女の子の大事な所に貼ってあっるシールを、自分で剥がして持って帰れるのです。それが召喚を決めた本当の理由でした。さあ、光に包まれた勇太はどうなるのでしょうか?】






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