39 名探偵ロロコ……というか、警察犬?

 どうも、リビングアーマー(兜だけ)です。

 俺を抱えてるのは犬耳っ娘のロロコ。


 二人でロロコの仲間の人犬族のところを目指している。


 なんで抱えられてるかというと、彼女の仲間に会ったときにビビられないようにだ。

 兜がふよふよ宙を漂ってたら怖すぎるからね。

 

 ちなみに、銅貨と冒険書も、一緒に布袋に入れて、持ってもらっている。


 けっきょく、昨日は一睡もできなかったなー。

 かといって、疲れてるとか眠いとか、そういうことはない。


 どうやらリビングアーマー――というか、霊体だと、睡眠は必要ないらしい。


 ロロコのほうは充分眠って、体力回復はバッチリのようだ。

 もりもりと歩いてる。


 しばらく前から結構上り坂なんだけど、全然ペースが落ちてないな。


 ときどき鼻を動かして、匂いで方向を確かめてる。


〈なあ〉

「ん?」

〈ロロコの仲間で、鎧持ってる人とかいないかな〉

「いないと思う」

〈そっかぁ〉


 まあ、領主に無理やり働かされていた人犬族だ。

 鎧なんか持ってたら、取り上げられてるか。


 しかし弱ったな。

 このままだと心もとなさすぎる。


「だいじょうぶ」

〈ん?〉

「ヴォルフォニア帝国に着いたら、冒険者ギルドに行こう」

〈おお?〉

「冒険書を持ってれば、装備を格安で貸してくれる」

〈おお!〉


 なるほど。

 そうすれば、仮でも身体が確保できる。


 そのあと、金を稼いでその鎧を買い取ってもいいしな。


〈ん? でも俺兜だけだぞ〉


 お前のような冒険者がいるか! って追い出されそうだよな。

 っていうか、その場で討伐とかされねえか?


「私が冒険書の持ち主ってことにすればいい」

〈いいのか?〉

「助けてもらった、お礼」


 うう、ほんといい子だな……。

 俺のほうだってすでにめちゃくちゃ助けられてるのにな。


 でも、その方法でいけそうだな。


 よーし、次の目標ができたぞ!


「…………」

〈ん? どうしたロロコ。急に立ち止まって〉

「ここ」

〈え?〉

「集合場所」


 ああ、着いたのか。


 本当だ。

 気づけば道に出てた。


 で、木とかが途切れて、ちょっと広場っぽくなっている。

 集合場所としてはわかりやすいだろう。


 けど……。


〈誰もいないな〉

「先に行ったっぽい」


 ロロコは鼻をひこひこ動かしながら言う。


「みんなの臭いはする。ここはもう通ってる」

〈え、じゃあ置いてかれたってのか?〉

「もともと、遅れたらそうする約束」


 いや、それにしても……。


 もともと、こんな子供を囮にするようなやつらだし。

 いくらロロコが魔法を使えて、自分から言い出したからってな……。


「これは、変」

〈ん? なにがだ〉

「違う臭いが混ざってる」


 ロロコは辺りの匂いを嗅ぎまわる。


「人の臭い。それに狼も」


 人ってのは、人犬族じゃない、普通の人間ってことだろう。

 ってことは、追っ手か!?


 でも、狼ってのはなんだ?


「見て」


 ロロコが俺を地面のほうに向ける。


 これは……足跡だな。

 何種類かあるけど。


「平らなのが私たちが使ってる布靴」


 うん。

 ロロコも同じのを履いてるな。


「ガタガタしてるのが、領主さまとか、その部下」


 木靴か革靴かな?

 そういう感じの足跡もたくさんあった。


 ってことは、やっぱり追われてるのか!


「それに、車輪もある」


 車輪?


 本当だ。

 わだちが何本かある。


 けっこう深いな。

 かなり重いものを運んだのか。


〈まさか、人犬族を捕まえるために、なにか武器を運んだとか〉

「かもしれない」


 そりゃマズいな。

 人犬族は武器を持ってないのに。

 ロロコが合流すれば、魔法でなんとかできるかもしれないけど。


 俺は……まあ、頭突きするくらいなら。


〈急ごう〉

「うん」


 ロロコは、匂いをたどり、人犬族たちがいるほうへ駆け出す。


 そのときだ。


 ――グロロロオオオオオオオオオオオオオン!


〈な、なんだ!?〉


 遠吠えだ。

 前にロロコが上げたのより、何倍も大きな声。


 ロロコはそれを聞いて、一気に走る速度を速めた。


〈どうしたんだ? 今の声はなんだよ〉


 その答えは、ロロコが答える前に、俺たちの目の前に現れた。


 木々を抜けた先。

 そこには。


 ――体長5メートルは越えるだろう、巨大な狼がいた。

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