12
「クリスマスになにか予定があるの?」
もしかしたらボーイフレンドがいるのかもしれない。遥はまったく男性に興味を示さないが信じられないくらい奇麗なのでとてももてる。男性にももてるが女性にももてる。学園でも遥に憧れていたお嬢様たちがたくさんいた。夏もその中の一人だ。遥は気軽に話しかけることのできない雰囲気があるのでほとんどのファンは遠くから見ているだけだ。夏は唯一遥と並んで歩くことができた。自慢だったし嬉しかった。
「照子の誕生日」以外と普通の答えだ。恋愛は遥にはまだ早いかな?
「ケーキとか食べるの?」
「年齢を確認するだけ。とくになにもしないよ」遥は作業をしながら答えてくれる。
遥は誰よりも優しい。それは初めて会ったときから知っている。
「照子はずっとあの部屋にいるの?」
「照子は一人では動けないの」
遥は照子をとてもかわいがっている。夏には照子の価値がいまいちよくわからない。遥を夢中にさせるなにかが照子にはある。遥だけが気づいた照子の力。いったいそれはどんな才能なのか? 木戸遥はカリスマだ。その頭脳と外見。経歴や実績から遥を神様のようにあがめている人もいる。雨森照子がさらに上をいく才能なら夏ではもう理解なんて絶対にできない。
「ちょっとさ 探検してきてもいい?」遥は手をとめて椅子ごとこちらを向いた。
「面白いものなんてここにはないよ」遥は椅子の上に体育座りをする。
「面白いものしかないから遥はここに籠ってるんでしょ?」夏は反論した。
遥はあきれたような顔をしてから作業に戻った。
夏はそんな遥の表情を無視して立ち上がると部屋を出て行った。
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