30 さらば鱗状鎧、お前は便利だった……

 どうも、リビングアーマーです。

 犬耳っ娘のロロコと一緒にトロッコに乗ってます。

 そのトロッコは蜘蛛の糸につられて、壁に激突寸前です。


 ぎゃーーーー!


〈ロロコ! フレイムを!〉

「! わかった」



「フレイム!」



 火炎放射器みたいに、激しく炎が吹き出る。

 その勢いで、トロッコは壁に激突する前に、その勢いを止めた。


 前に、コウモリの巣で落下したときにも、これに助けられたんだよな。


 しかし――ちょっと勢いが強すぎたみたいだ。


〈うわあああああああ!〉

「うおおおお?」


 トロッコは今度は反対方向へ振り回される。

 このままだと逆方向に叩きつけられてしまう。


 っていうか、これじゃ同じことの繰り返しだ。

 しかも、蜘蛛が糸を切り離したら、谷底へ真っ逆さま。


 冗談じゃない。


「ん?」

〈どうしたロロコ!〉

「あれ。線路の終点」

〈なに!?〉


 ほんとだ!

 もうちょっと進めば、地面にたどり着ける。


 あそこまで行けばなんとかなるな。

 よし!


〈おりゃー!〉


 俺は気合を入れる。


 と言っても本体はなにもしないよ。

 鱗状鎧の金属板を並べて、道を作るのだ。


〈ロロコ!〉

「おお、すごい」


 俺はロロコを抱えると、鎧ロードを走る。

 通過した部分はすぐにバラして前に持ってくる。

 よし、これでいけるか!?


 ――ドヒュン!


〈ぬぉ!〉


 蜘蛛の糸が、背後の金属板を貫いた!


 くそ、何枚か割れて落ちてったぞ。


 あそこまで壊れると自分の身体とは認識できなくなるみたいだな。

 どのくらいまで壊れるとそうなるのか気になるところだ。


 ――が、いまはそれどころじゃねえ!


 ドヒュン!

 ドヒュン!

 ドヒュン!


 蜘蛛が連続して糸を放ってきた。


 ぬお!

 ぬお!

 ぬおぉ!


 俺はロロコを抱えてかわすのに必死で、金属板全部に気を回す余裕がない。


 また壊れて落ちてった!

 しかもけっこう大量に!


 くそ、このままじゃ地面まで間に合わない。


 びよん!


 うわ! しかもこいつ、また飛んできやがった!


 俺のすぐ真後ろに飛び乗る蜘蛛。


 おい!

 それ俺が作った足場だぞ!

 っていうか俺の身体だぞ!

 勝手に使うなよ!


 ガチガチガチガチ!


 蜘蛛が牙をぶつけて音を鳴らす。


 やばい、追いつかれる。

 しかも蜘蛛ががっしり脚の爪でつかんでて、金属板を移動させられない!

 どうする!


 …………って、なにも悩むことなくね?


 このままじゃ俺はあの牙で身体をガジガジされる。

 ロロコも食われるかもしれん。


 じゃあ、なにを切り捨てるかは決まってる。


 おらよ!


 ――シャアアアアアア!?


 蜘蛛が奇声をあげる。

 突然、自分の足元が崩れて驚いたらしい。


 でもそれ、俺の身体だからね?

 勝手に飛び乗った君が悪いんだからね?


 バラバラバラ――。


 ――シャアアアアア!


 蜘蛛と金属板が一緒に落下していく。


 一方、ロロコを抱えた俺は地面に到着した。


 よっと。

 じゃあ、残った金属板を回収しようかな――。


 ――ドヒュン!


 あ、てめ!


 蜘蛛が糸をとばして、金属板に巻きつけた。


 この! この!


 金属板を動かすが、糸が丈夫すぎて切れない。


 おいおい、あいつ、登ってくるぞ。


 しょうがないな。

 それもくれてやるよ。

 もともとは、偶然手に入ったパーツだ。


 ここまでいろいろ助けられたぜ。

 ありがとう!

 じゃあな!


 ――シャアアアアアアア!


 支えを失った蜘蛛は、恨めしげな声をあげて落ちていった。

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