183 両腕とドグラ・Ⅱ

 どうも、リビングアーマーの俺です。


 隣にいるのはドラゴン娘のドグラ(みどり)。


 そしてこっちはさっきから盛んに飛びかかってくるピラニアっぽいモンスター。


 うわー!

 ぎゃー!

 やめろー!


 と空中を逃げ回る腕だけの俺。


 しかしピラニア野郎は構わず突っ込んでくる。


 そして俺の中に吸い込まれていく……。


 どういうこと!?


 ピラニア野郎のサイズは、鎧の手甲よりひとまわり大きい。

 そいつが、鎧に触れた瞬間、しゅいん――と吸い込まれて消えてしまうのだ。


 四次元ポケットにどこでもドアをしまうときの感じに似てる。


 しかもこいつら後から後から突っ込んでくる。

 もう十匹以上は吸い込まれたはずだ。


 どうなってんだよ。

 もう腕の体積より多い量吸い込んでるぞ?


「ふむ……どうやら魔力吸収体質を獲得しておるようだな」


 とドグラが言ってくる。


〈魔力吸収体質?〉


「魔力を吸収する体質のことじゃな」


 そのまんまだ……。


 でも、まあ意味はわかる。

 魔力を吸収できる体質ってことだろ。

 ……やっぱりそのまんまだな。


「このクソ忌々しいゴミ苔どもに取りつかれたせいで、そういう体質を獲得したんじゃろ。そのわりに貴様は緑色になってないな。ズルいぞ」


 口が悪い。

 そしてズルいと言われても。


 しかし状況はわかってきた。


 苔モンスターは魔力を食う。

 ドグラの言う魔力吸収体質ってことだ。


 そいつらがさっき増殖して俺たちを閉じ込めた。

 その際にこのマジカルアーマーが逆に苔のその力を吸収してしまった。


 そんなところだろう。


 しかし、モンスターは魔力が多いとはいえ、肉体は物質のはずだろ。

 なんでその物質部分まで吸収できちゃうんだよ。

 肉体はどこに消えてるんだ?


 ドグラにそのことを聞いてみると、


「まあ、魔力も物質も、根源的には同じものじゃからな」


〈え? それってどういう――〉


 ――キシャアアアアアアアアア!


 ああ、もう、鬱陶しいな!

 今、大事な話してるんだよ。

 しっし!


 ――ぶしゃあああああ!


 うわ!

 なんだこれ!


 振った俺の指先から、すごい勢いで水が吹き出したんだけど!?

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