182 両腕とドグラ・Ⅰ

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 今回は両腕パーツだけでお送りしています。


 フヨフヨと中を浮かぶ俺の隣を歩いているのはドラゴン娘のドグラ。


 しょんぼり落ち込んでいる様子だが、まあ無理もない。


 苔モンスターのせいで2Pキャラみたいに緑色。

 しかも髪の毛がブロッコリーみたいになってる。


 ドラゴンの威厳もなければ幼女の可愛さも半減だ。


〈困ったなー、みんなとはぐれてしまったなー〉


「こんな姿見られとうないから、ずっとこのままで良い……」


〈いや、そうは言ってもバラバラなのはマズいって。なにがあるかわからないし〉


「ふん……我はここで独りで苔むしてくたばるのじゃ。貴様は勝手に合流でもなんでもすれば良かろう」


 いやスネすぎでしょ。


 見た目子供だから納得しそうになるけど。

 このドラゴン実際は数百年生きてるんだよな……。


 しかし――


 ――キシャアアアアア!


「ふんっ」


 ボゴン!


 ――フシャアアアアア!


「ウザい」


 ドゴン!


 ――と、先ほどから、横の水の中からモンスターが飛び出してくるんだが。

 全部ドグラがワンパンでぶちのめしている。


 言い忘れてたけど、俺たちがいるのは湖のほとりだ。

 なんで塔の中に湖があるんだろうな……。


 ちなみに俺に襲いかかってくるモンスターはいない。

 俺が届かないくらい高いところに浮いているからだ。


 前は鎧が普通にありそうな場所までしか受けなかったんだけどな。

 俺の認識が自由になったってことだな、うんうん。


 しかし困った。


 俺の他のパーツと連絡が取れないのだ。

 いつもなら意識を共有できるんだが。

 この塔の魔法で阻害されているのかもしれない。


 ドグラはやる気をなくしてるし。

 どうやってこのフロアを脱出しようか――。


 ――ゴシャアアアアアア!


 うおおおお!?


 なんか急にモンスターのジャンプ力がアップしたんですけど!


 飛び出してくるのは魚型のモンスターだ。


 ピラニアみたいにガチガチ歯を鳴らしてこちらに食いつこうとしてくる。


 モンスターってことはどうせ魔力を帯びてるんだろう。

 ってことは、魔力で防護されたこの鎧も破壊できるんだろう。


 危険極まりない。

 もっと高く飛んでおこう……。


 ――キシャアアアアア!


 うわっ!

 さらに高く飛んできやがった!


 わー!

 噛みつかれて鎧が砕け……ないな?


 あれ?

 ピラニア野郎、どこにいった?


 消えた?


「今、貴様の中に魚が吸い込まれていったように見えたのだが」


 え、どういうこと!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る