第7話 答え

「付き合って下さい、」


その言葉にどれだけの重みがあるだろう?そのたった一言を口にするのにどれだけの勇気が必要だろう?俺は今までそんなこと考えたこともなかった。だが今は違う。ずしりと心の中に浸透する。だって今ままでずっと好きだった幼馴染が告白してきたんだ、動揺しないわけがない。脳から思考が全て消え去りそうだ。気付いたら俺は霞の事を強く抱き締めていた。


「ちょっ、痛いよ彰人。」


俺は水を打たれたかのように冷静になる。


「悪い。だがこれだけは言わせてくれ」


「何?やっぱり私とは付き合えないって事?」


「そんなわけねぇだろ。ずっと好きだったんだ。

 霞。やっぱこれだけは俺に言わせて欲しい。

 小学校の頃からずっと好きだった。俺と付き合

 って下さい。」


一瞬の間があく。心臓が口から出てきそうだ。それほどの緊張感が漂っている。霞は目を丸くして聞いていたがそれからニコッと微笑んでこう言った。


「はい。私で良ければ是非お願いします。」


その時の赤くなった霞の顔は間違いなく

今までにないぐらい可愛いかった。

その時霞の部屋のドアが開く。


「今お取り込み中だったのね、いいけどお話も

 あるからそろそろ下に降りてきてね。」


好きな人のお母さんにバッチリ見られてしまっていた恥ずかしさで俺は顔を真っ赤にさせてしまう。だがそれは霞も同じだったみたいで。混乱しすぎてしまったのかまともに目の焦点が合ってなかった。


「お〜い、大丈夫か〜。」


「はっ、うん大丈夫、流石に恥ずかしいね。

 えへへ〜。」


霞は完全に破顔してしまっている。幸せ顔を浮かべている。俺と付き合えてこうなっているのなら

それはとても光栄なことだ。


「取り敢えず、夕飯食べに行くか。」


「そうだね。ねぇ彰人。手、繋ご?ほら、

 付き合い始めたんだし、」


「ああ」


そういうと俺は手を差し出す。そうすると向こうから強く握ってくる、それに返すように俺も強く握り返す。この笑顔だけは何があっても絶やしてはならないと強く自分に言い聞かせた。例え何を失ったとしても守りたいものが初めて出来た日だった。

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