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夏は驚く。研究所に行くときは気づかなかった。緊張していたんだ。遥のことで頭がいっぱいだったんだな。街灯の横から下を覗いてみる。暗闇しか見えない。とても深いが街灯の明かりでうっすらと底が認識でいる。水? 水面だ。地底湖になっているんだ。地底湖の上に研究所を建てたのか。それとも貯水池なのか。後者だとしたらかなりの量の水をわざわざ用意したことになる。前者の確率が高いと思うけどそうなると地底湖を基準に建設地を選んだことになる。大量の水が必要だからなんだろうけど地上の湖や海岸ではいけないのだろうか? 地下にこだわったのか? とりあえず散歩する場所がないことはわかった。歩いていけるのは研究所の周りと駅と橋だけだ。
このまま帰っちゃおうかな? 一瞬弱気になる。地上の天気はどうだろう? もう雪は降り出しているのだろうか? ずっと籠の中で生きてきた夏にとって、今の状況はとても魅力的だった。絶対に住みたいとは思わなかったけど秘密基地みたいで素敵だ。実家に閉じ込められるもの地下に閉じ込められるのも結局一緒だ。遥を探す過程も研究所に着くまでの旅もとても楽しかった。自分なら地下の洞窟に逃げ込むことも考えるかもしれないと思う。自分の殻に閉じこもってしまうかもしれない。でも遥には地上にいてほしい。輝くような人生を過ごしてほしい。一緒に買い物したり旅行に行ったりもしたい。絶対楽しい。遥だって笑ってくれるはずだ。木戸遥はもっとたくさんの人を幸せにできる天才なんだ。木戸遥を失うことは人類の損失だ。そんなことは絶対にさせない。
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